インタビュ―:マット・ボマー(ニール・キャフリー役)
――この番組の見所は何だと思いますか?
マット・ボマー:この番組の魅力は、究極的には、すごく型にはまったFBIエージェントと向こう見ずな詐欺師という、普通ではあり得ない人間関係について描かれているところだと思うんだ。そしてそんな彼らの関係性がどのように変わっていくのかということとか、敵対者でありながら、究極的にはお互いをいかに尊敬し合っているのかということ。そのふたりの関係性の間にあるエネルギーが、物事を常に新鮮で興味深いものにしていることが番組の魅力になっていると思うんだよね。――ニールのキャラクターは非常に愛すべき役柄ですが、彼を演じるにあたってどのように役作りしているのですか? 「泥棒成金」のヒーロー像が頭の中にあったのでしょうか?
マット・ボマー:クリエイーターのジェフ・イ―スティンと始めの頃に、情報源となる資料を読み、役柄の参考となるものについてはよく話し合いをしたんだよね。『泥棒成金』(55年)のケイリー・グラントから、『スティング』(73年)のポール・ニューマンから、それに、「フェリスはある朝突然に」(86年)ですらね。彼は大きな子供みたいなところがあって、完全には大人になりきっていないし、衝動的な行動をする。自分自身に正直であるところがあるからね。それから誰がいたかなあ。そうそう、『キャッチー・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002年)のフランク・W・アバグネル・Jr.とかね。――彼らのファッションも頭の中にあったのですか?
マット・ボマー:ファッションについては本当にJeff のアイディアから始まって、それを、ふたりで微調整したんだよね。だけど、ラット・パック(1950年代ハンフリー・ボガード、フランク・シナトラ、サミー・デイヴィス・Jr.などの俳優仲間の総称)をすごく意識したものであることだけは確かなんだ。彼が何者で、どんな人間を信じるのかとか、信条とか、人生観とかに大きく影響したからね。それで、彼はきっとそういう色々なアイコニックな人々から、ニールのアイデンティティを創り上げたんだよね。フランク(・シナトラ)とか、ディーン(・マーティン)とかね。だから、彼の人間像は、60年代のそういう人々に大きく影響されていると思う。それから、テーパード・スーツとか、すごく身体にフィットしたスーツとかね。ポケット・チーフとか、アクセサリーとか。パーソナルなスタイルのセンスみたいなものもね。――あなたはこの番組を成功させて、あなたが主役なわけですから、あなたがこの番組のすべてであると言っていいと思うのですが、ご自身ではそれをどう受け止めていますか? 責任感のようなものは感じますか? または成功してしまったので、プレッシャーを感じますか?
マット・ボマー:こんなこと言うとわざとらしいと思うんだけど、でも、僕はいつもこの番組は、アンサンブルでできていると思っているんだ。だから、そのうちのひとつでも間違った場所にあれば、大きなパズルは完成しないと思っている。だけど、自分が唯一プレッシャーに感じるのは、というか、もちろん、常にプレッシャーの増大は感じるわけだけど、でも、それはこの仕事をやっている上では当然のことなわけだし、それに僕は幸運にも素晴らしい脚本家と共演者に恵まれているおかげで、僕自身も向上できるんだ。だから、僕も、みんなにとってそういう存在でありたいと思っている。それにプレッシャー以上に番組の制作は最高だし、楽しいからね(笑)。――あなたの役は、二枚目のエージェントという設定ですが、何歳の時に、自分自身でルックスがいいことを気付きましたか? そして人にそう言われた時どう思いましたか?
マット・ボマー:いや未だに待っているところなんだよね……いやそれをかっこいいと言われることを待っているわけではないんだけど。僕には兄がいて、歳上の兄弟がいると、そのやくわりは弟を、カッコいいとか良いとか思わせないようにするものなんだよね。だからニール・キャフリーというキャラクターに皆が惹かれるのはとてもうれしいね。――それでも私たちはあなたを二枚目だと思っているのですが。
マット・ボマー:ありがとう。――それはあなたが役をもらうに当たり有利だったり、それとは逆に、重荷だったと思うことはありますか?
