女性を狙った犯罪の中でも、後々まで影響を残すといった意味では、盗撮は卑劣極まりない犯罪だ。そんな“被害”にあったタレントが憤りと、覚悟の戦いを語った。



「○○全裸着替え流出!」などと銘打っても、その実、ほとんどがガセ、ヤラセの類いというのが実情なのが有名人の盗撮ビデオ。

 だが、まれに“真実”の場合があり、そのほとんど全てが、当人のあずかり知らぬところで製作されるという犯罪行為である。もちろん、当事者のショックは計り知れない。

  まずは、元「ミニスカポリス」のメンバーで、人気番組だった「ギルガメッシュないと」(テレビ東京系)の司会者も務めたグラドル・梶原亜紀(20)=当時=のケース。水着撮影の控え室での全裸着替え姿を盗撮され、市場に出回ってしまったのである。豊満な乳房はもちろん、アンダーヘアの茂みまで‥‥。不本意にもあらわにされてしまった梶原はそのショックもあり、半ば引退へと追い込まれてしまった。

 もっとも、梶原のように涙を飲んで引き下がってしまったタレントばかりではない。

 近年は、都議選立候補など政治活動も目立つ女優・後藤麻衣(39)は、みずからが盗撮騒動に巻き込まれた時、毅然として立ち向かうことを決意した。

   彼女がプライベート温泉旅行を盗撮され、それが市場に出回ってしまったのは、2000年のこと。パッケージには、「正真正銘の本物映像!!」「素肌や乳房や黒い茂みを潜伏激撮!」などの刺激的なあおり文句が踊ったものだ。

 当時、後藤は本誌インタビューで、「(盗撮ビデオで)荒稼ぎしている人がいると考えるだけで夜も眠れません」と激白したものだ。あれから10年余り。再び彼女にその後の顛末を含め、事件について直撃した。

「最初は刑事告発をしようと思いましたが、どうしても相手が特定できなかった。その後、警察の方も積極的に動いてくれたんですが、残念なことに盗撮犯まで手が伸びることはなかったんです」

 なかなか進まぬ捜査の行方。周囲からも、「もう、しょうがないじゃないか」といった声もチラホラ聞こえてきた。その時は、「心が折れそうにもなった」という。しかし、

「同じ被害にあっている女性がいる。泣き寝入りはしない」

と、心を奮い立たせ、次の手を打った。民事訴訟で盗撮ビデオの販売店を告発したのである。

「2つの販売店を告発しました。店内に堂々と、私が盗撮されたヌード写真を使ったパッケージなどを使っていましたから」

 うち1つの販売店からは、和解が提案された。が、もう1つの販売店は強硬な態度を崩さず、結局、その是非は裁判に持ち込まれたという。結果は‥‥。

「勝訴でした。損害賠償金は、250万円ほど。裁判所が私の日頃の仕事などをかんがみて出してくれた(ギャラの金額に相当する)金額です。でも、お金の問題じゃない。正直、裁判には2年半以上の月日と労力を費やしたし、勝ったからといって、盗撮された私の傷が即癒えるわけでもない。ただ、勇気を出して頑張った。やり遂げたという気持ちはありました。それは、のちの私の人生の中でも大きな経験になりましたね」

 実際、裁判が終わった時点で、後藤にとっての盗撮事件は、「一区切りついた。過去のこと」と割り切ることができたという。

「都議選への立候補など、社会的なことへの活動に目が向くようになったのは、あの忌まわしい事件を自分自身で乗り越えられたということもあったと思う」