産婦人科と婦人科の違い|症状に合わせた診療科の選び方
「産婦人科と婦人科は何が違うのだろう」と迷ったことはありませんか。どちらも女性の身体に関わる診療科ですが、扱う範囲には違いがあります。妊娠や出産に関わる相談なのか、月経や更年期の不調に関わる相談なのかによって、選ぶ受診先が変わってきます。
本記事では、産婦人科と婦人科の違いについて以下の点を中心に解説します。
産婦人科と婦人科がそれぞれ扱う診療の範囲
婦人科と産科、それぞれの受診が向いている症状
迷ったときの選び方と、初めて受診するときの準備
産婦人科と婦人科の違いについて理解を深めるためにも、参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
中里 泉(医師)
2008年宮崎大学卒業後、東京都立大久保病院にて初期研修。東京大学医学部付属病院産婦人科に入局。東京大学医学部付属病院、東京北医療センター、JR東京総合病院などの勤務を経て、現在は生殖医療クリニックに勤務。日本産科婦人科学会専門医。
産婦人科と婦人科の違いの基本

産婦人科と婦人科は、名前が似ていても扱う範囲が異なります。ここではそれぞれの守備範囲と診療科名の考え方を解説します。
産婦人科が扱う診療の範囲
産婦人科は、産科と婦人科の両方を含む診療科です。妊娠や出産に関わる分野と、女性特有の臓器の病気に関わる分野の双方を扱います。産科が受け持つのは、妊娠の確認から妊婦健診、出産、産後の身体の回復までです。妊娠中に起こる高血圧や糖代謝の異常など、母体と胎児の状態を継続してみていく役割も担います。
日本医師会は、医療機関が広告できる診療科名として「産婦人科(産科、婦人科)」を示しており、産婦人科としての標榜に加えて、産科や婦人科として個別に掲げることもできると説明しています。つまり産婦人科は、妊娠や出産と、それ以外の女性の身体の不調の両方に対応できる診療科です。どちらの相談でも受診先の候補になります。
ただし、施設によって力を入れている分野には差があります。妊娠や出産を中心に扱う施設もあれば、婦人科の手術に対応する施設もあるため、診療内容まで見ておくと選びやすくなります。
婦人科が扱う診療の範囲
婦人科は、妊娠や出産を除く女性特有の身体の不調を扱います。日本産科婦人科学会は、婦人科の病気として、異常子宮出血や不正性器出血、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣の腫瘍やがんを挙げています。あわせて、女性のライフサイクルに関わる項目として月経前症候群や更年期障害も示されています。月経に伴う不調から、閉経前後の体調の変化まで幅広く含まれます。
このほか、おりものの異常や性感染症、避妊や月経に関する相談も婦人科が受け持ちます。子宮頸がん検診の窓口としても身近な存在です。
妊娠していない時期の身体の悩みは、まず婦人科を思い浮かべておくと選びやすくなります。年齢を問わず受診できる点も知っておきたい部分です。10代の月経の悩みから閉経後の不調まで、対象になる範囲は広く取られています。
産婦人科・産科・婦人科の診療科名の違い
診療科名は、医療機関が自由に決められるわけではありません。日本医師会は、広告できる診療科名のルールを示しており、産婦人科については「産婦人科(産科、婦人科)」の形で掲げられると説明しています。
産婦人科と標榜している場合は、妊娠や出産の相談と婦人科の病気の相談の両方に対応する体制があると考えられます。産科のみを掲げている場合は妊娠や出産が中心で、婦人科のみを掲げている場合は妊娠や出産以外が中心になります。
日本医師会は、産婦人科と「男性」「小児」「児童」を組み合わせた標榜は認めていないとも示しています。一方で「産婦人科(生殖医療)」のように、診療方法を併記する形は認められています。
看板やホームページに書かれた診療科名は、その医療機関が何を中心に診ているかを知る手がかりになります。産科と婦人科の両方を掲げていても、実際に対応している範囲は施設ごとに幅があります。
レディースクリニックや女性外来との違い
レディースクリニックという言葉をよく見かけますが、これは診療科名ではなく医療機関の名称です。診療科名としては、産婦人科や婦人科などが別に掲げられています。そのため、名称だけでは扱う範囲を判断できません。分娩を扱っているのか、婦人科の病気を中心にみているのかは、医療機関ごとに異なります。
女性外来も同様に、診療科名として定められたものではありません。なお日本医師会は、内科について「女性内科」を広告できる例として挙げており、患者さんの性別などの特性を組み合わせた標榜が認められる場合があると示しています。
受診先を選ぶ際は、名称ではなく掲げられている診療科名と診療内容を確認しましょう。
婦人科の受診が向いている症状と場面

