だが最近では、移籍金を支払ってでも日本人選手を獲得しようとする海外クラブが増えてきた。つまり、海外移籍はJクラブにとっても、単に「選手の夢をかなえてあげるために無償で送り出す」ものではなく、「ビジネスとして成り立つ」ものになりうる、あるいは、なりつつあると言える。

 かつては、「一緒にスポンサーが付いてくるから」とか、「日本でレプリカユニフォームが飛ぶように売れるから」といった理由で、海外クラブが日本人選手を獲得することも多かった(少なくとも、そう揶揄されることは多かった)ことを考えれば、状況は明らかに変化している。

 だとすれば、今後はJクラブも受け身に立つばかりでなく、自ら積極的に選手を売りに出すことも考えるべきだろう。まして最近のJリーグは、全体的に人件費(選手の年俸)が縮小傾向にあるのだからやむを得ない。

 昨年末、あるFIFA公認代理人がこんなことを話していた。

「今年のシーズンオフは、なかなか次の契約先(となるクラブ)が決まらない選手が多い」

 その背景にあるのは、「Jリーグにクラブライセンス制度が導入されたことで、各クラブが人件費を抑えなくてはならなくなった(債務超過が許されなくなった)」ことだというのだ。

 新聞報道によれば、リエージュへ移籍した小野裕の移籍金は約2億4千万円、年俸は約6千万円だという。おそらく小野裕にそれだけ支払えるクラブは、日本には存在しない。

 そもそも選手の海外志向が強いうえに、待遇面でもかなわないとなれば、今後、さらに海外移籍が増える可能性は十分にある。

 所属選手の海外移籍を、いかにビジネスとして成功させるか。それはJクラブにとって、健全経営を進めるうえでの重要課題となりそうだ。

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