9月18日、日銀政策決定会合において政策金利は1.25%に引き上げられた。政策金利は6月に1.0%に引き上げられて以来、今年2回目の利上げである。上げ幅は0.25%と小幅ながら2024年7月から計5回にわたる利上げは、好調を続けてきたマンションマーケットの首をじわじわと絞め始めている。

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登録価格と成約価格を比べると…

 この状況を端的に表しているのが東日本不動産流通機構の発表する中古マンションマーケットレポートだ。直近の発表によれば2026年7月において東京都内で新規登録された中古マンションの登録価格(売り出し希望価格)は9173万円だった。これに対して同月都内で成約した中古マンションの平均価格は7004万円。登録価格と成約価格の間に30%以上の開きが生じていることがわかる。

 これは単月で生じた奇異な動きではなく、2025年1月以降継続して見られる現象でかつ、登録価格と成約価格の差がこの1年半もの間に開く一方になっている。

金利に敏感に反応する、中古マンション相場

 2025年1月といえば、日銀が2024年7月以来2回目の利上げ(0.5%)を実施した時期と重なる。物価上昇が鮮明になり、インフレに対する警戒感が世の中に蔓延し始め、今後も金利は上昇するとの見方が定着したのがこの頃だ。

 中古マンションの登録価格と成約価格が拮抗し始めたのが2024年7月が起点になっていることを見ても、中古マンション相場がいかに金利に敏感に反応しているかがわかる。現状では新規登録価格(売り出し希望価格)が急騰しているのに対して、成約価格がまったくついていけずにその差が開き続け、ついにはその差が30%にも及んでいるのだ。

グラフで差が大きく開いてゆく危機的状況「ワニの口」

 多くのメディア報道が誤るのは、中古マンションの新規登録価格のみを報道し、マンション価格が上がり続けていると騒ぎ立てることだ。これはあくまでも売り手側の希望価格が高騰しているにすぎないのであって、実態の価格(成約価格)を理解していないことだ。これは「ワニの口」とも呼ばれ、表面的な価格の動きと実態の価格が離れていることが本当の意味でのマンションマーケットの現実なのだ。

 もう一つ注目すべきマーケットの動きが中古マンションの在庫数の推移だ。

 都内の中古マンション在庫数はこの1年間(2025年6月と2026年6月)で2万3188戸から2万6120戸と12.6%も増加している。これを売り希望価格1億円以上の在庫数に絞りこむと4251戸から7689戸となんと81%もの大幅増加になっている。高額帯の物件ほどマーケットで売れ残って在庫として積み上がっていることがわかる。

1億円超えの高額帯物件は在庫数が急伸

 それでも一部の評論家やメディアは、都内の在庫は増えたものの周辺3県の在庫数は減少している、したがって都内物件価格が上がりすぎたので周辺3県に需要が移っていると解説しているがこれも、データをよく解析出来ていない表面的な論評だ。

 価格帯別の在庫数をみれば、やはり1億円を超える高額帯の物件は在庫数が急伸しており、マーケットはあきらかに変節していることが示されている。

今後さらに大きな影響を及ぼす経済事象

 今回の政策金利の引き上げは冷え込み始めたマンションマーケットにさらに大きな影響を及ぼす可能性が高い。すでに変動金利型住宅ローンを利用してきた世帯ではローン金利が1%程度上昇している世帯が多くなってきた。わずか1%ということなかれ。1億円を30年以上の期間で借りていれば、購入して数年程度では元金はほとんど減っていない。金利1%の利息は年間100万円に相当する。この間、マンション管理費や修繕積立金がそれぞれ2倍に上昇したマンションも少なくない。一般家庭にとってこの負担増は無視できない水準になりつつある。

 日銀は年度内に少なくともあと1回の利上げを行うとの予測が大勢を占めている。さらに国は短期間での不動産転売を防ぐことを目的に、短期での不動産譲渡によって得た利益に対して高率の課税を行うことを検討している。また相続対策用に不動産を買う動きに対しても相続発生前5年以内の取得については時価で評価するよう税制を改正する。国の動きは変節を始めたマーケットの足を引っ張ることにつながるだろう。こうした状況下、これまでマーケットを牽引してきた投資マネーも一旦引き下がることになるだろう。やはり「宴」は終焉したのだ。

(牧野 知弘)