インタビュ―:ティム・ディケイ(ピーター・バーク役)
――犯罪ドラマが色々ある中で、この『ホワイト・カラー』はとりわけ人気を集めていますが、その人気の秘密はどこにあると思いますか?
ティム・ディケイ:犯罪ドラマというのは普通、主人公達が家に帰るところまで見せないで、犯罪そのものについての物語だと思うんだ。でも、僕らの番組は、それよりもむしろ人間関係について描いたものである、ということが大きな違いだと思うんだよね。だから何が盗まれたとか取られたみたいなことはあまりに重要ではない。視聴者にとって大事なのは、ピーター(・バーク)とニール(・キャフリー)の人間関係であり、ふたりがどのようにして悪者を見付けていくのかという部分なんだ。それに僕自身、俳優としても、犯罪について描くよりも、人間関係について扱うほうが、ずっと面白いからね。――ピーターとニールの相性がすごく良いと思うのですが、話し合いなどをしてこの作品に取り組んだのですか?父親と息子であったり、兄弟的であったり、すごく家族的なところがあるので、良いと思うのですが。
ティム・ディケイ:うん、確かにそうだね。だけど、ふたりで改めて話し合ったことはないんだ。まず、彼が先に役に決まっていたんだけど、プロデューサーが僕らの相性を見るために、僕は彼と脚本の読み合わせをしたんだよね。それで読み合わせを始めたその瞬間に、僕らはお互いふたりの関係性が特別なものだというのが分かったんだ。即座にね。それで番組を撮り続けていく過程で、その時々の物語に応じて、ふたりの関係性について話すことはあったけど、全体的な関係性について話し合ったりしたことはないんだ。なぜなら始まった瞬間から、ティム(・ディケイ)とマット(・ボマー)がお互いを好きだということはすぐに分かったし、それにピーターとニールもお互いが好きなんだ。ふたりは、もしかしたら信頼し合ってはいないかもしれない。それでも、お互いが好きであることは確かなんだ。だからこの番組にとっては、ふたりがその根底において、お互い愛があり、大事に思っているということを描き続けることが非常に重要だと思うんだよね。例えば、銃弾がニールに飛んできたら、絶対にピーターは飛び込んでニールを守ろうとすると思うんだ。そして、ニールもピーターのために同じことをすると思うよ。――あなたの演じているピーターというキャラクターは、仕事人間で、でも家庭に帰れば妻にメロメロで。
ティム・ディケイ:まったくだね。――(笑)。でも妻以外の女性は苦手で。
ティム・ディケイ:うんダメダメ。――(笑)。とてもチャーミングに映ったのですが、あなた自身とキャラクターがかぶるところはありますか?
ティム・ディケイ:あるね。私が言っていることが分かる人はここでどのくらいいますか? アメリカではーー他の国でも同じようなことを言うかもしれないけどーー、『私の家庭では妻がズボンを履く』という言い方があるんだけど、僕の家でも妻が、家庭の責任者なんだよね。だから、妻の言ったことに、僕は従うまでなんだ。それはピーターとエリザベスの関係性に似てるよね。だから家庭では、エリザベスが上にいて、ピーター、という順番なんだ。いや、エリザベス、犬のサッチモ、そして、ピーターだな。だけど、FBIにおいては、ピーターが上にいて、ニール、そして後が続くという感じなんだ。それが僕自身と同じところなんだよね。それでピーターがその他の女性の前では、ナーバスになるというところだけど、それは僕が考えた部分で、彼は、それと子供も苦手なんだよね。子供をどう扱っていいのか分からないんだ。だけど、脚本家が、子供達はピーターに寄って来たがると描いたところが気に入っているんだよね。ピーターは子供を好きなんだけど、とにかくどうやって扱えばいいのか分からないんだ。そこが面白いところだと思うんだ。それでティムに関して言えば、僕は子供が大好きだし、それに、女性も大好きなんだ。この話はこのくらいにしておきましょう。――(笑)。愛妻家の穏やかな良い人と敏腕捜査官というギャップのある役を同時に演じていて、演じることに難しさを感じることはありますか?
ティム・ディケイ:それはないね。難しくはないんだ。脚本家がピーターのシーンをしっかりと描いてくれているから、だからこの役をやるのが大好きなんだけど、つまり今の質問こそが、逆にこの役を演じていて楽しい部分なんだよね。つまり、すごく敏腕で、人を殴ったりというシーンがある一方で、家に帰れば、妻に(甘い声で)“ハニー”と言っているというね。それこそがリアルな世界だと思うんだし、リアルな人間像だと思うんだ。人間というのはみんな、色々な側面や様々な人間性を持っている。でも、犯罪番組においては大抵、物語の進行上、それぞれのキャラクターのひとつの側面しか見ることができない。だけど、それだけを演じるのは、あまり面白くはない。だから僕のやっていることは、難しいのではなくて、むしろすごく楽しいんんだよね。両極端を行ったり来たりできるわけだからね。――シーズン2でピーターとニールの関係でお互いへの理解が非常に深まり良くなったなと思ったそのクライマックスで、ピーターのニールへの信頼が揺らぐ出来事が起きます。その後シーズン3でのふたりの関係性はどうなっていくのかを教えていただけますか?
