〈ジャングリア173億円赤字〉投じられた政府系資金は「112億円規模」さらに30億円追加融資へ…膨らみ続ける公的マネー「責任者は誰だ?」
「ジャングリア沖縄」は世界自然遺産「やんばる」から連なる自然を売りにした沖縄県北部のテーマパークだ。2025年7月のオープンから一年以上経過したが、開業直後には、広告イメージとのギャップやアクセスの悪さなどからネット上には来場者からの不満の声が相次いだ。そんな中、運営会社ジャパンエンターテイメントの親会社、ジャパンエンターテイメントホールディングスが株主総会で2026年6月期決算で173億円の最終赤字になったことを明らかにした。減税インフルエンサーのオオサワ・キヌヨ氏は「ジャングリアをめぐって巨額の政府系資金が投じられてきた。責任者の名前を出せ。そして、元手を返せ」と怒り心頭だ。
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判明している政府系資金は112億円規模。しかしこれだけじゃない
ジャングリア沖縄に、いくらの政府系資金が関わっているのか。
答えから言う。ジャングリアに関わる政府系資金は、現時点で金額がはっきりしているものを合計すると約112億円規模にのぼる。ただし、これには融資、出資、補助金という性質の異なる資金が含まれており、すべてが「税金としてパークに支出された」という意味ではない。
内訳は三つ。一つは、国の政策金融機関である沖縄振興開発金融公庫が、ジャングリアの運営会社側に新たに融資する方向で最終調整していると報じられた30億円。
二つ目は、政府が出資金の9割以上を出資する官民ファンド、クールジャパン機構が、ジャングリアを手がける森岡毅氏の会社「刀」に出資を決めた80億円(刀は、この80億円に自己資金を加え、ジャングリアの運営会社に出資したと説明している)。
三つ目は、内閣府がジャングリアの運営会社に交付を決めた補助金で、2024年度の2935万1000円と2025年度の1億6242万9000円、合わせて約1億9180万円である。
しかも、これで全部ではない。
税金でビジネスを支えることの是非が問われている
公庫は、開業のときに銀行などと組んだ366億円の融資と、2026年4月の20億円の追加融資にも加わっていると報じられている。そのうち公庫がいくら出したのかは、公表されていない。つまり、約112億円という数字だけで、ジャングリアをめぐる政府系資金の全体像を示すことはできない。
そして、運営会社の親会社の、開業後初の決算は173億円の最終赤字だった。ここで見逃してはならない事実がある。
今回の融資は公庫の単独で、4月に一緒にお金を貸した民間の銀行は加わっていないと報じられている。もちろん、政策金融には、民間金融機関だけでは資金供給しにくい事業を補完する役割がある。
しかし、巨額の赤字を計上した直後に政府系金融機関が単独で追加融資に動くのであれば、その判断の妥当性は厳しく検証されるべきだろう。
これは産業支援なのか。それとも事業を延命するための融資なのか。仮に返済不能となれば、公的金融機関に損失が生じる可能性もある。国民の側からすれば、なぜ追加融資が必要なのか、その理由と返済可能性について十分な説明を求めるのは当然だ。
クールジャパンは「トータルで見て成功」なのか
パーク開発を主導したマーケティング会社「刀」の森岡毅氏にも、説明すべきことはある。採算の目安とされた年150万人に対し、初年度の来場はスパを含めて100万人にとどまった。
その一方で、政府系金融機関による新たな融資が検討されている。刀自体も2025年6月期に累積損失が約62億円に達し、2026年2月には同社が手がけた東京・お台場のテーマパークが開業から約2年で閉鎖された。
もちろん、これだけで刀や森岡氏の事業そのものを「失敗」と断定することはできない。しかし、巨額の政府系資金も関わる以上、当初の需要予測や投資判断が妥当だったのかは検証されなければならない。
では、なぜこうした公的支援が繰り返されるのか。ここで考えたいのが、これまでのクールジャパン政策である。答えはハッキリしている。政府が、クールジャパンの失敗をまったく反省していないからだ。
中村伊知哉氏の件を見ればわかる。元官僚で、2013年には政府のクールジャパン推進会議でポップカルチャー分科会の議長を務め、以来、国のコンテンツ政策に長く関わってきた人物だ。
また、2016年から2023年まで吉本興業ホールディングスの社外取締役を務め、その在任中の2019年、クールジャパン機構は吉本興業とNTTグループの事業に出資している(ただし、中村氏がこの出資の意思決定に関与したことを示す資料は確認できない)。
そのクールジャパン機構は、累積赤字が約540億円に達し、他機関との統合または廃止を前提とした検討が進んでいる。ところが中村氏は、機構を含むこれまでのコンテンツ政策を「トータルでみて成功」と自ら評価した。
そして経済産業省は、2033年に日本発コンテンツの海外売上高20兆円を目指す新戦略を取りまとめる研究会で、この人物を座長に据えている。廃止といっても、国がカネを出してコンテンツ産業を後押しする政策そのものは、形を変えて続こうとしているのである。
カネを配った者、カネを貸した者
クールジャパン機構は540億円の累積赤字を出した。それでも、新たな国家戦略が動き出している。公的資金を投入した事業が期待した成果を上げなかったとき、その投資判断はどこまで検証され、誰が責任を負うのか。この点を曖昧にしたままでは、同じような公的支援が繰り返されかねない。
話はジャングリアに戻るが、森岡氏や刀だけを批判して終わる話ではない。巨額の政府系資金がジャングリアに届くまでには、出資を決めた者がいて、融資を決めた者がいる。
