サプライヤ評価の実際とコツ/野町 直弘
サプライヤ評価を現在もやっているものの今のやり方で良いのか、という声をよく聞きます。
ここではサプライヤ評価で欠かせない視点や重要なポイントを書きますのでご参考にしていただければ幸いです。

最近バイヤーの方と話をしていて、よく感じることの一つに「サプライヤ評価」の
課題があげられます。
これはサプライヤ評価を現在もやっているものの今のやり方で良いのか、という
声をよく聞くのです。サプライヤ評価はISO対応で実施しなければならないことも
あり、全くやっていない、という企業はあまり多くありません。
しかし、評価はしているものの、「そもそも何を目的にやっているのか不明」とか
「社内他部門から協力が得られず全社で統一化されたものになっていない」とか
「評価項目やウエイト付けの方法が適正でない」とか「評価したもののどうも評価
結果とバイヤー個々の感覚があっていない」とかの課題や疑問が上がっている
ようです。
今回は全ての個別の課題や疑問に答えるということは難しいですが、ここでは
サプライヤ評価で欠かせない視点や重要なポイントを書きますのでご参考にして
いただければ幸いです。

まず「サプライヤ評価の目的」ですが、これは何らかの目的があって評価は行っていることですが、もし目的や必要性がないのであれば評価すら、する必要は
ありません。目的は大きく分けて3つになります。

1.サプライヤとどのような関係性を作っていくか、所謂「サプライヤ戦略作り」
2.最適なサプライヤを選ぶための「サプライヤ選定」
3.1.2にも関わりますが、サプライヤの評価結果を基に悪い点を改善してもらう
もしくは良い点を伸ばしてもらう、などの「評価フィードバックと改善」

の3点です。
サプライヤ集約や評価結果を元に発注量の増減につなげるなどもありますが、
これらも1や2の目的に集約できます。

次に考えなければならないのは、いつサプライヤ評価を行うか、です。いつ、
行うかを考えても概ね3つの段階が考えられます。

?.新規に取引を行うための審査
?.都度購買案件でのサプライヤ選定時
?.年度に一回等の定期的な実績評価

上記の3つの段階での評価もそれぞれ評価の目的は異なります。
このように目的と時期が異なればサプライヤ評価のやり方や項目、ウエイトは
異なって当然です。例えば?新規取引の審査?都度購買案件でのサプライヤ選定の段階では主要な目的な「2.サプライヤ選定」になりますし?新規取引の審査は絶対評価になりますし、経営状況や取引実績などが評価項目になります。
?都度購買案件、では比較評価になりますし、ある程度取引実績があるサプライヤの比較評価ですからコスト評価が主要な評価項目になるでしょう。

また?定期的な実績評価は「1.サプライヤ戦略作り」や「3.評価フィードバックと改善」
を目的としますが、ここでの重要なポイントは「継続性」と「多面性」です。
つまりシンプルな評価でも構わないのでバイヤー個々や調達・購買部門
としてだけの評価でなく企業としての評価とするために「多部門の声を吸上げる」
ことがポイントとなります。また、改善をしてもらったり、戦略に沿った関係性
作りを目的にすると、ある断面での評価だけでなく「継続的」な評価を行うことが
ポイントになります。

ちょっとしたヒントになりますが、社内他部門(ユーザー)の声を聞き
(所謂VOC=ボイスオブカスタマー)、社内ユーザーがその品目の購買や該当するサプライヤに何を求めているか、に率直に耳を傾け、その事項
(よくCTQ=クリティカルトゥークオリティとか言います)をサプライヤ評価項目に
入れる、もしくはその項目でサプライヤ評価を行うことが、できていない企業は
少なくありません。一見サプライヤ評価と社内ユーザーマネジメントは関係ない
ように感じられますが、非常に重要かつ欠かせない視点となります。

あと、これも私が常々言っていることですが、「サプライヤ評価」というとどうしても「バイヤーがサプライヤを評価してやる」という「上から目線」的な要素を感じざるを得ません。評価をするということは逆にサプライヤからもバイヤー企業は格付けされていることを忘れてはなりません。
継続的な取引であり、また企業にとって欠かせない買いモノであった場合には
より一層こういう視点が欠かせません。ここで重要なポイントになってくるのは
「サプライヤコミュニケーション」です。情報提供だけでなくサプライヤが何を望んでいるのかを把握する。今後のサプライヤマネジメントにおいて欠かせないことです。
これを第三者を使って把握する活動がVOS(ボイスオブサプライヤ」であり、バイヤー企業として実施する活動が所謂サプライヤミーティングとなります。
これからのサプライヤマネジメントはサプライヤからの要望を調達・購買部門が企業の代表として吸上げ、その社内での改善を社内ユーザーに働きかけていく、
というような双方向の活動にしていかないと優秀な「サプライヤの囲い込み」ができなくなります。
このような視点も忘れてはならないのです。