【編集部的映画批評】引きこもりのダメ男なのに奥さんが美人
ウィル・フェレルという俳優を皆さんはご存じだろうか。米国では有名なコメディアンであるが、出演作品の日本未公開が多いという事情から、なかなか日本での認知度が高まらなかった。ただ『俺たちフィギュアスケーター』で一日の総観客動員数の新記録を樹立したり「みうらじゅん賞」を受賞したりするなどで、映画通たちの間では、知名度があがってきて、一部では「ミスター・俺たち」などとも呼ばれるようになってきた。そんなフェレルの最新作で劇場公開中のこの作品に今回は注目。
NY市警のアレンとテリーは、いつもヒーロー刑事の活躍を恨めしく思うだけの“アザー・ガイズ=その他大勢”のひとりだった。だがある時、ひょんなことから世間を騒がせている国家レベルの“巨悪”に立ち向かうことに――。(詳しい作品情報へ)
2004年:俺たちニュースキャスター
人気キャスターという名を欲しいがままにして、好き放題、パーティー三昧の毎日を送っていた男たち。そんな彼らの働く局に、野心あふれる美人ニュースキャスターが入社。人気の座を奪われてしまうことを恐れて、男たちは嫌がらせを繰り返すのだが――。
2007年:俺たちフィギュアスケーター
フィギュア男子シングル部門でのライバル同士が、表彰式で乱闘をしてしまったことで、金メダルは剥奪、スケート界からも永久追放されてしまう。失意の日々を送っている二人だが、シングル部門以外なら復帰できることを知り、前代未聞の“男同士のペア”を組んで出場することに。
2008年:俺たちダンクシューター
試合の勝敗に興味がなく、パフォーマンスをすることばかりに力を入れていたバスケットボールチームの選手兼監督兼オーナーの男が、チーム解散の危機に陥ったことで、勝利を目指して、チームの立て直しを図る。
2008年:俺たちステップ・ブラザース - 義兄弟 -
それぞれの片親同士の再婚により、義兄弟になり一つ屋根の下に住むことになった、ダメ息子たち。定職も持たずに堕落した生活する彼らは、お互い敵対し合っていた。しかし、成功して金持ちになった弟に見下されたことがきっかけで奮闘することに。
この4つは、ウィル・フェレルが出演しているものである。その他にも『俺たちチアリーダー!』『デルタ・フォース 俺たちスーパーソルジャー!』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『俺たち庶民派シューター』『俺たちプロボウラー』『JOKERS THE MOVIE 俺たちロケットスタートマン!』などなど「俺たち」と冠するコメディがたくさんある。これらは、『俺たちフィギュアスケーター』がヒットした2007年から急激に増えてきた。ファンの間では、フェレルが出演しているものか、アダム・マッケイが監督したものだけに「俺たち」を付けて欲しいという声もあがっている。とは言え、この「俺たち」の冠は、日本の配給会社が決めたもので、作品同士の関連がない。原題もフィギュアは『Blades of Glory』、ダンクは『Semi-Pro』などシリーズタイトルとなっていない。だから仕方がないと言えば、そうである。ちなみに皆さんご存知のスティーヴン・セガールによる「沈黙」シリーズも、日本独自につけたタイトルで、シリーズ作品では一切ないのである。
アメリカン・コメディは、文化の違いなのか、なかなか日本人に受け入れられないということがある。ただ、この作品は、「言葉のギャグ」よりも「行動のギャグ」が多かったので、言葉の違いにとらわれずに楽しめる。また、アメリカン・ポリスについては、日本人でもイメージしやすいので、主人公たちのギャップのおかしさを理解しやすい。だから割と今までのベタベタなアメリカン・コメディ映画よりも腹を抱えて笑える度は高いような気がする。そして、腹を抱えて笑った人は、必ず他のシリーズも観たくなるだろう。ただ、笑えなかった人は、ツボが違うので、他のシリーズを観てもそれ程、楽しめない。現在、ヒューマントラストシネマ渋谷などで上映中。大作映画と異なりおそらく長期上映はしないであろうから、“俺たち”ファンは、早めに劇場に足を運ぼう。
