重田みゆきさん
 最近、テレビでもご活躍をされている印象力アップの達人、インプレッショントレーナー(R)の重田みゆきさん。時間で言うとわずか0.5秒の第一印象、6秒の第二印象、1分以内の第三印象が勝負だという。一般的には1分以内も、まとめて大きなくくりで第一印象と聞きますが、それが0.5秒とは驚きです。

 人に与える印象というのは悪いと損する事は思いつくものの、得する事はなかなか思い浮かびませんよね。今回はそんな印象力をアップするトレーニングをお仕事とされ、様々なメディアで注目を集めている重田さんに、インプレッショントレーニング(R)を開発されるきっかけから、印象力アップできるちょっとしたコツまで伺ってきました。

――まず、インプレッショントレーナー(R)とは何か教えて下さい。

重田みゆき(以下、重田):インプレッション=印象。印象を良くするトレーニングなんですよ。皆さんの外見や、声の出し方やジェスチャー、それから言葉のちょっとした使い方を変える事によって、印象力をぐっと引き上げて、人生における運命を変えていくお手伝いをしているんです。

――確かに、印象で左右される事は多いですよね。

重田:自分のくすぶっている才能を、見た目で表現できていないとなかなかチャンスがやってこないと思うんです。特に、最初の印象であまり良い評価をもらえない人は、本当は、能力や技術に長けていても、そのチャンスを与えてもらえない事が多々あります。

――そうですね。最初の印象で損してしまうと、挽回のチャンスをもらうのが大変ですよね!

重田:自分の履歴書を、出会う全ての方に渡す事はできませんので、第一印象でぱっと見た瞬間に、こんな感じの人だと本来の自分をイメージされやすい印象に変えるだけで、自ずとチャンスは増えてきます。そのチャンスを増やしていく仕事とも言えますね。

――きっかけは何でしょうか?

重田:元々は、客室乗務員時代に、客室乗務員を目指している専門学校生に面接のトレーニングをしていたんです。客室乗務員という職業は、個々のお客様へのサービスが一瞬ですから、第一印象〜第二印象が勝負なのです。時間で言うとわずか5,6秒程度なので、「失礼いたします」とドアを開けた瞬間に、面接の合否の9割は決まってしまうんです(笑)。

――6秒で合否が決まるなんて・・・

重田:そこで、私は、初対面の印象の上がるコツを生徒達に徹底的に教え込んだんです。すると驚くほど、ものすごい合格率が上がりまして、ひそかにカリスマ講師と呼ばれるようになったんです。それからは、今まで自信がなかった子達に自信が生まれていくのが楽しくなりましたね。

――国会の偉い先生にまで、印象力アップについてお説教した事もあるとか?

重田:そうなんです(笑)。その後、都内の老舗ホテルのメンバーズクラブラウンジという所で働いていたのですが、その場所に、当時の大臣とか、国会の偉い先生方や、有名な大企業の社長さんなど、世界各国から色々な方々がいらっしゃって、皆様で打ち合わせやお食事会をされる事があるのですが、前日、テレビに出ていた方がいらっしゃった時には、素晴らしいなと思いながらも「でも、最近あの方は世間で評判が悪いなって、もっとこうした方が誤解が無くて良いのに・・・。」と思ってしまう事もあって・・・

コーヒーをお出しする際に、「僕の事知ってる?」と聞かれる事があるんです。「もちろんでございます。昨日もテレビを拝見いたしました。」と答えると、「どうだった?」と聞かれるので、「テレビよりも今の方がステキですね。もったいないです。」とお話し、そこから強烈なアドバイスをするんですよ。

――すごい、度胸ですね(笑)。怒られませんでしたか?

重田:もちろん、初めは「余計なお世話だ、俺にアドバイスするなんて100年早いんだ。」と、お怒りになります。SPさんが動揺してしまうほど、叱られますが、でも、「是非、次回、テレビに出演される際にはお試し下さいませ。」と最後にキッチリと言うんです。すると、次回のテレビ放映時には、私が言った通りの発言方法や、仕草、決めポーズを完璧にされていらっしゃいました。ご本人も驚くほど、突然、自分に対しての他の出演者の方や視聴者の方からのコメントが明らかに良くなったという事で、お礼に何度もラウンジをご利用になって下さり、色々なお客様をお連れいただけるようになりました。それからは皆さん、印象のつくり方に気づかれてガラッと雰囲気が変わりますね。

――すごい反響があったらしいですね!

