タイに住む日本人の悩み 「担当者が出入り業者からワイロを貰っている場合、逆恨みされずに処理するにはどうしたらいいでしょう?」
バンコク発ビジネス・生活情報誌『DACO』編集部のタイ人経理部長、ブン(女性)が日タイの架け橋となるべく日本人からの質問に答えます。
(前略) 購買担当者が出入り業者からワイロを貰っている場合、表立って処分(解雇とか配置換え、警告など)すると、タイの社会では、逆恨みされることが頻繁にあるそうです。
逆恨みされずに、適正な商取引にするにはどうしたらいいでしょう?
タイ人の会社はどうしていますか? (モカさん)
【ブンからの回答】
ワイロは損害&横領
言うまでもなくワイロを貰うということは、会社に不利益をもたらす行為です。
業者が100万バーツのものを売り込む際に、購買担当者に10万バーツを渡す。このとき、会社は90万バーツで購入できたかもしれない機会を失っていることになるので、損害です。
また10万バーツは購買担当者の懐に入るべきものではありません。会社に入るべきものです。ですから会社の金を横領したという見方もできます。
おそらくワイロをもらった本人は、悪いことだという意識がないと思うので、諭すように警告すれば逆恨みされる可能性は減るかもしれませんが、相手が確信犯であれば、まず逆恨みされることでしょう。
証拠をつかめない
さて、ワイロをもらう購買担当者をどうするか。
まず確実な証拠があれば警察に通報すればことは足ります。しかし相手も業者と組んで証拠が残らないように万全の体制で臨んでおりますので、なかなかしっぽをつかませません。
ではタイの会社ではどうしているのか、ダコ編集部の顧問弁護士、Nopakun氏に聞いてみました。
悪いヤツとは縁を切る
?まず会社の顧問弁護士や人事部長に相談し、相手に認めさせる。
この人たちには名探偵のように頭が切れることが要求されます。疑わしい購買担当者と面談させ、たわいのな い話から核心に迫ってゆきます。ワイロをもらっていればウソをつくはずなので、どこかでボロが出ます。そこをついて相手にまず過ちを認めさせます。
? 警告を与え、配置換えを行う。
?または横領したことは黙っているから退職願いを出すように勧める。退職金は払わない。
?または退職金を払って解雇する。そ うして逆恨みされることを避ける。
このように、状況に応じて対応するようです。
ある会社では強制的に出入り業者を変えたところ、旧業者が会社に「おまえのところの購買担当は新しい業者からオレのところ以上にワイロをもらっているはずだ」と、どなりこまれたとか……。
社内ホットライン
社内の不正に気づいても、しかるべき人に相談できない場合があります。しかるべき人が黒幕という笑えないケースもあるからです。
ある会社ではコールセンターを利用して、社内のクレームを汲み取り、それを本社が把握。本社から支社へ不正を暴き、改善することを要求しているそうです。本社からの命令というワンクッションがあれば、逆恨みの感情も薄らぎそうですね。
あ、それから……。タイの某大手会社の人事部長は、常に拳銃を携帯しているそうです。
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【後記】
私事で恐縮だが、かつて世話になっていた会社の配送部門で、バイクのメッセンジャーたちを集めて、ガソリン代を節約するにはどうしたら良いかアイディアを募ったことがあった。
ひとりのメッセンジャーが「ガソリンスタンドと会社が直接契約すればいい」と発案した。メッセンジャーたちはガソリンスタンドで給油して自分で支払い、領収書を会社に出して建て替えた分をもらっていたのだ。
会社契約をすることで割引きが見込めるのかと思ったがさにあらず。発案者はその後、ほかのメッセンジャーらにボコボコに殴られた。彼らはガソリンスタンドの従業員に水増しした領収書を書かせていたのだ。その後、事態は……。いずれ当コラムの番外編でお知らせしようと思います。(『DACO』編集長・沼館)
(文・撮影/『DACO』編集部)