前UFC世界ライト級王者フランク・エドガーと初手合わせ。エドガーのレスリングは、やはり彼のMMAセオリーを連想させるものだった

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25日(水・現地時間)、早朝6時半からマーク・ヘンリーのMMAボクシングのクラスを受けた水垣偉弥、日沖発、漆谷康宏、北岡悟、久米鷹介、伊藤健一の一行は、ホテルで休息を取った後、ニュー・ブランズウィックにあるラグター・カレッジへ足を伸ばした。

ここはかつてフランク・エドガーがレスリングの指導を行っていた大学で、エドガーの誘いを受けてJMT勢が訪れたもの。ニュージャージーの強豪レスリング・クラブで、五輪スタイルとはまた一風違ったカレッジ・レスリングを初体験。このピュア・レスリング修行を誰よりも、望んでいたのが日沖発だった。6月22日にリカルド・ラマス戦が発表された日沖にピュア・レスリングを練習する意味合い、そして次戦について訊いた。

――昨年、カナダでGSPに連れられピュア・レスリングを経験した際、その重要性が理解できたと言っていた日沖選手ですが、その後、国内でピュア・レスリングのトレーニングをルーチンとしているのでしょうか。

「ピュア・レスリング時代、道場やクラブには行っていないのですが、レスリング系の練習は増やしました。グラップリング・クラスのスパーリングの前に、1分だけテイクダウンのみのスパーリングを入れたり、ケージ・レスリングだけでなく、そのような練習は増やすようにしています」

――日沖選手はこれまでボクシングなら、一流のボクサーとスパーリングをして学ぶことがたくさんあるという意見を持っていましたが、レスリングはALIVEのジム内で済ましているのは、環境が整わないということでしょうか。

「ジムには学生時代にレスリングをしていた子たちが複数いて、彼らに出稽古ができないかと尋ねると、『それは構わないですけど、役に立たないと思います』という返答だったんです」

――大学のレスリングは、東高西低ですからね。

「1週間のスケジュールも固まっているので、そこを崩してまで出稽古する必要があるのかという部分でジム内での調整に落ち着いた感じです。だから、今日のような練習は凄く良い機会になりました。前よりも組手争いの慣れもあったので、やりやすかったです。

以前はピュア・レスリングの組手って、必要かなって思っていたんです。手取りの組手が上手くて勝っていた人が、MMAでは苦戦している。レスラーといっても、がぶって勝つタイプ、体でもっていくようなテイクダウンを入るのが巧い人もいるし、タイミングで入る人もいる。タイミングで入る人ならMMAでも、その技術を生かしやすいでしょうが、ピュア・レスリング独特の組手争いをやっても、MMAに役に立つのかって思っていたんです」

――頭をぶつけて、組手をする状況はMMAではあまり起こりえないと。

「ただ、柔術と同じで、その組手は時間をかけて消化していくものだと思えるようになりました。体の使い方、力の配分、自分はその環境にないですが、ピュア・レスリングの強い人と練習できるなら、そういうモノが身につくんだと思います」

――ラグター・カレッジの面々は強かったですか。

「強かったです。一人一人、得意のパターンがあるようで、勝ち負けという部分でなく、そういう彼らの得意な動きを体験したいという気持ちが強かったです」

――その割には、投げられた後の悔しそうな表情が印象に残っています(笑)。

「そりゃぁ、ポンポン投げられると悔しいですよ。でも、試しながらやって、そのなかで勝ちたいという気持ちをもって臨んでいました。ホント、楽しかったです。フランキーとも、初めて組み合うことができましたしね」

――練習場所で顔を合わすのも3度目にして、ようやくフランク・エドガーと手を合わすことができました。

「動いて、相手を崩すタイプなんだと思います。まぁ練習だし、打撃もない状態でしたが、それでも力でいくって感じではなかったです。倒されたときも、かいな力で持っていかれるんじゃなくて、全身の動き、軸の強さと瞬発力で持っていかれるという感じで。固める力が強いというタイプではないです。

自分で動いて、タイミングを作っていく。MMA練習では、まだ手を合わせていないですが、フランキーと練習することが目的で米国にやってきたわけじゃないですけど、ピュア・レスリングとはいえ一度は組めて良かったです」

――奇しくも、同日にリカルド・ラマス戦、アトランティックシティで6月22日に行われる試合が発表されました。

「米国に来る前には、合意に至っていたので正式オファーはその少し前ですね」

――ラマスの印象を教えていただけますか。

「スタンド、打撃も含め立ち技が強いです。ミドルを効かせてパンチだとか、ハイキックも蹴ることができますし、KO勝ちもあります。まぁ、今の流行のレスラー上がりのトータル・ファイターという感じですよね。打撃、テイクダウン、ギロチンという技が主体の。マーク・ヘンリーさんが、相手がテイクダウンに入りにくくなるフェイントなど指導してくれたので、これから磨いていきたいです」

――ダナ・ホワイトが、『日沖は世界戦まであと1試合挟みたいと言ってきた』と記者陣に語りました。つまり、世界戦への打診はあったということが明らかになりました。

「ダナが、本当ですか(笑)。正式かどうか分からないですが、7月のカルガリー大会でどうだろうという話はもらったんですけど、こちらの気持ちとして、まだ経験を積みたいということは代理人の方を通して返答しました。ただ選択肢が世界戦しかないなら、戦うのが筋だとは思っていました」

――いずれにせよ、この試合で勝てばタイトル挑戦になる――という青写真が完全に描かれていることになります。

「それは頭には入れていますが、ラマスは強豪なので集中しないと。そこに勝てば――という前提はあっても、とにかくラマス戦に勝ってからの話なので」

――分かりました。あと、3日になった米国出稽古の旅、ケガのないよう頑張ってください。

「ありがとうございます。頑張ります」
インタビュー元記事はコチラ

■北米出稽古紀行
水垣偉弥@マーク・ヘンリー地下ジム
久米鷹介@ATTアトランタ
伊藤健一@Cooler
日沖発@アリアンシ柔術
漆谷康宏@ATTアトランタ