【闘病】岩田明子「シェーグレン症候群」が仕事にも影響… 5つの診療科に通う現在の姿とは
シェーグレン症候群と診断されたジャーナリストの岩田明子さんは現在、リウマチ内科や眼科、歯科など複数の診療科に通いながら、目や口の乾き、関節痛などの症状と向き合っています。根治につながる治療法が確立していないなか、日々の生活ではどのような工夫ができるのでしょうか。本記事では、岩田さんが実践する症状への対処や病気を公表した理由とともに、現在の治療法や通院を続ける重要性、今後期待される治療について井畑先生の解説とあわせてお伝えします。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年8月取材。
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岩田 明子 さん(ジャーナリスト)
東京大学法学部卒業後、1996年にNHK入局。岡山放送局へ配属。2000年に東京の放送センター報道局政治部へ異動、官邸記者クラブに所属。2002年当時官房副長官だった安倍晋三元首相の番記者を担当。以来、20年以上に渡って安倍元首相を取材。13年から解説委員と政治部の記者職を兼務。2022年にNHKを退局。ジャーナリストとして報道番組に出演する一方で、執筆活動も続けている。千葉大学客員教授、株式会社ドトール・日レスホールディングス社外取締役。
井畑 淳 医師(日本リウマチ学会認定リウマチ専門医)
横浜市立大学医学部を卒業後、横浜市立大学大学院医学研究科 病態免疫制御内科学教室(現・幹細胞免疫制御内科学)にて研究を行う。生体の免疫に深く関わる感染症・リウマチ・血液内科・呼吸器内科に精通。広範な知見と経験をもとに、膠原病リウマチ内科で診療に携わると同時に、後進の育成にも力を注いでいる。日本内科学会認定総合内科専門医・指導医、国立病院機構横浜医療センター臨床研究部長/膠原病・リウマチ内科部長。
複数の診療科に通う日々シェーグレン症候群の治療と生活の工夫
井畑先生
診断のあと、実際にはどのような治療を受けてこられたのですか? 通院の頻度なども教えてください。
岩田さん
通院している科がとても多くて、リウマチ内科と消化器内科、眼科、歯科、がんセンターにも通っています。リウマチ内科では3カ月に1回ほど採血と尿検査で状態を確認しています。お薬は、効くかどうかは分からない、という説明もされていますが漢方をずっと処方してもらって飲んでいます。
井畑先生
複数の科でお薬を使われていると、飲み合わせなども気になりますね。
岩田さん
そうなんです。月に1度飲んでいる骨粗しょう症の薬は、歯科の治療に影響します。各科で正確な情報をもとに治療をしてもらえるように、報告を忘れないよう気をつけています。
井畑先生
日常生活でも工夫されていることはありますか?
岩田さん
生活面では、体内時計をきちんと整えることを心がけています。また、スマホの歩数計で毎日7000歩を必ず超えるように意識しています。忙しいとタクシー移動が増えて1日800歩くらいになってしまうこともあるので、足りない分は夜に歩くなどして調整しています。
井畑先生
ほかにも意識されていることはありますか?
岩田さん
朝起きたらすぐカーテンを開けて光を入れ、夜は寝る前に必ず湯船に浸かって深部体温を上げるようにしています。
井畑先生
テレビのお仕事をされているなかで、症状によって大変だと感じる場面もあるかと思います。
岩田さん
出演中や講演中に口が乾いてしまって咳き込むことがすごく増えてしまって、のど飴やのど薬をポケットに入れて、すぐ口に入れられるようにしています。
井畑先生
目の症状はいかがですか?
岩田さん
目が痛くなってしまったときはどうしようもないので、コンタクトレンズを入れ替えたり、目薬を使っています。以前、血管収縮剤の入った目薬を長く使いすぎてしまったことがあり、リバウンドで慢性的な充血になってしまったので、少々反省しています。
井畑先生
シェーグレン症候群の治療は、基本的に対症療法が中心になります。目の乾きに対しては点眼薬を使います。日本では3~4種類の点眼薬が使えるので、ほかの国よりも選択肢が多いと言えます。ヒアレインのほか、少し染みるタイプのジクアス、点眼した後に苦みを感じるムコスタなどを組み合わせて、目を少しでも潤すようにします。
岩田さん
私は見送りましたが、涙点プラグによる治療についても、詳しく教えていただけますか?
井畑先生
涙点プラグは、目頭付近にある涙の排出口「涙点」に小さな栓をして、涙が鼻へ流れ出るのを抑える処置です。人によって穴の大きさが違うため、うまく合わないと外れてしまうこともあります。涙点プラグでも改善しない重い症状の人には、涙点を物理的に閉じてしまう方法や、保険診療ではありませんが自分の血液から作る自己血清点眼という治療を行うこともあります。ただし、自己血清点眼には保存料を入れられず傷みやすいため、本当に症状が重い人に限られる治療です。
岩田さん
口の乾きに対しては、どのような治療があるのでしょうか?
