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独立したての個人事業主など、国民年金の保険料納付に負担を感じる人のなかには「時効の2年以内にまとめて払えば問題ない」と考えることもあるでしょう。しかし、その認識のまま万が一の病気やケガに直面すると「障害基礎年金」が受給できなくなる恐れがあります。本記事では、年金を滞納している28歳個人事業主の事例をもとに、滞納者が陥りやすい年金制度の落とし穴について、特定社会保険労務士・CFPの五十嵐義典氏が解説します。

「今はとても払えない…」独立したての28歳個人事業主を悩ませる〈年金保険料〉

ケンタさん(仮名・28歳)は大学卒業後、5年間の会社勤めを経て個人事業主となりました。

会社員時代は厚生年金に加入(国民年金としては第2号被保険者)し、厚生年金保険料が給与から天引きされていました。しかし独立して個人事業主になると、国民年金第1号被保険者へ切り替わります。そのため、今後は国民年金保険料(※)を毎月自分で納付しなければなりません。

※2026年度月額:1万7,920円

しかし、各月の保険料の納付期限は翌月末日で、独立したばかりのケンタさんにとって毎月定額の保険料を納付するのは負担となっています。

「今はとても払えない……。本当にこれを毎月納めなければいけないのか」

ケンタさんは大学生時代も第1号被保険者でしたが、学生納付特例などの手続きをせず、保険料はすべて未納のままでした。会社員時代は勤務先が手続きをしてくれましたが、独立した今は、社会保険料や税金の手続きをすべて自分で行わなければなりません。そのなかで、重い負担となる国民年金保険料の納付問題に直面することになったのです。

そんななか、「国民年金保険料の時効は2年」「納付期限を過ぎても2年以内なら払うことができる」と聞きました。

このことを知ったケンタさんは「なんだ、今すぐ払わなくても、2年経つ前に払えばいいんだろ?」と思うようになります。

果たして、本来の納付期限の2年以内に払えば、本当に問題はないのでしょうか。

「2年以内なら問題ない」は本当か?老齢年金における納付済期間

将来、65歳からの老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)を受給するためには、「保険料納付済期間」等の資格期間が10年以上必要です。

納付期限後2年以内に国民年金保険料を納付した場合、その分は保険料納付済期間として、将来の老齢年金の受給に必要な資格期間と見なされます。

また、将来受け取る老齢基礎年金の額は、納付実績に基づいて計算されます。480ヵ月分の保険料納付済期間があれば、満額の84万7,300円(2026年度・70歳以下の場合の年額)を受け取れる仕組みです。

もし、保険料納付済期間が480ヵ月に満たない場合は、その分だけ年金額が少なく計算されてしまいます。ただし、国民年金保険料の納付期限後2年以内に納付すると、その期間は保険料納付済期間として年金額に反映されます。

【社労士FPが解説】老後だけではない…万が一に備える「障害基礎年金」の仕組みと保険料納付要件

ケンタさんにとって、年金制度は「将来、高齢になったときにもらえる老齢年金」だけに関わるものではありません。

現役世代であっても、病気やケガで重い障害が残り、働くことが困難になった場合に支給される「障害年金」という重要な保障制度があります。個人事業主を続けるなか、これからもし一定の障害(障害等級1級・2級)が残った場合、障害基礎年金の対象になり得ます。

障害基礎年金の額は、障害等級2級の場合は84万7,300円(2026年度の70歳以下の場合の年額)、1級の場合は2級の1.25倍の105万9,125円(2026年度の70歳以下の場合の年額)となります。

しかし、これら障害基礎年金の受給は、保険料納付要件を満たさなければ、障害等級(1級・2級)に該当していたとしても、受給できないことになります。

保険料納付要件については、原則要件か特例要件いずれかを満たしている必要があります。いずれも要件を満たしているかは、初診日、つまり初めて障害の原因となる病気やケガの診療を医師等から受けた日を基準に判定されます。

原則要件は、初診日の前日において、初診日の前々月までの国民年金被保険者期間に保険料納付済期間と保険料免除期間が3分の2以上あることとなります。

一方、特例要件は、初診日の前日において、初診日の前々月までの直近1年間の国民年金被保険者期間に未納期間がないこととなります(※)。

※特例要件は初診日時点で65歳未満であることが条件で、2036年3月31日までの時限措置となります。

2年以内に払ったのに…注意すべき障害年金の納付要件

原則要件と特例要件いずれも、「初診日の前日」時点で「初診日の前々月」までの納付状況を確認します。

初診日の前日時点ということは、初診日当日以降に納付しても、納付要件の判定上は保険料納付済期間に算入されないことになります。そして、初診日の前々月までということは、本来の翌月末日という保険料の納付期限を過ぎた期間でもって納付要件の判定を行うことになります。

たとえば、初診日が2026年12月10日の場合、2026年10月(初診日の前々月)までの期間で納付要件の判定をしますが、2026年10月の保険料を納付期限(2026年11月30日)までに払わず、2026年12月10日(初診日当日)以降に払っても、その2026年10月分は保険料納付済期間にならず、未納期間と扱われます。

たとえ2年以内の納付であったとしても、初診日の前日までに払っていなければ、納付要件上は「未納期間」と見なされ、その結果、納付要件を満たせないことによって障害基礎年金が受給できなくなる恐れがあります。

現役時代の「もしも」の時に後悔しないために…免除・猶予制度を活用した計画的な備えを

病気やケガはいつ起こるか予測ができず、その初診日もある日突然やってきます。もしものときのためにも保険料は納付期限後2年以内ではなく、翌月末日の納付期限までに納付することが大切です。

もし、経済的な理由で納付が難しい場合は、所得に応じた「免除・猶予制度」を活用しましょう。保険料の免除や猶予が認められれば、その期間は「保険料免除期間」として扱われます(※)。

※半額免除など一部免除の場合は、減額された残りの保険料を納付することが保険料免除期間として認められる条件となります。

初診日の前日までに保険料免除期間になれば、納付要件で必要な期間に含まれることになりますので、その申請も必要な時に忘れず早めに行いましょう。免除や猶予を受ければ、原則として10年以内に納付(追納)することも可能ですので、その点も押さえておきたいところでしょう。

五十嵐 義典
特定社会保険労務士/CFP®
株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役

※個人情報保護のため、登場人物の情報等は一部変更しています。