モトローラの損失10億ドルは想定範囲内?グーグルが見せる強気
今四半期、Moto Xはグーグルのモトローラ部門に目立った変化をもたらさなかった。しかし今はまだそれでいいようだ。
モトローラ部門がいったいいくらの損失を出しているかについて、グーグルは実はそれほど心配していない。
グーグルのスマートフォン製造業であるモトローラは、引き続き同社の最も大きなコスト要因である。この第3四半期において、モトローラは11億8000万ドルの収入に対し2億4800万ドルの損失を出している。いまのところ、グーグルのモトローラ部門には8億6100万ドルもの巨額のコストがかかっており、今年の第4四半期もこのようにお粗末な業績のままであれば、グーグルのスマートフォン製造業は最終的に10億ドルもの損失を出す可能性がある。
一方グーグルは今年の4月にモトローラのセット・トップ・TVボックスを20億5000万ドルでArris Groupへ売却完了しており、技術的には今年、モトローラはグーグルに貢献していることになる。
投資家とテクノロジーの専門家は、2011年8月にモトローラを125億ドルで買ったのはグーグルにとって過去最悪の決断だったと声高に叫ぶことだろう。モトローラはこの第3四半期の間に新しいスマートフォンを4つも発表している。Verizonで販売された3つのアンドロイド・スマートフォンと、グーグルとモトローラのコラボレーションによる初の主力スマートフォン、Moto Xだ。
グーグルはモトローラをうまく吸収できていないのだろうか?あるいはこのパートナーシップはまだ初期の段階にあるというだけで、最終的には極めて有益なものとなるのだろうか?モトローラはグーグルが下した最悪の決断であったという可能性はまだ残っているが、両社が共同で開発した主力スマートフォンが市場に出てからわずか2、3ヶ月のうちに結論を出すのは難しいだろう。
「Moto」ブランドは単なるバランスシート上の数字ではない
実際問題として、グーグルはMoto Xによって現在のスマートフォン技術の限界を押し広げており、他のメーカーに対してもアンドロイド・スマートフォンの新しい可能性を示している。グーグルはモーションやジェスチャー・コントロールのような技術にも着手しているが、それらはMoto X以外のグーグル製品には見られないものだ。
グーグルはさらに、Moto Xで大きな役割を果たしている言語技術や音声認識といった技術にも取り組んでいる。これらはモトローラのスマートフォンにおいて試験的に使われているものだが、もっと幅広く活躍する可能性を秘めている。例えばグーグルがこれらの技術を新しいバージョンのAndroidやChromeブラウザに加えれば、インターネット機能を持つ世界中のデバイスに対しても拡張利用されることになるだろう。
グーグルはモトローラ部門を次世代のアップルやサムスンに育てていきたいようだ。しかしそれは短期間の決算における重要事項ではない。グーグルは、2011年の購入時には20,000人規模に肥大したメーカーであったモトローラを、10,000人未満の従業員からなる社内部門に再構成した。あとはいくつかの主力スマートフォンで経験を積んで市場をある程度牽引し、モトローラが特許訴訟を確実に回避しつつモバイル革新の限界を押し広げるためのテスト基盤であり続けた上で、最終的に採算が取れるようになれば、グーグルは十分満足なのだろう。
もちろんモトローラがいつまでもグーグルの利益の邪魔になっていてはいけない。しかし短期的には、同社の技術およびインフラの構築に比べれば、このスマートフォン製造業がどれだけ損失を出すかはそれほど重要ではないのだ。
「この事業は我々にとってまだ初期段階なのだ」とグーグルCFO(最高財務責任者)のパトリック・ピシェットは述べた。「私は、モトローラCEOデニス・ウッドサイドと彼のチームはモトローラにおいて大きな変革を行ったと思っている。今我々はMoto Xという素晴らしい製品品質を手に入れた。これは我々の最初のデバイスであり、広く受け入れられた素晴らしいプロダクトだ。このチームは今現在マーケティングと流通の構築に取り組んでいる。これが次のステージであるというのが、我々がモトローラと共有している考えだ。この四半期や次の四半期にすぐ実現する話ではないが、我が社が楽観視している以上の成果が期待できるだろう」
Dan Rowinski
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