まず、出資した側だ。クールジャパン機構は「官民ファンド」を名乗る。だが出資金1513億円のうち、政府出資は1406億円。約93%が政府のカネだ。これを「官民ファンド」と呼ぶ以上、民間投資以上に、その投資判断について国民への説明責任が問われるのではないか。
公的支援の仕組みは、ほかにもある。内閣府の沖縄振興特定事業推進費だ。2019年度予算で新設された制度で、当時の担当大臣は、自民党沖縄振興調査会での議論なども踏まえて設けたと説明している。
市場で問われる事業を、公的資金でどこまで支えるのか
この補助金で、内閣府はジャングリアの運営会社に2024年度2935万1000円、2025年度1億6242万9000円の交付を決めた。名目は「高度観光人材育成支援施設整備事業」で、観光人材を育てる研修施設の整備だ。融資と違い、補助金は原則として返す必要がない。
もちろん、政策金融や補助金には、民間だけでは資金が回りにくい事業を支えたり、地域経済や雇用などの政策効果を生み出したりする役割がある。
しかし、それならなおさら問われるべきなのは、その公的支援によってどれだけの効果が生まれたのか、そして支援を決めた時点の事業計画や需要予測が妥当だったのかということだ。税金や政府系資金で民間ビジネスをどこまで支えるのか。その線引きは、厳しく問われなければならない。
なぜ政治家は、ここまで公的資金を民間事業に投入するのか。積極財政を経済成長につなげようとする政策には一定の合理性がある。一方で、公的資金を使う以上、その効果や失敗時の責任を曖昧にしていいはずはない。
消費税などの安定財源を背景に政府の歳入が確保されているとしても、それが個々の支出の妥当性を保証するわけではない。公的支出だからこそ、投資や融資、補助金の効果を厳しく検証する仕組みが必要なのである。
責任を問われるのは政治だけじゃない。判を押した側もだ
そして、問われるのは政治だけではない。融資や出資を決めた側にも説明責任がある。
第一に、審査である。結果として採算の目安の3分の2にとどまった事業に、公庫を含む金融機関は融資を決めた。もちろん、結果だけを見て当時の審査が誤りだったと断定することはできない。だが、当初どのような需要予測を立て、どのようなリスクを想定して融資を決めたのかは検証されるべきだろう。
投資判断については、クールジャパン機構は2022年、刀への出資を発表した資料で、刀が「精度の高い需要予測モデル」を持ち、手がけた案件を高い確率で成功に導いてきたと評価していた。
しかし、初年度の来場者数は採算の目安とされた数字を下回った。機構は何を根拠に80億円の出資を決めたのか。そして現在、その投資判断をどう評価しているのか。
第二に、追加融資である。報道によれば、4月に一緒に貸した民間銀行が加わらない中で、公庫が単独で新たに30億円を出す方向で最終調整しているという。政策金融による「民業補完」というのであれば、なぜ今、公庫だけが追加融資する必要があるのか。その理由は説明されるべきだ。
第三に、出口がない。30億円は資金繰りを維持するための「つなぎ融資」と報じられている。何につなぐのか。どうなれば経営が安定するのか。逆に、どのような状態になれば追加支援をやめるのか。少なくとも現時点で、国民にその全体像が十分説明されているとは言いがたい。
第四に、責任の所在が見えない。クールジャパン機構が約540億円の累積損失を抱え、ジャングリア運営会社の親会社が173億円の最終赤字を計上したという結果を踏まえれば、過去の投資・融資判断について検証する必要がある。
森岡氏の計画が結果として当初想定を下回ったのなら、その計画に公的資金を付けた判断は、いったいどう評価されるべきなのか。どの機関が、どのような事業計画や需要予測に基づいて公的資金を投じたのか。
個々の融資や出資の決裁者まで外部から確認することは難しい。だからこそ、政府系機関は判断の根拠と経緯を、可能な限り国民に説明する必要があるのではないか。
責任の所在を明らかにし、元手を断て
ジャングリアに入った政府系資金が最終的に回収できなければ、公的金融機関や官民ファンドに損失が生じる可能性がある。
公金を使い続けるというのなら、「沖縄振興」「クールジャパン」といった大義名分を並べるだけでは足りない。公庫の融資判断も、クールジャパン機構の出資判断も、それを監督した官庁も、誰がどう判断してカネを出したのか。その判断の根拠と経緯を、国民に説明すべきだ。責任の所在が曖昧なままなら、同じことは繰り返される。
そして同時に、国民の側にできることがある。公金の使い道を厳しく問うことだ。政府が税金を集める以上、それがどのように使われ、どのような成果を生んだのかを検証するのは当然である。
筆者は、公的資金による民間ビジネスへの支援を抑えるためにも、政府が使えるカネそのものを減らす必要があると考える。
減税によって政府の財布を細らせ、公的資金を安易に民間ビジネスへ投入する余地を小さくする。取られるカネを減らすことが、公金の使途を見直すことにもつながる。食品の消費税減税だけでは足りない。もっと減税を進め、公金を安易に投入できる余地そのものを狭めるべきだ。
国民は、もっと怒っていい。いや、怒るべきなのだ。汗水たらして納めた税金や政府系資金が民間事業に投入されるのであれば、その判断と結果について説明を求めるのは当然の権利である。
事業が計画通りに進まなかったとき、なぜ追加支援が必要なのか。誰がどのような根拠で支援を決めたのか。そして、その判断は結果として妥当だったのか。我々は、黙って公金の使い道を見過ごす存在ではない。
責任者を明らかにせよ。そして、公金を使うなら、その根拠と結果を明らかにせよ。
いつまでも、黙っていてはいけない。
文/オオサワ・キヌヨ 写真/shutterstock
