『のっけごはん100』(瀬尾幸子著/主婦と生活社)
のっけておいしい"超カンタンごはんもの" 100レシピ! 表紙の「目玉焼きとウィンナーのっけ」をはじめ、見てるだけでお腹がへるおいしそうな写真の数々も魅力です

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食のキーワードは「かける」から「のせる」へ。

雑誌やテレビで今年のヒット商品を振り返る特集が組まれはじめる11月。なんでも2011年食関係でのキーワードは「のせる」なんだとか。先日発売された『日経トレンディ12月号/2011年ヒット商品ベスト30』で15位にランクインしたジュレタイプのポン酢なんかが「かける」から「のせる」の代表格。他にも「のせる醤油」なんてのが話題になりました。
それは“ごはんの友”業界とて例外ではありません。もちろん、ごはんの友の絶対王者は今も昔も「卵かけごはん」です。先日も卵かけごはん日本一を決める大会がニュースになっていました。みんな大好き卵かけごはん。朝はやっぱりTKG。でも、だからこそあえて言いたいのです。卵かけごはんはもう古くないか?と。ごはんのお友も「かける」から「のせる」なのではないかと。主婦と生活社から出版された『のっけごはん100』を読んで、作って、私はそう確信したのです。時代は「のっけごはん」であると。

実はこの「のっけごはん」というジャンル。これまでにもいくつかレシピ本が出版されています。『家に帰ってすぐできる どんぶりとのっけごはん』『のっけめし―ごはんをおいしく食べるのっけもの153 』あたりが代表格。どちらの料理本のレシピも私の胃袋をおいしく優しく癒してくれる逸品ばかりで間違いなく美味しい「のっけごはん」ができあがったのですが、「ちょっとしたおもてなしにもOK」といったニュアンスが見え隠れしていて、“ひと手間かかった美味しさ”を目指したレシピが多い印象でした。
でもごはんをかっこみたい時って朝食か、飲んだ後に締めでお米食べたいけどお茶漬けは飽きたなー、というシチュエーションがほとんどではないでしょうか。そんな状況を想定すると「今からそれ作んのメンドクサイな」とか「その食材は買いに行かないとないよ」と作る上でちょっとしたハードルが出来てしまっていたのです。

今回紹介する『のっけごはん100』にも、もちろん手の込んだレシピはあります。でも根底にあるのは、あくまでも主役は“おいしく炊けたごはん”であるということ。そのための脇役となるおかずはシンプルでもOKという考えです。
<炊きたてのごはんの記憶は、朝の記憶。眠い、おいしい、いいにおい。おいしく炊けた白ごはんをおいしくするおかずは、ごちそうばかりではありません>(「はじめに」より)
実際、レシピの中で扱われている食材や調味料のほとんどが「このくらい冷蔵庫や備蓄品にだいたいあるでしょ」という、いい意味でのゆるさが特徴的。著者の瀬尾幸子さんは「NHK今日の料理」や「タモリ倶楽部」にも登場する人気の料理研究家で、「今日初めて包丁を持った人にもできる料理を」がモットー。実際、卵とまぜて温めるだけ、材料を切ってまぜるだけ、といった“簡単レシピ・シンプルのっけ”がいくつも紹介されています。中でも真骨頂なのが「缶詰・びん詰めのっけ」のコーナー。包丁どころか火も使わずに、でもちょっと調味料を加えるだけで素敵な「のっけごはん」になるレシピの数々に胃袋は大満足です。
その他、「卵のっけ」「野菜のっけ」「魚のっけ」「肉のっけ」「汁のっけ」と素材ジャンル別に構成されてるので、その日の気分や冷蔵庫の中身と相談してどれかひっかかるレシピが見つかる筈です。また、材料が全て「1人分」表記なのもありがたいところ。夜中に家族に隠れてちょっと一杯食べたい、という時にももってこいです。

「のっけごはん」を作ったり食べたりすると、『美味しんぼ・61巻』で、油揚げ・釜揚げシラス・大根おろしをごはんにのせて醤油かける「よくぞ日本人にうまれけり」という有名なエピソードを思い出す方もいらっしゃると思います。その中で山岡士郎・ゆう子夫妻が次のようなセリフを交わします。
ゆう子)温かなご飯がすべてを受けとめて、味も風味もご飯の力でふくらませるのよ!
山 岡)かんたんだけれど、どの材料をどう調理して他のどんな材料と取り合わせると美味しいかを見つける、これが料理の基本だよ。いやあ。まさにこれこそ。
ゆう子)日本人に生まれてよかった!
これぞまさに「のっけごはん」の魅力そのもの。「のっける」というより「ごはんの方が受けとめてくれている」と考えるとお米のありがたみがより一層わかるというものです。ちょうど新米が出まわり、ごはんがもっともおいしい季節。炊きたてのごはんをおいしく食べて「日本人に生まれてよかった!」と実感するためにも、『のっけごはん』いかがでしょうか。(オグマナオト)