パンチを受け、テイクダウンを許すことはままあるシェーン・デルロサリオだが、ガードワークから上を取り返す、あるいは極める術を知っているのが強みだ

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26日(土・現地時間)、MGMグランドガーデン・アリーナで開催されるUFC146「Dos Santos vs Mir」。メインカードが全試合ヘビー級戦となる当大会で、アントニオ・ペイザォンと並び、オクタゴンデビュー戦を迎えるのが、シェーン・デルロサリオだ。

EXCやストライクフォースでエメリヤーエンコ・ヒョードルを破るなど、実績十分のペイザォンに対し、デルロサリオはEXC時代に人材育成大会のShoXCで戦い、ヘビー級ワールドGPも補欠戦に出場していたに過ぎない。体格的にもライトヘビー級転向を視野に入れたこともあり、そこから肉体改造に取り組み体を大きくした経緯を持つ。実績、目を引く外見を持つわけでもないデルロサリオだが、彼にはMMAデビュー以来11連勝、11連続一本もしくはTKO勝ちという戦績がある。

チーム・オーヤマで磨かれたムエタイテクニックで、08年にはWBCムエタイ世界ヘビー級王座を獲得、MMAでもヒザ蹴りとパンチのコンビネーションで勝ち星を重ねてきた。今やキックボクシング界は首相撲に制限を加えるルールが多いなか、攻撃の許容範囲の広いMMAで首相撲が許されたWBCムエタイルールを経験したことが、アドバンテージになっている。

加えてチーム・オーヤマにはジヴァニウド・サンタナという、ブラジリアン柔術がMMAを想定していた時代に技術を修得、究めたグラップリング・コーチが存在する。ジヴァ合流後、デルロサリオの寝技もディティールにこだわるタイトで、完成度の高いものへと進化しつつあった。そんななか、前述したワールドGP補欠戦では現在、UFC2連勝中のレイバー・ジョンソンを腕十字で下しているデルロサリオだが、2カ月後に酔っ払い運転の車にぶつけられ負傷、長期離脱を余儀なくされた。

ShoXC出場時から、同様のキャリアの持ち主であったケイン・ヴェラスケス級のファイターと目されていたデルロサリオだが、本人はじっくりとキャリアを重ねる選択をし、その負傷欠場中にストライクフォースがヘビー級から事実上撤退、UFCに合流することとなった。対戦相手はガブリエル・ナパォンから紆余曲折があり、スタイプ・ミオシッチに変更されたが、いきなりのPPVマッチでUFC初出場を迎える。

ミオシッチもMMAデビュー以来8連勝中、UFC初戦となったジョーイ・ベルトラン戦以外は全てTKO勝ちを収めている注目の存在だ。カレッジ時代にはベースボール・プレイヤーとレスリングで名を馳せ、キング・モーやライアン・ベイダーと鎬を削り合ってきた。消防士、救急救命士という職を持っていたため、プロMMAデビューからまだ2年、粗削りな面もあるがレスリングで鍛えた体幹と、ゴールデングローブを獲得したボクシングテクニックは、デルロサリオも十分に苦しめることができる。

デルロサリオの立ち技は、蹴りをスムーズに繰り出すために、重心がやや高い。特に距離を詰められたときや、攻撃をかわすときの重心の高さは元D-1レスラー相手には分が悪い。と同時に米国MMA界の成長に先んじて首相撲をマスター、テイクダウンを許しても三角絞めやオモプラッタなど下からの攻めにも長じている。

PPVラインナップを眺めていると、最も地味に映るかもしれない一戦だが、デルロサリオとミオシッチ戦は、レスリング+ボクシングの正統派MMAファイター=ミオシッチと、ムエタイ+柔術という異端=デルロサリオがぶつかり合うMMA異文化交流、15分も必要ない試合となるだろう。
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