不倫した夫を捨てるのは退職金が出てから? もうすぐ定年…「最上の離婚」を狙う妻がとるべき「駆け引き」とは
「退職金の出る夫の定年に離婚の照準を合わせるとよいでしょうか」。
夫の不倫を知った妻から、ドキッとする相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
専業主婦の妻によると、数年にわたって別の女性と関係を持っていた夫は、発覚後に不倫を認め、「相手とは連絡を取らない」と念書に署名したそうです。
妻は関係修復も考えましたが、結局うまくいかず、表向きは円満な夫婦を続けています。もはや愛情も尽き、「よいタイミング」での離婚を考えているといいます。
夫の側にも不穏な動きがあり、定年を迎えた後に不倫相手と暮らそうとしている疑いがあります。
定年まではあと数年です。夫から離婚を切り出されたら拒めるのか、離婚するなら退職金が出るタイミングに合わせるべきか、それとも離婚せずに生活費を受け取り続けるほうがよいのか、妻は悩んでいます。
不倫した夫を捨て、虎視眈々と「最上の離婚」を狙う妻が取るべき駆け引きとは──。離婚問題にくわしい寺岡慎太郎弁護士の監修で解説します。
●不倫をした夫からの離婚請求は、原則として認められにくい
──夫から離婚を切り出された場合、拒むことはできますか。
不倫をするなど、夫婦関係が壊れた原因をつくった「有責配偶者」からの離婚請求は、判例上、原則として認められにくいとされています。妻が応じない限り離婚の成立は難しく、タイミングを選べるのは基本的に妻の側だといえます。
●退職金は、定年の前に離婚しても財産分与の対象になりうる
──退職金の分配を得るには、夫の定年まで離婚を待ったほうがよいのでしょうか。
夫婦が離婚するときは、結婚している間に築いた財産を分け合う「財産分与」を求めることができます(民法768条)。
専業主婦であっても、夫の収入で築いた財産は夫婦が協力して得たものとして、原則として2分の1ずつ分けることになります。
退職金も、結婚している期間に働いた分に対応する部分は、財産分与の対象になります。
まだ支払われていない将来の退職金であっても、勤め先の規模や勤続年数などから、支払われる見込みが高いと判断されれば、財産分与の対象になりえます。
定年まで数年であれば、対象として扱われる可能性は高いでしょう。
つまり、夫の退職金を分けてもらうために、必ずしも定年まで離婚を待つ必要はありません。
●退職金が処理されるケースに注意
むしろ注意したいのは、定年後に退職金が支払われた後のことです。
退職金が預金などの形で残っていれば財産分与の対象になります。しかし、使われてしまえば、取り戻すことは難しくなります。
ですので、夫の定年後に離婚を考える場合は、退職金がいつ、どの口座に、いくら振り込まれたのかを把握しておくことが大切です。
●離婚しなければ「婚姻費用」を受け取れる
離婚しないという選択も視野に入ります。
離婚成立までは、収入の多い側が少ない側に、生活費として「婚姻費用」を支払う必要があります(民法760条)。
離婚をしない限り、この婚姻費用を受け取り続けることができます。ただし、定年後に夫の収入が下がれば、婚姻費用の額も下がる可能性があります。
「定年まで待つ」か「早めに離婚する」かは、退職金の額、婚姻費用として受け取れる額、夫が財産を使い込むおそれなどを比べて判断することになります。
【取材協力弁護士】
寺岡 慎太郎(てらおか・しんたろう)弁護士
法政大学法学部、同大学院法務研究科を修了後、第二東京弁護士会に弁護士登録。
弁護士業の傍ら、同大学院法務研究科にて支援弁護士として憲法、行政法を教える。
主な取扱い分野は離婚・男女問題、ネットトラブル、刑事事件。愛車はマツダRX-8。最近、油物を食べるのがキツくなってきた。
事務所名:あかがね法律事務所
事務所URL:https://culaw.jp/
