『負け美女』(犬山紙子著/マガジンハウス)
美人なのになぜかモテない。ショボい男にばかり縁があり、マヌケなエピソードばかりが増えていく……。どうにも残念な美女たちの恋愛事情をイラスト&エッセイで紹介

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一大ベストセラーとなった『負け犬の遠吠え』から約8年。この秋、新たな“負け女子”本が登場しました。美人なのに恋愛がまったくうまくいかない、余計な人にはモテるけど、肝心な相手にはモテない。セクハラされたり、しょうもないナンパ男にイヤな思いをさせられたり、遊ばれてしまったり……。『負け美女』(犬山紙子/マガジンハウス)は、こうした残念な美女たちの恋愛や生き様、その周囲に集うなんともビミョーなイケメンたちの生態をイラストとエッセイで紹介している本です。

著者の犬山紙子さんは29歳、彼氏いない暦3年。ご本人のブログには「負け美女に私はふくまれませーん!」「まあ、負けてはいますが、美女ではないのでね」とありましたが、ブログなどを拝見する限り、十二分に“負け美女”でいらっしゃる。犬山さんはモデルやアイドルなど美女のお友達が多いとのことなので、美女の判定基準がそもそも高めに設定されているのかもしれません。

この本に登場する“負け美女”の例をいくつか紹介します。

たとえば、顔はかわいいのにぜんぜんモテないというNちゃんは居酒屋にドレスで現れ、「顔がちょっと武蔵丸に似ている」という自虐ネタで笑いをとりつつ、元彼のグチを語ります。さらには、女友達を巻き込んでの暴露トーク……と、いじらしいまでのダメ展開。その彼女が超ド級のモテ女・Rちゃんがトイレに呼び出され、ちょっとアドバイスされただけで大変身するくだりは、感動すら覚えます。

あるいは、32歳童貞に「よければ私とセックスしない?」と提案しちゃう美人モデルのKちゃん。曰く「イケメンとセックスすると、やった女の数にひとつ加えられるだけだけど、モテない男性とのセックスは相手にとって、もっと意味のあるものになるでしょ」。やさしいんだか、ひどいんだか……。

そして、“負けイケメン”のエピソードもなかなか味わい深いものがあります。中学の頃からひたすらモテ続けてきた20代の若き経営者I君。お気に入りの読者モデル・Uちゃんをオトすべく、あの手この手を繰り出します。ファッションをほめちぎり、「ファミリーセール」で洋服好きの心をくすぐり、定期的に「おはよー」メール。

このI君のコメントのひとつひとつがまた、いかにもイケメン風。あるいは自分ではモテると自負している男性が言いそうなセリフのオンパレードなのです。

ファミリーセールで予算が足りなくなってしまったUちゃんに「どうしてもほしいなら2万貸してあげるよ」。

ファミリーセール後には「今日はセールでUちゃんはお金使っちゃうだろうと思ったからもうお店予約してあるんだ。Uちゃんといっしょにいられたから俺も楽しかったし、初デートだから俺におごらせて」。

さらに、「絶対返すので……」と恐縮するUちゃんに、Iくんはこう答えます。
「あはは、そんなことしなくて本当にいいよ。さっきの2万円も、お金じゃなくて、Uちゃんにお弁当とか作ってもらえたらそっちのほうが幸せかも」

いやぁ、しびれます。これらのセリフにグッと来るのかこないのか、それだけを語り合うために女子会を開催したいほど。

そうそう。女子会といえば、『負け美女』にも、女子会レポートがありました。夜中の2時に美女が集まり、何をしているかと思えば、おっぱいの見せ合い……。しかも、「オラ、もっと強い乳首と戦いてえ! オラよりもっと黒い乳首はいねえのか?」と謎の対決。えー!?さらには、巨乳の子のおっぱいをもむべく後ろから近づき、ストーブのコードにひっかかって転んだりしていましたよ。もう何がなにやらさっぱりわかりません。恐るべし美女ワールド。深遠すぎるわ!

『負け美女』を読めば読むほど、中途半端なカワイコちゃんを狙うより、いっそ美女のほうが落としやすいんじゃないかと思えてきます。男子には甘い夢を、女子にはさまざまな教訓を余すことなく与えてくれる一冊です。
(島影真奈美)