・『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事〈デカ〉!』作品情報
・編集部的映画批評
【ムービーエンターおすすめニュース】
・本物のカップルが恋愛し、地球外生命体もアレをする“愛”が詰まったモンスター映画
・「サラリーマンNEO」のお酒をサントリーが発売
・あやまんJAPAN「記憶はないけど、酔っぱらってるうちに作品ができあがっている」
・アメリカ横断 本当にあるおバカ法律:市内で核爆弾を爆発させたら罰金
『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事〈デカ〉!』
俺たち”シリーズの歴史を紐解く
今回の“俺たち”シリーズは「刑事」。ド派手なスポーツカーを乗り回しながら凶悪犯を追うタフな刑事たちが登場すアメリカ刑事ドラマをこれでもかとおちょくる。さて、こんな“俺たち”シリーズ、他にはどんなものがあったのだろう。シリーズを振り返ってみよう。2004年:俺たちニュースキャスター
人気キャスターという名を欲しいがままにして、好き放題、パーティー三昧の毎日を送っていた男たち。そんな彼らの働く局に、野心あふれる美人ニュースキャスターが入社。人気の座を奪われてしまうことを恐れて、男たちは嫌がらせを繰り返すのだが――。
2007年:俺たちフィギュアスケーター
フィギュア男子シングル部門でのライバル同士が、表彰式で乱闘をしてしまったことで、金メダルは剥奪、スケート界からも永久追放されてしまう。失意の日々を送っている二人だが、シングル部門以外なら復帰できることを知り、前代未聞の“男同士のペア”を組んで出場することに。
2008年:俺たちダンクシューター
試合の勝敗に興味がなく、パフォーマンスをすることばかりに力を入れていたバスケットボールチームの選手兼監督兼オーナーの男が、チーム解散の危機に陥ったことで、勝利を目指して、チームの立て直しを図る。
2008年:俺たちステップ・ブラザース - 義兄弟 -
それぞれの片親同士の再婚により、義兄弟になり一つ屋根の下に住むことになった、ダメ息子たち。定職も持たずに堕落した生活する彼らは、お互い敵対し合っていた。しかし、成功して金持ちになった弟に見下されたことがきっかけで奮闘することに。
この4つは、ウィル・フェレルが出演しているものである。その他にも『俺たちチアリーダー!』『デルタ・フォース 俺たちスーパーソルジャー!』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『俺たち庶民派シューター』『俺たちプロボウラー』『JOKERS THE MOVIE 俺たちロケットスタートマン!』などなど「俺たち」と冠するコメディがたくさんある。これらは、『俺たちフィギュアスケーター』がヒットした2007年から急激に増えてきた。ファンの間では、フェレルが出演しているものか、アダム・マッケイが監督したものだけに「俺たち」を付けて欲しいという声もあがっている。とは言え、この「俺たち」の冠は、日本の配給会社が決めたもので、作品同士の関連がない。原題もフィギュアは『Blades of Glory』、ダンクは『Semi-Pro』などシリーズタイトルとなっていない。だから仕方がないと言えば、そうである。ちなみに皆さんご存知のスティーヴン・セガールによる「沈黙」シリーズも、日本独自につけたタイトルで、シリーズ作品では一切ないのである。
アメリカの刑事ドラマは、派手すぎる
