冠水被害が発生した名古屋市。この日、火災報知機の誤作動が相次いだ(8日、名古屋市中川区で)=尾賀聡撮影

写真拡大

 ビルやマンションに設置された「自動火災報知設備」(火災報知機)で、火災が発生していないのにベルが鳴るなどの誤作動が、大雨で多発している。

 湿度の上昇や経年劣化などが原因とみられる。消防の活動にも影響が出ているという。(岡本与志紀)

通報相次ぐ

 秋雨前線の影響で9月8~9日、各地で大雨が降った。大阪市消防局には、「非常ベルが鳴っている。煙や火は見えない」といった119番が相次いだ。このうち、火災報知機の誤作動による通報は67件あった。8日に冠水被害が生じた名古屋市では54件。両市では消防隊が出動し、火の気の有無の確認に追われた。

 8月13~14日に豪雨に見舞われた千葉市では、水没した車に閉じ込められた人の救助や、道路で転倒した人らの搬送に追われ、出動件数は200件以上あった。このうち誤作動による出動が32件を占め、千葉市消防局警防課の担当者は「人手を割かれ、大きな負担となった」と振り返った。

 大阪市では、誤作動による通報は平時は1日20件前後で、千葉、名古屋両市では、10件未満という。

熱式でも

 火災報知機は、設備の種類によって火災を感知する方法が異なる。主に3種類で、それぞれ煙、熱、炎に反応する。

 メーカーなどでつくる「日本火災報知機工業会」によると、煙式は感知器の内部に煙が入ると、発光部から出る光が煙の粒子に当たって乱反射し、受光部で感知することで火災と判断する。ただ、大雨で急激に湿度が高まって内部に結露が起きた場合、水滴で乱反射したり、電気回路がショートしたりして誤作動を起こすことがある。

 熱式では、感知器周辺の温度が急上昇することで、感知器内部の空気が膨張し、火災と判断するタイプがある。総務省消防庁によると、こちらも雨天時に誤作動を起こすことがあるという。感知器の交換時期の目安は10~15年で、放置し続けると経年劣化により、わずかな温度や湿度の変化を感知してしまう恐れもあるという。

 同庁は「詳細な原因の特定はしていないが、雨の日に誤作動が多いのは事実」とする。

こまめな管理を

 誤作動に強いタイプの報知機もある。消防設備の大手メーカーは、水蒸気を検知しにくい構造の感知器を開発、販売している。感知器が正常に作動しているかを遠隔で確認できる機器も販売している。

 同庁は「誤作動が起きれば、豪雨や洪水などの非常時の場合、消防の態勢に影響を及ぼす。ビルやマンションの管理者は夜間でも立ち会いが求められ、負担も大きい。こまめなメンテナンスや、故障時の素早い交換をお願いしたい」としている。

住宅用は劣化・放置が課題に…設置10年超が3割以上

 戸建てや小規模な住宅を対象にした「住宅用火災警報器」では、誤作動による通報は少ないとみられるが、経年劣化や更新の放置が課題となっている。

 総務省消防庁によると、住宅用火災警報器は改正消防法で2011年までに全戸で設置が義務づけられた。煙や熱に反応するが、誤作動を起こしても住人が火の気がないことに気づき、通報に至っていないケースが多いとみられる。

 一方で、定期点検が義務づけられていないため、故障や電池切れで作動しないリスクがある。設置から10年程度での交換が望ましいが、同庁の全国調査(今年6月時点)では、10年を超えて設置されていたものが35%に上ったという。

 同庁は「逃げ遅れによる死傷につながるので、住宅用も定期的に確認してもらいたい」としている。

 ◆自動火災報知設備=火災による煙や熱、炎を感知し、警報で建物内の人に知らせる設備。感知器は天井などに設置される。消防法で1961年に設置が義務づけられた。病院やホテル、一定規模以上のビルやマンションなどが対象となる。2024年度末時点で全国約172万6000か所に設置され、設置率は9割弱。