重田:すごい人がすごい人をドンドン連れてくるというような状況で、とてつもない反響があったので、クラブラウンジの売上がなんと100倍以上になったんです。たまたま、その様子を見ていた現在の代表取締役の石神に、「これはアメリカでは“メディアトレーナー”と言って、大統領にもアドバイスする立派なプロの職業として成立しているものです。ここでコーヒー一杯で、ただ教えているだけではもったいない。いつかもっと世の中の役に立つ仕事になりますよ。」と言われたんです。それがきっかけで、2人でアジア人向けにカスタマイズしたインプレッショントレーニング(R)を形にして行く事にしました。

――そこが始まりなのですね。

重田:いつかは大学の先生になりたいという夢があり、その第一歩として、インプレッショントレーニング(R)を日本の新しい教育にしたいという思いで、開発を進めました。まずは、今までどういうトレーニングをしたり、どういうアドバイスをしていたのかという事から、ボイストレーニングの方法、表情筋のトレーニング方法、ジェスチャーや立ち居振る舞いなど、人の癖を直すために、こんな事をした方がいいというものを全て箇条書きにしたんです。そこに、何百人というトレーニングをさせていただいた方々のビフォーアフターの結果を揃えて、体験をしてもらった方の評価を実際のプログラムに反映していきましたね。

――という事は、プログラム化されるまでは感覚でアドバイスを?

重田:そうです。初めは私の完全に感覚です(笑)。「ダメですよ。そんな表情」とか、「ダメです。その振る舞い」とか、“ダメです”ばかり言っていて、国会の先生達にも「僕に、ダメだダメだダメだなんて言うのは、世界中で君だけだよ。」なんて言われてしまって・・・それでも、翌日、またお越しになるんですね。

それで、「どうだった?昨日は?」と聞かれるので、「昨日は、すごく素敵でした。じゃあ、次はこうなさったらどうですか?」と言うと、またもや、テレビのカメラが自分に向くようになるのが、皆さんわかるんですね。今までは、5秒だけだったのが今回は何分も撮られたりして、「これは、すごくいいな。」という事で、私の事を信頼してくれてお越しいただけるようになったんです。

――アドバイスには、自分自身の体験も含まれていたりするのですか?

重田:その通りです。基本はそこにありますね。私自身、以前すごくコンプレックスを持っていた事があるんです。病気をしてホルモン剤を投入していたら、体重も20kg位太ってしまい、客室乗務員当時には、お客様にも「ブスだ、デブだ。」と、直接ひどい言葉を浴びせられて「何て、ひどい事を言うんだろう。」と、いつも化粧室で泣いていたんです。それで、もう人生が嫌だな、どん底だなと落ち込みましたね。

――その悔しさをバネにしたのですね。

重田:本当にそうですね。「あー、何で私は一生懸命やっているのに怒られて、綺麗な人は適当にしていてもお客様にあんなに喜ばれるんだろう。」と思ったんですね。それで、「どうしたら、あのようになれるのだろう?」と思ったのがきっかけになりましたね。それからは、人気のある方が出演しているテレビ番組を見たりして、ずっとその方の仕草を観察するんですよ。ちょっと真似してみようと思って、一つずつ真似していったんです(笑)。

―― それは、随分地道ですね!

重田:全部ないものをねだって、試行錯誤していったら、どんどん表情の筋肉のつき方が変わっていって、家族や友人にも整形したのかと思われるほど、顔つきが変わっていったんです。ちょうど、病気も克服したのでダイエットにも成功して、体重も20kg落としたら、更にどんどん変わっていきました。

――自分磨きが、いつの間にか職業になったんですね。

重田:自分自身で体感したものを就職に悩む学生達に教え始め、それと同じように著名人にもアドバイスしたら評判が良かったので、これは子供から大人まで万人に受け入れられるなと思ったのです。しかも、悩む皆さんは、自分の良さを表面に出せていないだけなので、トレーニングを一回受けただけで突然変わります。通常印象を良くしようと思ったら、洋服を買わなくてはいけないとか、髪の毛をカットしなくてはいけないとか、難しく考えがちなんですよね。仕草を変えたり、ほんのちょっとしたコツを知るだけでお金もかからずに印象って変えられるのです。