ウィル・フェレルとアダム・マッケイ監督のコンビでつくる作品には、皮肉が込められている。例えば、『俺たちニュースキャスター』では、レディファーストの国と思われがちなアメリカに隠されている、女性排斥の事実を暴いている。そして、今回は、「アメリカン・コップ」の映画をおちょくっている。タフな刑事のコンビが暴れまわるアクション映画では、街中で犯人と壮絶なカーチェイスを行う。しかし、それが現実であったらどうだろう。街がめちゃくちゃになって、一般市民も巻き添えになり、大変な惨事だ。しかし、映画の中では、そんなメチャメチャなことをしても、犯人を倒す(逮捕ではなく射殺しても問題ない)という目的を達成すれば“英雄”のように扱われるという滑稽さ、そこを皮肉をこめて描かれている。フィクションが現実と同じように忠実に再現したら面白くなくなるので、多少誇張するのは仕方がないことだ。ただ、2000年頃に流行った「空想科学読本」やこの映画の様に、改めて浮き彫りにすると、その不自然さに思わず笑ってしまう。情熱だけは、戦隊ヒーローのレッドに匹敵するが
本作は、スーパー刑事と呼ばれる“主役”になれる男たちが主人公ではなく、熱血だがいつも空回りする刑事とデスクワークが大好きな引きこもり刑事という“脇役”的な男たちにスポットを当てて描かれている。熱血空回り刑事のテリーは、犯人逮捕に情熱を燃やし、自分の腕にも自信を持っている。ヒーロー戦隊で言うと、リーダーである「レッド」のタイプであろう。しかし、残念ながら、犯人と間違えてメジャーリーガーの選手を撃ってしまう程のドジ。さらに美人に目がなく、人の奥さんだろうが誰だろうが口説こうとする(勿論、全く相手にされないが)。ハートがあるものの主役になりきれない残念な男である。そして、引きこもり刑事のアレンは、美人の奥さんと幸せな家庭を築いているうらやましい男。しかし、全く捜査に出ないで、書類整理ばかり。拳銃も木のオモチャのものを上司から渡されるという、刑事らしいところが全く見えない人物である。どちらも“主役”とは程遠い存在だ。“脇役”の中の“脇役”に花束を
しかし、アレンは、若干“普通じゃない”ところがある。アレンは、奥さんが美人なだけではなく、なぜか異常にモテる。イケメンでもない、仕事もできるわけでもない、でも、なぜかモテる。歩いているだけで、美人から声をかけられる天性の“モテ・フェロモン”を持っている。さらに、普段は穏やかなのに、急にスイッチが入って人格が変わるなど、かなり個性的な存在である。ある意味、物語の“主役”の才能を持っている。それに比べてテリーは、熱血でドジなだけで、特筆すべき能力がない(ダンスはうまいが)。我々の日常の中にいても違和感がない程に“普通”である。おまけにコンビとして、アレンと二人で並ぶと、背まで小さく見えてしまうという悲しさまである。テリーこそ“脇役”の中の“脇役”、べスト・オブ・脇役だ。上映中にそのことを気付くとテリーの空回りぶりや空気の読めない行動が、なんとなく愛おしく思えてしまう。アレンの面白さは勿論注目ではあるが、テリーにもぜひとも目を向けて欲しい。アメリカン・コメディは、文化の違いなのか、なかなか日本人に受け入れられないということがある。ただ、この作品は、「言葉のギャグ」よりも「行動のギャグ」が多かったので、言葉の違いにとらわれずに楽しめる。また、アメリカン・ポリスについては、日本人でもイメージしやすいので、主人公たちのギャップのおかしさを理解しやすい。だから割と今までのベタベタなアメリカン・コメディ映画よりも腹を抱えて笑える度は高いような気がする。そして、腹を抱えて笑った人は、必ず他のシリーズも観たくなるだろう。ただ、笑えなかった人は、ツボが違うので、他のシリーズを観てもそれ程、楽しめない。現在、ヒューマントラストシネマ渋谷などで上映中。大作映画と異なりおそらく長期上映はしないであろうから、“俺たち”ファンは、早めに劇場に足を運ぼう。
・編集部的映画批評
【ムービーエンターおすすめニュース】
・本物のカップルが恋愛し、地球外生命体もアレをする“愛”が詰まったモンスター映画
・「サラリーマンNEO」のお酒をサントリーが発売
・あやまんJAPAN「記憶はないけど、酔っぱらってるうちに作品ができあがっている」
・アメリカ横断 本当にあるおバカ法律:市内で核爆弾を爆発させたら罰金