妊娠に関わらない身体の不調は、婦人科が窓口になります。ここでは代表的な場面を解説します。
月経に関する不調がある場合
月経周期の乱れや、月経量の増減、強い月経痛は婦人科の相談の対象です。日本産科婦人科学会も、異常子宮出血や不正性器出血を婦人科の病気として挙げています。痛みが強く鎮痛薬が効きにくい場合や、日常生活に支障が出ている場合は、子宮内膜症や子宮筋腫が背景にあることもあります。我慢して過ごすより、早めに相談したほうが選べる対応が増えます。
月経前に心身の不調が現れる月経前症候群も、同学会が挙げている項目の一つです。気分の落ち込みやいらだち、むくみなどが周期的に繰り返される場合は相談の目安になります。
厚生労働省の補助金事業として運営されている女性の健康推進室ヘルスケアラボでも、月経トラブルに関する情報が整理されています。
更年期に現れる不調がある場合
閉経の前後に現れる体調の変化も、婦人科が対応する分野です。日本産科婦人科学会は、更年期障害を女性のライフサイクルに関わる項目として示しています。のぼせやほてり、発汗、動悸、めまい、気分の落ち込み、眠りにくさなど、症状の現れ方は幅広く、個人差があります。ほかの病気が隠れている場合もあるため、自己判断で年齢のせいと決めつけないほうが安心です。
婦人科では、症状の経過を聞き取ったうえで必要な検査を行い、ホルモン補充療法や漢方薬などの選択肢が検討されます。生活面の工夫について助言を受けられる場合もあります。
ヘルスケアラボでも、思春期から更年期、老年期までのライフステージごとの健康課題が扱われています。
おりものや性感染症の心配がある場合
おりものの量や色、においの変化は、婦人科で相談できる症状です。かゆみや不快感を伴う場合は、感染が関わっていることもあります。性感染症が心配な場合も婦人科が窓口になります。自覚症状が出にくいものもあるため、心当たりがあるときは症状の有無に関わらず検査を受ける意味があります。
放置すると、骨盤内に炎症が広がって将来の妊娠に影響する場合もあると考えられています。早めに相談することで、必要な治療を受けやすくなります。
ヘルスケアラボでも、性感染症や避妊など性に関する悩みが項目として扱われています。相談しにくいと感じる内容こそ、専門の窓口を利用しましょう。
子宮や卵巣の病気が気になる場合
子宮や卵巣の病気の相談も婦人科が担います。日本産科婦人科学会は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣の腫瘍やがんを婦人科の病気として挙げています。これらは自覚症状が乏しいまま進むものもあり、検診で見つかる場合もあります。下腹部の圧迫感や不正出血、排尿や排便の変化などが手がかりになることもあります。
子宮頸がん検診は、各自治体で対象年齢の方に案内されています。症状がなくても定期的に受けておくと、早い段階で見つけやすくなります。家族に同じ病気の方がいる場合や、月経以外の出血が続く場合は、症状が軽くても相談してみましょう。
産科の受診が向いている症状と場面

