2万7000人以上が見守った“村上春樹”を巡る議論

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 1987年に刊行された『ノルウェイの森』(講談社/刊)が1000万部を突破、最新長編小説の『1Q84』(新潮社/刊)が累計約400万部というベストセラーとなっている、日本を代表する作家・村上春樹さん。しかし、どうして村上春樹さんはこれほどまでに人気なのか。

 5月11日にニコニコ動画で配信されたニコ生トークセッション「なぜ村上春樹に熱狂するのか?」では、“村上春樹”をテーマに、編集者・批評家の市川真人さんと書評ブロガーの小飼弾さんが、司会の「新刊ラジオ」ブックナビゲーター・矢島雅弘さんとともに村上春樹作品を中心に作品論、二次創作論、日本の文学、さらにはライトノベル論まで1時間30分の白熱した議論を展開した。

 市川さんは、村上春樹作品に登場する人物があまりキャラ立ちしていないところに着目。村上春樹作品は二次創作が出来そうで出来ないところがあると述べた上で、「ただ『ノルウェイの森』を読み返して、作者と読者の関係としての二次創作は可能だとも思った。“自分と直子”とか“自分と緑”といった形で、登場人物と自分という関係で投影できるのでは」と分析した。

 また、海外での評価については、「村上春樹の作品は翻訳しやすい」という点で2人の意見が一致。さらに、市川さんは近年、中国や韓国などで村上春樹人気が高まっていることに触れ、「ある程度社会が発展して、人々に主体が出来てくると、インタラクティブな小説を求めるようになるんです。これは小説に限った話ではありません。それが、日本だと1980年代のことで、自分から物を言えるようになったときに、自分からアクセスしやすい村上春樹の小説が登場したということなんだと思います」とその理由を語った。

 このニコ生トークセッションでは、村上春樹作品だけでなく、現代文学論、ライトノベル論など、様々な議論を展開。最終的には2万7000人を超える来場者が2人の話を楽しんだようだ。
 小飼弾さんは締めの言葉として、今後の日本文学について「日本の文学がはやく日本人だけのものでなくなって欲しいな、と。アニメはそうなりつつありますよね。日本で創られるけれど、必ずしも日本人だけが見るものではない。そういうことが文学でも可能だよということをきちんと証明したという意味で、どんなアンチでも村上春樹のその部分は評価しないといけないと思うんですよね」と語り、海外にも通じる日本文学のさらなる登場を期待した。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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