アダルトグッズの利益率を把握すると、実は各アダルトグッズ企業はユーザー思いであるとわかる。

かつてゴム製品メーカー・オカモトの創業者・岡本巳之助は、遊郭にコンドームを持って行くたびに、国産コンドーム品質の悪さを遊女から聞かされた。その経験から岡本は世界一のゴム職人になり、世界一のコンドームを生産すると心に決めた。岡本が18歳のころだ。そののち、オカモトは願望通り世界一品質のコンドームメーカーとなり、「メイド・イン・ジャパン」の名声に寄与した。

「サガミオリジナル」で知られる相模ゴム工業のコンドームと並んで、これら日本品質の恩恵を受けている人たちは全世界にいる。私たちはモノづくりというと、つい自動車や電機を思い浮かべてしまうけれど、それだけではない。さまざまな日本メーカーが日本品質を武器に活躍している。ユニクロを展開するファーストリテイリングも、生産地が日本ではないものの、日本流のきめ細やかな生産品質が同社の魅力だ。

 同じくいま成人向けグッズの領域で、TENGAは大人気だし、他国の追随を許さない(笑)商品が続々と発売されている。

 ところで、これら成人向けグッズの利益はいかほどなのか?

 儲かる商売は「性的産業」「コンプレックス」「美容」といわれる。これらの商売は需要が大きく、商売するにはもってこいというわけだ。実際のところはどうだろうか?

 オカモトの第117期(平成24年4月1日−平成25年3月31日)決算によるとコンドームを含む生活用品カテゴリーの売上高は297億2900万円に対し、利益は24億4000万円だった。率にすると、8.2%だ。もちろん、モノづくりにおいて8%強もの利益率を叩き出すのは容易ではない。優良メーカーであるには違いない。ただし、あえて単純にあてはめると、例えば600円のコンドームの利益は49円なわけで、コンドームの薄さほどは薄利でないものの、思われているほどの大儲けではない(註:この利益率8.2%とは粗利益ではなく、かつ利益49円とは出荷単価や販売者コストは無視している)。

 では、TENGAはどうか。販売会社の典雅は22億円ほどの年間売上高があり、利益は1億円強と推測される。したがって、利益率は5%程度だ。これも個人的には、もっと儲けていると思っていたので、やや驚いた。これまた、あえて単純にあてはめると500円のTENGA ディープスロート・カップの利益額は25円にすぎない(註:先ほどと同じく、この利益率5%とは粗利益ではなく、かつ利益25円とは出荷単価や販売者コストは無視している)。

 成人向けグッズ販売企業の上位社をいくつか調査してみたが、利益率でいうと5%程度だ。良い企業も10%くらいの水準だ。少なくとも私が見た範囲では、成人向けグッズ販売業者たちは、善良な供給者というべきだった。

 ということは、企業は暴利を貪るというよりも、安価な価格で私たちに成人向けグッズを提供してくれているといえるのか。望むのは、これら「陰の日本モノづくり企業」にスポットライトがもっと当たることだ。

 ありがとう、オカモト、典雅、テックアーツ、トイズハート……(以下、自己規制)。