那須川天心“因縁”拓真に涙の判定負け ダウン奪うも…同じ相手に痛恨連敗 世界戦2連敗で崖っ縁
◇WBC世界バンタム級タイトルマッチ 同級1位・那須川天心(帝拳)<12回戦>王者・井上拓真(大橋)(2026年9月27日 トヨタアリーナ東京)
WBC世界バンタム級1位の那須川天心(28=帝拳)は同級王者・井上拓真(30=大橋)に判定0-3で敗れ、2度目の挑戦でも世界王座獲得はならなかった。昨年11月に敗れた相手と約10カ月ぶりの再戦でリベンジを果たせず、世界戦2連敗となり崖っ縁に立たされた。
“神童”に非情な現実が待っていた。格闘技人生初のリベンジ戦で、またしても世界のベルトに手が届かなかった。
チャレンジャーとして臨んだ那須川。目を閉じて両手を広げて登場し、「しゃあぁー」と吠えて気合十分。矢沢永吉の「止まらないHa-Ha」の入場曲をバックに入場すると会場は大歓声に包まれた。リング上の選手紹介中も静かに目を閉じて精神統一し、恒例のパフォーマンスは封印した。
初回、拓真をじっくりと観察するかのように距離を保つなど、静かな立ち上がり。2回、左ボディーから左ストレートを打ちおろした。拓真がよろけて尻もちをつき、左手を高々と掲げた。だが、これはスリップ判定だった。その後、互いに一進一退の攻防を展開した。
4回終了後の公開採点で0-2とリードを許すと、5回以降は手数を増やして果敢に攻めた。そして7回、序盤から激しく打ち合うと、左ストレートが拓真の顔面を完璧に捉えてダウンを奪った。しかし、8回終了後の公開採点では1-2と依然リードを許した状況だった。
9回以降、さらに積極的に前に出た。だが、左を当てる一方で、被弾も多くなりポイントを詰めることができず、0-3の判定負け。判定後、目に涙を溜めてリング上の四方で頭を下げた。そして、リングを降りて父親と抱擁を交わすと、目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。
「普通の練習じゃ勝てない」と初黒星を機に練習環境も見つめ直した。キックボクサー時代に指導を受けていた、元帝拳ジムトレーナーの葛西裕一氏(現GLOVESジム会長)と再タッグ。独特なステップワークを組み込んだ攻撃的な新スタイルに取り組み、“倒すボクシング”に磨きをかけた。スランプに陥った時期には、ジムの大先輩で元ミドル級世界王者の村田諒太氏から「お前は天才なんだから、自分の感覚を信じろ」と金言を授かり、“本能”のままに戦った。ジムメートが「ヘラヘラした天心を見なくなった」と話すように、日々の練習から決死の覚悟だった。
「負けて預けたものはかなりデカい。利子をたくさんつけて持ち帰りたい」とリベンジを誓ったが、約10カ月間の成長を見せることはできなかった。残された選択肢は他団体王者への挑戦か、階級アップか。同じ相手に2連敗する屈辱を味わった“神童”が岐路に立たされた。