井畑先生
口の乾きに対しては、唾液腺を直接刺激して分泌を促すセビメリンやピロカルピンといった薬を使います。ただ、唾液を作る機能自体がかなり落ちてしまっていると、刺激してもうまく出てこないこともあります。こまめな水分補給や、口の中を潤すスプレー、仕事中のマスク着用なども有効です。
岩田さん
関節の痛みについてはいかがでしょうか?
井畑先生
関節の痛みには痛み止めを使い、炎症が強く握力が落ちてしまうような場合には抗リウマチ薬を使うこともあります。肺や神経、腎臓など命に関わる臓器におよぶ重い症状には、全身的な免疫抑制療法を行うこともあります。ただし免疫を抑える分、感染症のリスクが上がってしまうという難しさもあります。今のところ、これをすれば完治するという特効薬はまだ見つかっておらず、症状を和らげながら長く付き合っていく治療が基本になります。
「公表して本当によかった」治療を続ける意味と、病気とともに生きるために
岩田さん
通院を途中でやめてしまったり、症状を放置してしまったりすると、どのようなリスクがあるのでしょうか?
井畑先生
治療や検査を自己判断でやめてしまうと、体の変化を追いかけられなくなってしまいます。たとえば、ご本人が自覚する前に検査結果に変化が出ることもありますし、シェーグレン症候群でまれに合併する悪性リンパ腫のような病気も、早く見つけることでより早く対応できます。自己判断での通院中断や服薬の中止はお勧めできません。主治医と相談しながら治療を進めることが重要です。
岩田さん
医療の進歩に伴い、新たな治療法や病気そのものに対する治療法も出てくる可能性はあるのでしょうか。
井畑先生
今は対症療法が中心ですが、今後もっとよい治療が登場したときに、そのタイミングを逃してしまう可能性もあるので、通院を続けていただくことはとても大切です。治療法の研究も進んでいて、最近ではB細胞など免疫に関わる仕組みを標的とした薬の臨床試験が行われています。すでに第3相試験まで進んでいる薬もあり、今後の治療につながることが期待されています。
岩田さん
そうなのですね、期待したいです。
井畑先生
これまでの治療は関節や皮膚の症状を良くすることが中心でしたが、最近は唾液腺の炎症そのものをできるだけ早い段階で止められないか、という研究が注目されています。近年は病気の背景にある免疫の仕組みそのものを標的とした治療薬の研究も進んでおり、今後、病気そのものの活動性を抑える治療につながることが期待されています。病気のことを公表された理由や、公表した後の周囲の反応はいかがでしたか?
岩田さん
私がまだ会社員だったころは、元気でないと会社内の評価に関わるような時代で、みんな元気であることをアピールしていました。しかし、徐々に時代も変わり、働き方改革や女性の生き方への理解も広がってきたので、カミングアウトする方がいろいろな情報も集まってきますし、同じ病気で苦しんでいる人の参考にもなるのではないかと思うようになりました。
井畑先生
実際に公表されてみて、どのように感じていますか?
岩田さん
病気について話すことで、治療の進歩や病気に関する情報をいただくことができて、公表して本当によかったと感じています。診断がつき、「自分はこういう病気なんだ」とはっきりわかることで、悩んでいた症状への不安が和らぐことが多いと思います。これから何が起きるかも予測しやすくなりますし、たとえばシェーグレン症候群では悪性リンパ腫や薬剤に対するアレルギー反応が出やすいことがあるとわかります。そのため、自分でしこりがないか確認するなど、注意もしやすくなります。そのように前向きに捉えられるようになったと感じています。
井畑先生
岩田さんと同じような症状で悩まれている方にとって日常生活で大切なことは、水分をこまめに取ること、刺激物を取りすぎないこと、うがい薬はアルコールの入っていないものを選ぶこと、唾液腺を軽くマッサージすることなどが挙げられます。そして、何より大切なのは規則正しい生活です。睡眠が取れていないと体が休まらず、翌日の痛みにつながることも多いので、例えば、3時間頑張ったら15分休むというように、こまめにリセットする時間を作ることをおすすめしています。
岩田さん
シェーグレン症候群をはじめとする膠原病は、私自身がそうだったように、どの科に行けばいいのか分からず、たらい回しのようになってしまって、なかなか良くならないと諦めてしまう人も多いと思います。それでも諦めずに、婦人科、リウマチ内科、専門の病院と、ひとつひとつの診療科を訪ねていけば、どこかに解決の糸口があると思うので、原因究明を諦めずに頑張ってほしいです。それから、歩く、踏み台昇降をする、筋トレをするといった、当たり前だけれど怠けがちなことも、ぜひ見直してみてください。私自身、過去の生活を反省しているところなので、皆さんにはぜひ筋肉の貯金をし、自律神経を整えて、しっかり栄養も取ってほしいなと思います。
編集後記
シェーグレン症候群は根治につながる治療法が確立していない一方、目や口の乾きなど、症状に応じた治療やケアを続けることが大切です。岩田さんも複数の診療科に通いながら生活の工夫を重ね、病気を公表したことで向き合い方にも変化が生まれたと話します。本稿が、シェーグレン症候群を正しく知り、治療を続けながら自分なりの病気との付き合い方を考えるきっかけとなりましたら幸いです。

