28日夜、3時間半特番『最強大食い決定戦2026秋』が放送される(番組公式HPより)

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 ネットでもテレビでも人気コンテンツの1つである"大食い企画"。先日、YouTubeでは新たな動きが注目を集めた。韓国を中心に収益化停止の動きが広がっているというのだ。一方、テレビでは人気番組として今も放送され続けている。その背景にあるものとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

【写真】最強大食い決定戦の前回王者や王座を狙う参加者たち。他、『有吉ゼミ』チャレンジグルメに参加する西城秀樹の息子・木本慎之介やバスケ元日本代表・野本建吾なども

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 23日、グルメジャーナリスト・東龍氏が執筆した「YouTubeで"大食い動画"の収益化停止が相次ぎ波紋 以前からあった5つの問題」というタイトルの記事がYahoo!トピックスに取り上げられました。

 これはYouTubeが摂食障害や過食に関する規制を強めたことによる動き。その背景として「摂食障害」「早食い」「食を大切にしない姿勢」「食品ロス」「飲食店の負担」という5つの問題点があげられました。

 現段階では主に韓国での動きのようですが、この報道を受けてネット上には「日本も早く収益停止にするべき」「大賛成」「どんどんやってくれ」などの肯定的な声があがっています。さらに見逃せないのは、2日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で嘔吐しながらラーメンを食べ続ける「ラーメンマラソン」が問題視されたことを引き合いに出す声。YouTubeだけでなくテレビ番組にも厳しい声があがりはじめています。

 ところが間の悪いことに28日夜、3時間半特番『最強大食い決定戦2026秋』(テレビ東京系)が放送されます。テレビの大食い企画と言えば、1989年からテレビ東京で放送されていた『大食い選手権』シリーズに加えて、2000年にドラマ『フードファイト』(日本テレビ系)、2001年に『フードバトルクラブ』(TBS系)がスタートするなど、2000年代に一大ブームを巻き起こしました。

 その後、小学生の悲しい事故があったことで番組への批判が加熱。近年も健康上のリスクだけでなく、SDGsのためにフードロス削減を目指す動きも加わったことで減っていました。

 しかし、それでも今なお『有吉ゼミ』(日本テレビ系)の「チャレンジグルメ」シリーズや『デカ盛りハンター』(テレビ東京系)などが放送されています。なぜ批判を浴びながらも大食い企画は放送され続けているのでしょうか。

「大食いのエンタメ化」に活路

 配信視聴が普及した今なおテレビ局が視聴率ベースのビジネスモデルを変えていない以上、「大食い企画は視聴率が取れる」からこそ放送され続けているのは間違いないところ。事実、月曜19時台で安定した視聴率を獲得している『有吉ゼミ』の「チャレンジグルメ」は看板コーナーであり、最も多くの時間を割いて放送されています。

 これはメイン出演者のギャル曽根さんが笑顔でキレイに食べることや、飲食店が量の多さだけでなく工夫を凝らした超大盛りメニューを準備しているなど、かつての大食い番組とは異なるクリーンなイメージによるところが大きいのでしょう。

 そもそもゴールデンタイムの19時台はグルメ企画が人気の時間帯。ただ普通に芸能人が食べるだけでは見てもらえないため、ビジュアル的にインパクトがあり、笑顔でおいしそうに食べ切る姿に爽快感がある大食いが選ばれているという背景がうかがえます。

『デカ盛りハンター』もアイドル的なかわいらしい女性が食べるなどのエンタメ路線で、苦しそうに食べるシーンはまず見られません。実際18日の放送では金沢のゴールドカレー(5kg)にアンジェラ佐藤さん、海老原まよいさん、多部田ねるさんが挑み、エンディングでは「3世代女王全員完食」と掲げて締めくくりました。

 YouTubeで大食い美女がフィーチャーされていることもあって大食いコーナーの出演者候補は豊富。「あの子が出るなら観たい」という固定ファンがいることも放送が続けられている理由の1つでしょう。

 一方、『最強大食い決定戦』シリーズは国際大会としてのスケール感で勝負。「世界王者の称号をかけて日本人が屈強な外国人と戦う」という図式で緊張感やドラマ性を生み出しています。

 いずれの番組にも共通しているのは、「大食いを見せるだけでなくエンタメ性を追求して見応えのあるものにしよう」という制作スタンス。さらに健康診断などの安全配慮を徹底することで批判を未然に防ごうとしています。大食いはYouTubeでの人気ジャンルとなったように一部の人々にはしっかり刺さるコンテンツであり、「いかにそうでない人からの批判を防ぐか」に注力しているのでしょう。

"飯テロ"がゴールデンにも拡大

 大食い番組が続いている背景としてあげられるのが"飯テロ"の拡大解釈。

 昭和時代からテレビ業界には夕方18時台から21時あたりにかけて番組内の料理や食事シーンで食欲を誘う傾向がありましたが、2010年代に入ると深夜帯のドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)の"飯テロ"という概念が生まれました。

 当初"飯テロ"は深夜帯のものでしたが、近年は18~19時台から食欲を誘うような構成・演出で挑む番組も増えています。ちなみに関東地区ではテレビ東京で『孤独のグルメ』が毎日18時台に繰り返し再放送されていますが、これも"飯テロ"拡大の象徴的な編成でしょう。

 さらにその主人公・猪之頭五郎(松重豊)も劇中で店員から「まだ食べるの?」と驚かれるシーンがあるなど、明らかに大食いのキャラクター。同作は五郎の大食いを楽しむ番組であり、それが深夜帯だけでなく18時台にも定着したことに時代の変化を感じさせられます。

 また、大食いではありませんが19時台で放送されている『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日本テレビ系)も"飯テロ"の拡大解釈を感じさせる番組。何度となく大盛りメニューや追加のサービス料理がピックアップされ、それらをおいしそうに食べる一般人の姿が映され、食欲をそそっています。

 もともとテレビ番組には「視聴者ができないことを見せる」という役割があり、たとえばアーティストの歌・演奏・ダンス、アスリートの好プレー、難問クイズの解答、漫才やトークの話術などはその1つ。視聴者はそれらを見るだけでなく、疑似体験するように楽しむことができます。

 大食いも「視聴者ができないことを見せる」という番組であり、さらに各世代で1人暮らしの世帯が増えたことで「誰かと一緒に食べている感覚がほしい」というニーズに応えるものとしても認識されるようになりました。

ローコストで動画配信再生も良好

 これら以外の理由としては、「リサーチから台本作り、演出、編集などの難易度が低く、キャストやセットなどのコストも減らせる」という制作における効率の良さもポイントの1つでしょう。

 また、『デカ盛りハンター』が番組のYouTubeチャンネルで"完食ロングバージョン"を配信しているようにネット動画との親和性が高いことも強み。再生数は数十万回から多いものでは200万回を超える動画もあるなど、TVerなども含め「ネット上で稼げるコンテンツ」であることも大食い番組が続く背景となっています。

 今後も、食べることの楽しさを発信することはもちろん、生産者や料理人へのリスペクトを示しながら大食い番組は続いていくのでしょう。一方でそのような大食いコンテンツを扱うリテラシーに欠ける動画配信者は厳しい状況に追い込まれていくのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。