日本の企業情報を狙う中国の習近平・国家主席

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 生成AIの急速な普及にともない、膨大なデータを処理する半導体の需要が爆発的に高まっている。その状況下で、わが国が世界に誇る化学メーカー「旭化成」の元幹部社員が半導体関連情報を中国企業に流出させた疑いで逮捕された。あろうことか、この容疑者は、内閣府から“専門的な知識や技能を持つ人材”としてお墨付きを得た「プロ人材」だった……。

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【写真を見る】情報漏洩を犯しそうな顔には見えないが…古川容疑者の素顔

8年ほど前に持ち出し

 くだんの人物は静岡県富士市の古川祥一容疑者(66)。今年9月17日、愛知県警生活経済課によって不正競争防止法違反(営業秘密の開示)容疑で逮捕された。

「古川は2018年11月末、旭化成を退職する際に、半導体や自動車の製造に使われる接着剤『潜在性硬化剤』の製造データ、つまり機密情報が入ったハードディスクを不正に持ち出した。そして24年9月に、そのデータを中国企業へとメールで漏洩したとされます。報酬目的との見方があり、中国に渡航していたフシもある。なお、判明した流出先は山東省の化学素材メーカー『山東聖泉新材料』でした」

日本の企業情報を狙う中国の習近平・国家主席

 そう語る愛知県警担当記者によると、現時点では、外国為替及び外国貿易法(外為法)における“国益を損ねる危険性を孕んだ情報漏洩”ではなく、あくまで“一企業の営業秘密を洩らした”疑いだというが、

「現在も、古川が流出先企業やその周辺との関係を深めた経緯や、見返りに関する捜査が続いています。今回の容疑は、およそ8年前に機密情報を持ち出し、そしてその6年後に漏洩したこと。実は、本件の発覚は別の事案がきっかけでした。彼が中国企業に漏洩する前の月、24年8月に転職先の名古屋市内にある化学薬品メーカーから、県警に対して情報漏洩事案の相談があったのです」

 その内容は、“古川が辞める前に使用していたパソコンから、データが外部に移行された形跡が見つかった”というものだった。

自宅の捜索で容疑浮上

 先の県警担当記者が続ける。

「県警は名古屋の化学薬品メーカーからの相談をもとに、25年4月、古川の自宅を捜索。押収したパソコンやスマホなどの解析によって“芋づる式”に本件が浮上し、逮捕へと至りました。化学薬品メーカーが相談した情報漏洩事案について、詳細は明らかになっていませんが、少なくとも旭化成退職後から県警が捜索を行うまで、古川は“野放し状態”だった。余罪が出る可能性も否定できません」

 本件容疑がクロであり、余罪が出るようなことになれば、情報漏洩の“常習犯”。でなくても、疑いがかけられるような人物が、内閣府が15年度から推進してきた「プロフェッショナル人材事業」のモデルとなっていたのだ。

 古川容疑者を知る旭化成のOBが語る。

「内閣府の事業は、大企業の人事部と連携して、地域企業に専門的な知識や技能を持つ人材を紹介するというものです。古川くんは1984年に新卒で旭化成に入り、約35年間在籍。おもに電子材料部門の開発責任者といった重要ポストを歴任しました。地域企業にとってはまちがいなく“プロ人材”だと思っていたのですが……」

半導体材料事業における柱

 旭化成退社後の古川容疑者は、静岡市の半導体製造装置メーカーや先の化学薬品メーカーなど、4つの企業に勤めていたといい、

「古川くんの転職先は旭化成人事部から紹介された地域企業でした。彼の経験や人脈を活かし、組織づくりや若手育成、需要が高まる一方の半導体事業をはじめ、会社経営の中核を担う業務を任されていると思っていました。実際、プロフェッショナル人材事業のガイドブックにも、彼のプロフィールや地域企業での業務内容が載っていましたから」(旭化成OB)

 古川容疑者の元上司にあたる別の旭化成OBは、かつての部下の逮捕をいまだに信じられずにいる。

「仕事の実力はもちろん、頼りになる部下でした。旭化成の強みである、半導体を熱や衝撃から守る保護フィルムなどの分野の重要性を理解したうえで、自らの仕事の展望を見据えていた。潜在性硬化剤は一般的に、常温では反応せず、加熱や湿気、光によって反応するもので、旭化成は『ノバキュア』の商品名で販売。半導体製造や、自動車や土木などさまざまな分野で活用されています」

 ノバキュアは、旭化成の半導体材料事業における柱の一つと位置付けられ、力を注がれてきた。旭化成は今後、古川容疑者と中国の山東聖泉新材料に対して、当該情報の利用停止と廃棄などを目的とした民事訴訟を起こす予定と発表している。

「それほど重要な商品の製造データを外部に洩らすなんて、OBとして到底信じられることではない。ですが事実だとすれば、彼は旭化成退職後、従来の取引先だけでなく色々な企業と接したはずですから、そのなかで中国サイドに“狙い撃ち”されてしまったのではないかと思いたい。もし目先のお金などを目的に情報漏洩したのだとしたら、元上司として、万死に値すると言わざるを得ません」

 万死に値する行為に手を染めた人物に、内閣府が太鼓判を押していた。この、極めて深刻な事実は動かしがたい。

デイリー新潮編集部