日産が作った欧州車! 初代『プリメーラ』が与えた衝撃 買うなら今?【第5水曜日の男、遠藤イヅルの令和的ヤングタイマー列伝:第9回】
日本から欧州車が出た! デビュー時の衝撃
こんにちは。クルマを主体としたイラストレーター兼ライターの遠藤イヅルです。年に数回だけやってくる『第5水曜日』に、今見直したいヤングタイマー世代のクルマについて記す当連載。第9回は、初代『日産プリメーラ』をお送りします。
【画像】日産が作った欧州車!1990年の衝撃作、初代『プリメーラ』と歴代モデル 全13枚
時代ごとに流行や世相が異なるように、クルマも流行り廃りや定番が変わります。かつて販売の主流は4ドアセダンが定番かつ基本でしたが、1990年代からミニバンやSUVやハッチバック車に移行して、4ドアセダンは今や風前の灯です。

国産車らしからぬアピアランスで人気を博した初代日産プリメーラ。 日産自動車
日本国内ではその4ドアセダンにも流行がありました。
今では一律にセダンと呼んでいますが、1990年代頃までは4ドアハードトップがありましたよね。これらの車種はスタイル優先で車高が低いことが是で、車体サイズに比べて車内は狭めでした。むしろキャビンが大きくて背が高い車種は売れなかったほど。
特に1980年代はその傾向が顕著でした。広くて便利なクルマを求める昨今の風潮からすると、隔世の感があります。そんな最中の1990年。初代『日産プリメーラ』(P10型)が日本市場に降臨しました。
クラスでは『サニー』の上、『ブルーバード』の下に位置した『オースター』と『スタンザ』を統合して誕生したプリメーラは、メッキを一切持たないソリッドでクリーンな外観に、前進した大きなキャビンを持ち、広くて快適な車内と実用的なラゲッジを備えていました。
フロントサスペンションにはマルチリンク式が奢られ、優れたハンドリングを示すという、まさに『日産が作った欧州車』と言える出で立ちでした。
それは当時、プジョー405などパッケージングに優れたクルマを紹介する雑誌を耽読し、欧州車ハンパない! と傾倒していた19歳の僕の脳を揺するほどの衝撃を与えたのです。
日本車の転換点のひとつ
実のところ日産は、1980年代後半あたりから、煌びやかさよりもシックで上質な6代目『ローレル』、欧州風な3代目『パルサー』、ビッグキャビンの大きな実用車である3代目『マキシマ』などを輩出していましたが、それでも大きな流れを変えるには至りませんでした。
ところがプリメーラは、若いユーザーを中心に大きな注目を集めます。走る、止まる、曲がるという基本性能が高く、運転が楽しく、快適で車内が広いという当たり前のような条件を備えたクルマが、それまでの日本車にはあまり多くなかったというのも理由のひとつでしょう。欧州車とガチで勝負できる国産車という評価も、それを後押ししたはずです。

当時の国産車としてはキャビンが大きかったのが印象的。『プリメーラパッケージ』というコピーも懐かしいです。 日産自動車
なお開発の主幹は、『フォルクスワーゲン・サンタナ』の日本生産を担当した日産の津田靖久氏。その経験が、欧州流の生産ノウハウや設計思想に生かされたといいます。
氏は当時の回想録で「国際的な視野に経って、世界一のセダンを作るつもりだった」と語っています。初代プリメーラは、まさにその深い哲学が具現化された1台でした。日本のユーザーにパッケージングという言葉と概念、そして広くて快適なセダンの存在を知らしめたはずです。
1990年代前半には利便性に秀でたステーションワゴンやミニバンが台頭する一方、やがてセダンでも居住性を意識した車種が各メーカーから発売されるようになりました。初代プリメーラは、その点でも日本車に大きな転換点を作ったのかもしれません。
維持困難なクルマだが、狙うなら今?
そんな初代プリメーラも、気がつけば1995年の生産終了から30年以上が経過しました。ところが大手中古車検索サイトでは、2026年9月後半現在で15台が掲載されており、思ったより多い印象です。
初代プリメーラは1.8/2リッター、FF/4WD、前期/中期/後期に大別できます。中古市場でのメインは上位グレードの『2.0Tm』、スポーティグレード『2.0Te』で、フルタイム4WD『アテーサ』搭載の『2.0T4』、ベーシックな『1.8Ci』などが売られています。前期型は7台、オートマチック車が10台、という陣容です。

ドライバーオリエンテッドなダッシュボード。空調の操作パネルより使用頻度が高いオーディオが上に置かれるのも、欧州流でした。 日産自動車
価格は下限が50万円台、平均は98万円。手頃なのは10万km以上の過走行(年式を考えるとそれでも少ない)ではあるのですが、5~8万km台でも100万円~130万円台で、旧車、ヤングタイマー人気が高まっている今では、リーズナブルに感じられます。
ただ、大手を振ってオススメできないのは、このあたりの年式全般に言えるのですが、維持が困難になっているとこと。他社からの改造流用ができ、国内にない部品は世界各地から探してくれる……など親身になって対応してくれるショップ、維持費の確保、そして何よりそれなりの覚悟が必要かと思います。
とはいえプリメーラは、国産車の歴史に名を残す名車。経年を考えても、買うなら今しかないのもまた、事実です。
次回の『第5水曜日の男』は12月30日です。どうぞご期待ください。