ティム・ディケイ:それは非常に興味深いところなんだよね。これもまたリアルな人生と同じように、誰かと親しくなった後で、その人に裏切るようなことをされると、その影響というのはより大きくなる。シーズン2の終わりで、ピーターは、仕事上、もちろん傷付き、動揺したばかりでなく、個人的にも、ニールがしたことは彼にとって大きな問題だったんだ。なぜなら、ピーターは、自分が間違えをおかしてしまったんじゃないかと思っているからね。先生と同じような感覚で、僕が一体何を間違えたせいで、ニールはあんなことをしてしまったんだろう、と思っているからね。シーズン3では、ピーターは、ニールに大きな疑いを抱くようになる。しかし、ニールはそれを否定する。だからピーターはそれを追跡しようとするんだ。彼らは上手くいっているんだけど、その裏で、ピーターはその疑いを晴らせないでいる。でも、彼はそれが間違えであって欲しいとも思っているんだよね。間違えであって欲しいと思っているんだけど、でも、追跡しないわけにはいかないというね。そういう風に曖昧にしか答えられないんだ。シーズン3の内容を種明かししてしまうわけにはいかないからね。――ご自身のキャリアについて聞かせてください。舞台を元々やられていたですよね?
ティム・ディケイ:そうだね。僕は元々舞台から始めて、ブロードウェイもやったし、オフ・ブロードウェイもやったし、各地の劇場でも、巡業もやったりしたんだ。僕は舞台が大好きなんだよね。それで、自分が語りたいと思う物語を語れるようになるためには、TVから映画から舞台からすべての媒体に関わることがすごく大事だと思うんだ。それで、舞台の好きなところは、幕が上がった瞬間から、それは本当に僕の物語になるところなんだよね。2時間で物語を語るのは僕なんだ。それが好きなんだよね。それから観客との関係性も好きなんだ。それとは逆に、映画やTVの面白いところは、撮影が、真ん中のシーンから始まって、その次に、初めのシーンを撮って、そして終わりのシーンを撮ったりと、すごく思索的なところなんだよね。それと反対に、舞台はずっと本能的だからね。だけど、その挑戦も好きなんだ。楽しいんだよね。編集者やカメラマンのなすがままでもあると言えるけどね。舞台では、観客が自分をどう見るのか分かっている。全ての人達がどこに座っているのかも分かっている。だけど映画では、カメラがこちらの角度から来るかもしれないし。つまりその媒体の違いを理解するために、常に勉強させてもらっているような感じなんだよね。でも僕はどの媒体もすごく好きなんだ。――人気者になってしまって、TVの視聴者としては毎週番組が面白いので嬉しいのですが、あなたとしては舞台が恋しくなったりしますか?
ティム・ディケイ:僕を番組で毎週見て楽しんでくれているなんて本当に幸せだと思う。だけど、舞台が恋しいかと聞かれたら、恋しいね。うん、恋しいよ。――今日1日ここにいて、作品に出ている方達のチームワークも素晴らしいと思ったし、スタッフの方達のチームワークも素晴らしいと思ったのですが。
ティム・ディケイ:ありがとう。――特に共演者の人達、マット・ボマーと、ウィリー・ガーソン、ティファニー・ティーセンの魅力をひとつずつ教えていただけますか?
ティム・ディケイ:マットはすごくチームプレイヤーなんだよね。チームの一員に徹するのが、彼の素晴らしいところで、自分がスターであるという風に振る舞わないんだよね。僕らはつまるところみんなでひとつのゴールを目指して演じているのであって、それが優れたエピソードを作り、ひとつの物語を語るための重要なポイントだと思うからね。それでティファニーは、本当に素敵で、彼女にはすごく親しみを感じるし、彼女も、よい物語を語ることこそが大事だと分かっていて、そのために番組をサポートしている人なんだ。それでウィリーについては、何も言うことはないなあ。彼に魅力はないからね。なんてウソだよ。――(笑)。
ティム・ディケイ:ウィリーも同じなんだ。セットに来て、シーンについて打ち合わせすると、ウィリーは、この台詞は君が言った方がいいような気がする、というようなことを言ったりするんだ。うん、何らかの理由で確かにそうかもしれないな、ってやり取りしたりね。それからスタッフも最高なんだ。それでそれはすごく重要なことなんだよね。なぜなら僕らはすごいスピードで番組の撮影をするから。1話を7日間で撮影するんだ。それってすごい速さだよ。本当に速い。だから選択肢はふたつだ。常に緊迫した状態で7日間撮影し続けるか、または、みんなで一丸となってそれに挑むか、なんだ。音声さんも、照明さんもみんな一緒になって、どんどん流れよく、そして楽しくやり続けるかなんだよね。それで、僕らは、みんなそうやって仕事し続けられて幸せなんだ。・『ホワイトカラー “知的”犯罪ファイル』特集ページ - MOVIE ENTER