ヨーロッパでの冬の移籍期限(1月31日)ギリギリになって、また日本人選手の海外移籍が決まった。名古屋MF、金崎夢生のニュルンベルク(ドイツ1部)入りである。

 このところ、日本人選手の海外移籍が相次いでいる。大前元紀が清水からデュッセルドルフ(ドイツ1部)へ移籍することは、昨年のうちに発表されていたが、最近になって阿部拓馬が東京Vからアーレン(ドイツ2部)へ、永井謙佑が名古屋から、小野裕二が横浜FMから、ともにスタンダール・リエージュ(ベルギー1部)へ移籍することが決まった。そして、最後に金崎である。

 最近の若い選手は全般的に「海外志向」が強く、将来はヨーロッパでプレイしたいと望む選手は数多い。だとすれば、彼らが次々に海を渡っていくのも驚くことではない。

 たとえば、アーレン入りが決まった阿部などは、J2でプレイしていた昨年中にもこんなことを話していた。

「大学時代から海外でプレイしてみたいと思っていた。いずれはJ1で、というよりは、今でも海外への気持ちのほうが強い」

 J2とはいえ、阿部は2年連続得点ランク2位(11年16ゴール、12年18ゴール)の結果を残している選手。今季を迎えるにあたっては、当然J1クラブからも声がかかったに違いないが、そんな誘いを袖にしてドイツへ渡ることを選んだわけだ。

 また、ただ単に数が増えたというだけではない。かつて、カズこと三浦知良が27歳にしてヴェルディ川崎(現在の東京V)からセリエAのジェノアへ移籍したことを思えば、日本人選手の海外移籍は明らかに低年齢化傾向にある。

 カズだけでなく、名波浩(磐田→ベネツィア/イタリア)、柳沢敦(鹿島→サンプドリア/イタリア)がともに26歳で、小笠原満男(鹿島→メッシーナ/イタリア)が27歳で、といった具合に、かつてはある程度Jリーグで実績を重ねてから、20代後半でヨーロッパへ出て行くケースが多かった。

 ところが、最近では宇佐美貴史(G大阪→バイエルン)、宮市亮(中京大中京→アーセナル)など、10代にして海を渡る選手も現れており、最近移籍が決まった選手を見ても、小野裕がまだ20歳、大前は22歳、永井と金崎は23歳で、最年長の阿部にしても25歳である。金崎を除けば、彼らのJリーグでの実働期間は、実質2、3年にすぎない。

 もちろん、21歳にして海外移籍を果たした中田英寿(平塚→ペルージャ/イタリア)、小野伸二(浦和→フェイエノールト/オランダ)などの選手もいたが、彼らに共通するのは、その時点ですでに日本代表(A代表)での実績があったことだ。

 それに比べると、永井にしてもJ1でのプレイ経験はわずか2年だし、ロンドン五輪での活躍はあってもA代表の実績はゼロ。小野裕や大前などは年代別代表でさえ、ほとんど実績がないのだ。

 にもかかわらず、彼らが海外移籍を果たせたのは、日本人選手全体の評価が上がっているからに他ならない。そこでは香川真司(C大阪→ドルトムント/ドイツ)をはじめとする、先人たちの活躍が担保となっている。

 と同時に、日本人選手全体の評価が上がったことは、また別の現象も生み出すことにつながった。すなわち、海外クラブへ選手を移籍させたJクラブが、“移籍金” (契約途中の選手を獲得するために、前所属クラブに支払う違約金)を得られるようになったことである。

 以前は、海外クラブに「移籍金を払ってまで日本人選手を取るメリットはない」という傾向が強かったため、中田浩二(鹿島→マルセイユ)や岡崎慎司(清水→シュツットガルト)らのケースのように、所属クラブとの契約満了を待って移籍金なしで海外移籍することが多かった。