妊娠に関わる相談は産科の領域です。ここでは妊娠の確認から産後までの流れを解説します。
妊娠の確認や今後の受診先を相談したい場合
月経が遅れ、市販の妊娠検査薬で陽性が出た場合は、産科または産婦人科を受診します。超音波検査で子宮内に胎嚢が確認できるかを調べ、妊娠の週数を判断します。この段階で確認が必要になるのが、子宮外妊娠の有無です。子宮の外に着床している場合は対応が変わるため、自己判断で様子をみずに受診しましょう。
妊娠が確認されると、出産する医療機関をどこにするかを相談する流れになります。分娩を扱っていない施設で妊娠を確認した場合は、分娩を扱う施設を紹介してもらいます。住んでいる自治体への妊娠届の提出や、母子健康手帳の受け取りについても、この時期に案内されます。
妊婦健診と出産の準備
妊娠が確定した後は、定期的に妊婦健診を受けます。体重や血圧、尿検査、超音波検査などを通じて、母体と胎児の状態を継続して確認します。健診の間隔は妊娠の経過に応じて変わり、週数が進むにつれて短くなっていきます。自治体から交付される受診票を使うと、費用の負担を抑えられます。
妊娠中に高血圧や糖代謝の異常がみられた場合は、管理の方法が変わります。持病がある場合も、妊娠前から相談しておくと計画を立てやすくなります。出産が近づくと、入院の時期や連絡の方法、立ち会いの可否などの説明を受けます。疑問は健診の場で確認しておきましょう。
産後健診や産後の身体に関する相談
出産の後も、産科での受診は続きます。産後健診では、子宮の回復や傷の状態、血圧などを確認し、身体が妊娠前の状態へ戻っているかをみていきます。産後は、身体の変化に加えて心の負担も大きくなりやすい時期です。気分の落ち込みが続く場合は、産後うつの可能性を含めて相談できます。健診の際に、体調と合わせて気持ちの状態も伝えて構いません。
母乳に関する悩みや、月経の再開、次の妊娠に向けた避妊についても産科で相談できます。授乳中に使える薬の相談もできます。
ヘルスケアラボでは、妊娠や出産の支援に加えてメンタルヘルスの項目も扱われています。自治体の窓口とあわせて活用しましょう。
産婦人科と婦人科で迷ったときの選び方

どちらを選ぶか判断しにくい場面もあります。ここでは判断の手がかりと受診の準備を解説します。
症状から受診先を判断する
判断の起点になるのは、妊娠が関わるかどうかです。妊娠の可能性がある場合や、妊娠中や産後の相談であれば産科または産婦人科を選びます。月経の不調や更年期の症状、おりものの異常、子宮や卵巣の病気に関する相談であれば婦人科が窓口です。婦人科のみを掲げている医療機関でも対応できます。
判断に迷う場合は、産婦人科を選んでおくと両方の領域に対応してもらいやすくなります。妊娠の可能性を否定できない状況では、その旨を受診時に伝えておきましょう。不正出血のように、妊娠に関わる場合と婦人科の病気による場合の両方が考えられる症状もあります。迷ったときは、電話で症状を伝えて相談先を確認する方法もあります。
分娩を扱う施設と扱わない施設の違い
産婦人科を掲げていても、分娩を扱っているとは限りません。分娩には24時間の対応体制が必要になるため、外来のみを行う施設もあります。妊婦健診だけを行い、出産は連携先の施設で行う形をとる医療機関もあります。里帰り出産を考えている場合は、健診と分娩の担当が分かれる場合もあります。
婦人科の病気で受診する場合は、分娩の有無は判断の基準になりません。むしろ、検査や手術に対応できるか、必要に応じて連携先へ紹介してもらえるかを確認しておくと安心です。医療機関のホームページや電話で、分娩の取り扱いと診療の範囲を事前に確認しておきましょう。
初めて受診するときに準備するもの
初めて受診する際は、健康保険証と、自治体から届いた検診の案内があれば持参します。服用中の薬がわかるものも、あわせて持っていくと説明が省けます。問診では、最終月経の開始日や月経周期、妊娠や出産の経験、持病や服用中の薬などを尋ねられます。最終月経の日付を記録しておくと、当日に慌てずに済みます。内診がある場合を考えて、着脱しやすい服装で行くと負担が軽くなります。スカートを選ぶ方もいます。
聞きたいことをメモにまとめておくと、限られた診察時間でも伝え漏らしにくくなります。症状がいつから続いているか、どのようなときに強くなるかを書き添えておくと、医師も判断しやすくなります。緊張しやすい場面だからこそ、準備が助けになります。
まとめ

ここまで、産婦人科と婦人科の違いについてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
産婦人科は産科と婦人科の両方を含み、妊娠や出産と女性特有の病気の双方を扱う
婦人科は月経の不調や更年期障害、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気を担い、産科は妊娠の確認から産後までを担う
迷ったときは妊娠が関わるかどうかを起点に選び、分娩の取り扱いや診療の範囲を事前に確認しておく
産婦人科と婦人科の違いは、扱う範囲の広さにあります。名称だけで判断せず、掲げられている診療科名と診療内容を確認しておくと、相談したい内容に合った受診先を選びやすくなります。判断に迷うときは、医療機関へ問い合わせてみてください。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
診療科名の標榜方法|日本医師会
婦人科の病気|日本産科婦人科学会
女性の健康推進室 ヘルスケアラボ|厚生労働省研究班監修