マット・ボマー:(笑)うーーんとそうだなあ。これをどうやって答えるか考えてみるね。えっと、もちろん場合によってはそのせいで役から外されるようなこともあると思うし、人が捜しているものと違っていたりすることがあるからね。もちろん、そのおかげで助けられたことだって絶対にあると思うんだ。そもそも、俳優という職業というのは、自分ではまったくコントロールできないことのほうがほとんどだからね。しかも、すごく主観的に物事が決まっていくし、自分ではどうすることもできない。自分にできることは、作品に出演して、自分が演じているキャラクターをいかに作り上げるのか考えることに神経を注ぐこと。そして、それを人が気に入ってくれればいいなあと願うことくらいしかできなからね。それ以外のことは、本当に運命でしかないと思うんだよね(笑)。――それでシーズン3はまだ日本では観られないのですが、シーズン3では、ニール・キャフリーとサラ・エリスの関係性は発展していくのでしょうか?
マット・ボマー:僕は彼らの関係性がすごく好きなんだよね。というのも、すごく大人の関係だと思うからね。彼らは、どんな世界からお互いやってきたのかということを、お互い理解し合っているし。それに詐欺師の世界というのは、すごく、移り変わりが早いくて、しかも自由だ。だから、そこには親密な関係性みたいなものは存在しないんだ。一か八かの世界だし、すごく情熱があるし、そのストレスから開放されたら、次に移動する(笑)。って今の卑猥に聴こえてたごめん(笑)。でも、彼ら本当に大人の関係性を持っていると思うんだよね。彼は彼女をすごく尊敬しているし、理解している。それ以前にもちろん彼女をすごく美しいと思っているしね。それに、ヒラリーは実際本当に美しいしね。それから彼は彼女の知性を尊敬しているし、本当に自立した女性なんだ。彼女は、彼から必要としているものなんて何もないんだよね。それを彼はすごく魅力的だと思っているし、だから彼らの関係性はもちろんこれからも絶対に発展していくと思うんだ。そして、もっと親密なものになっていくと思うよ。でも、彼はそれを恐れてもいると思うんだ。というのも、ニールは、親密な人間関係を苦手としているからね。とりわけ、ケイトが最近亡くなったことを考えるとね。――ティム・ディケイとはいつ上手くやっていけると気付いたのですか? そのきっかけのエピソード等はありますか?
マット・ボマー:僕にとってティム・ディケイと仕事することは、子供の頃みたいに、思い切り遊びたいだけ遊ぶような感じなんだよね。遊びを止めたくなくて、お母さんが夕ご飯だから家に帰って来なさいと5回呼んでも、聞かないのに似ているというかね。ティム・ディケイとの共演ってそういう感じなんだ。初めて共演した時、ふたりの間にすごく強烈なエネルギーがあったんだ。お互いを理解し合っているという風に思えたし、ユーモアのセンスも似ていたしね。それに一緒に過ごす時間も長いし、その間お互いを笑わせてばかりいるんだ。とりわけ、重苦しいシーンを撮影しなくてはいけなくなったりするとね。だから会った初日から、いや会った瞬間から、彼と一緒の時間はいつも最高なんだ。最初に台本読みをした瞬間からね。――それでは最後の質問ですが、何かのためだったら、ニールのように自分を犠牲にすることはできますか?
マット・ボマー:できるよ。自分を犠牲にしてもよいと思える人は僕の人生にはたくさんいるし、自分を犠牲にしてもよいと思えるものもすごくたくさんあるからね。だから、自分を犠牲にすることはまったく構わないんだけど、でも、アンクル・ブレスレットだけは嫌だね(笑)。それだとあまりに縛られすぎだからね(笑)。・『ホワイトカラー “知的”犯罪ファイル』特集ページ - MOVIE ENTER