6月11日の所信表明演説のなかで「強い経済、強い財政、強い社会保障」の実現を掲げた菅首相。そのなかでも重要な課題が、「財政の再建」だ。いまや財政の状況は、菅首相自身もデフォルト(債務不履行)を警告するほど深刻な状況にある。7月11日に迫った参院選でも各党の財政再建に向けたビジョンが重大な争点になるのは間違いない。では、菅首相が唱える「強い財政」を実現するにはどのような政策が望まれるのか。東京大学・井堀利宏教授に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)


いほり・としひろ/東京大学大学院経済学研究科教授。1952年岡山県生まれ。74年東京大学経済学部卒業。81年同大学大学院経済学研究科博士課程退学。同年ジョンズ・ホプキンス大学大学院でPh.D取得。東京大学経済学部助教授、同学部教授を経て96年より現職。著書に『「小さな政府」の落とし穴』、『誰から取り、誰に与えるか』など。
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――日本は先進国のなかでも最も巨額の債務を抱え、公債残高は数年後にGDP比200%を超えるとの懸念もあるほど厳しい財政状況にある。それにも関わらず、破綻せずにいられるのはなぜなのか。

 財政状況が厳しいのは確かだが、追い込まれれば日本は増税や歳出削減などの手を打つだろうという信頼感がマーケットにあるようだ。確かに対応が遅く、もっと早めに取り組むべきだったとは思うが、実際に菅首相も財政再建を声高に唱えている。そのため、まだデフォルトを懸念するほどの不信感はない。

 ただ、このまま財政再建の議論だけをして行動しないままでいれば、財政は維持できないだろう。鳩山政権下ではバラマキ政策を行い、「消費税を4年間は引き上げない」方針をとってきたが、菅政権では増税など早めに手を打たなければ、相当厳しい状況になるのは確かだ。

――これまでの民主党による政権運営をどう評価しているか。

 やはり落第点と言わざるを得ない。事業仕分け等についてはある程度評価はしているが、「無駄を削減すれば財源は出てくる」といいながら、財政再建という意味では量的に十分な財源を確保できていない。しかも、恒常的な財源対策がないままに、子ども手当てなど政策効果の小さいものを行い、歳出が増える一方で、社会保障の改革は手付かずのままだ。来月行われる参院選もバラマキ政策でいくとすれば、評価はしづらい。

――民主党は「無駄の削減によって財源を確保する」と事業仕分けを行ってきたが、当初目標の3 兆円に遠く及ばず、6800億円にとどまった。では、これ以上無駄を削減することは難しいのか。

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