チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦、リヨン対レアル・マドリーのファーストレグが間もなくキックオフを迎える(日本時間17日午前4時45分)。

 7年つづいたフランス王者の看板を下ろした今シーズン、リーグ・アン第24節を終えた時点で首位に8ポイント差の4位、2つのカップ戦ですでに敗退とパッとしないリヨン。サポーターから上がるのは、ピュエル監督に対する辞任要求とともに、昨シーズン限りでチームを去ったジュニーニョ・ペルナンブカーノ(34)の復帰待望論だ。

 ジュニーニョといえば、言わずと知れたフリーキックの名手。昨シーズンのCL決勝トーナメント1回戦でバルセロナを相手に叩き込んだ強烈なフリーキックは、敵将グアルディオラ監督をして「ゴールに7人キーパーを並べても止められない」と言わしめたほどだ。ここへ来てサポーターの脳裏にその記憶がよみがえるのも無理はない。

 今月7日には、カナル・プリュス局が現在カタールでプレーするジュニーニョにインタビューを行ない、「将来はクラブに戻ってリヨンで暮らしたい」という発言を伝え、ファンを喜ばせた。この言葉が「スタッフとしてクラブの役に立ちたい」という意味で述べられたのは明らかだったが、1週間後、同じブラジル人の主将クリスが、「ジュニはリヨンで再びプレーする意欲をもっている」と地元紙(ル・プログレ)に語り、“復帰待望論”が一気に盛り上がった。

 この話題には、CL前の記者会見でピュエル監督にも質問が浴びせられたほど、メディアの注目が集まった。ジュニーニョにクラブを去る決意をさせた“張本人”とも言われる監督ゆえ、「正直言って、考えたことはない。質問はこの会見の目的に合わないはずだ」と不機嫌な反応を示した。

 さらにその翌日の16日、今度はオラス会長付きのラコンブ顧問が、ラジオ局ユーロップ1に対し、「ジュニーニョの退団は間違いだった。彼に戻ってきてほしい。選手としてまだやれる。いまの我々には、彼の力が欠けている。とくにセットプレー。ゴールの3分の1はそこから生まれるのだから」と未練たっぷりのコメントを発表し、騒ぎがヒートアップする。

 これを受けてオラス会長は、「ジュニーニョは戻ってくるだろう。ただし、選手としてではない」とレキップ紙に明言し、騒ぎの沈静化に努めた。会長は「自分に高いレベルを要求するジュニーニョのことを考えれば、再びトップクラスでプレーするのはむずかしいと判断するだろう」と説明している。立場が揺らぐピュエル監督に配慮する意図もあったはずだ。

 こうしたことが話題になるのも、迷走するリヨンの現状を反映している。シーズン序盤、新加入のリサンドロ・ロペスが闘志むき出しでピッチを駆け回り、若手のピヤニッチが絶妙なフリーキックを決めたときには、ジュニーニョの穴は埋まったかに見えた。しかしこの2人も、その後コンスタントに力を発揮できていない。そして単にプレー面だけでない、チームを引っ張るリーダーの不在が響いている。選手が束になっても及ばないカリスマ性がジュニーニョにはあったということだ。この大きすぎる存在を失った“後遺症”を吹っ切るためにも、レアル・マドリーとの戦い方が重要な意味を帯びそうだ。