「皮膚むしり症」とはどんな病気?行動の特徴や発症しやすい人年代や性別も解説!
皮膚にできたかさぶたやニキビが気になり、つい触ったり、はがしたりしてしまうことは珍しくありません。しかし、皮膚をむしる行為を何度も繰り返し、傷ができてもやめられない場合は、皮膚むしり症の可能性があります。
皮膚むしり症は、強迫症および関連症群に分類される病気です。皮膚をむしることで皮膚に傷ができ、本人がやめようとしても繰り返してしまうことが特徴です。単なる癖と思われやすい一方で、症状が強いと皮膚の傷だけでなく、外出や仕事、人間関係などにも影響することがあります。
この記事では、皮膚むしり症の特徴や受診先、治療方法について解説します。
監修廣瀬 正和
京都大学医学部を卒業後、大学病院勤務を経て市中病院で脳神経内科医として5年間従事しました。専門医取得後、母校大学院で研究を続けています。
【資格、専門医等】
日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、日本脳神経超音波学会超音波検査士
【診療科目】脳神経内科、一般内科※
一般内科には呼吸器、消化器、循環器、膠原病、アレルギー、腎臓、血液、内分泌、神経、救急の領域、また一部の皮膚科や耳鼻科や泌尿器科の疾患などを含みます
皮膚むしり症の特徴

皮膚むしり症はただの癖とは違うのですか?
皮膚に傷ができるほど繰り返し、やめようとしてもやめられず、生活に支障が生じている場合は、単なる癖とは異なります。かさぶたをはがしたり、ニキビを触ったりすること自体は、多くの方にみられる行動です。そのため、皮膚を触ることがあるだけで皮膚むしり症と診断されるわけではありません。
皮膚むしり症は、皮膚をむしる行為を繰り返すことで皮膚病変が生じ、本人が何度も減らそう、やめようと試みても続いてしまいます。また、その行動によって強い苦痛を感じたり、学校や仕事、人間関係などの日常生活に支障が出たりしていることも診断を考えるうえで重要です。
自分でもやめたいと思っているのに繰り返してしまう点が、皮膚むしり症の特徴の一つです。
行動の特徴を教えてください
指や爪などを使って皮膚を繰り返しむしるほか、ニキビやかさぶたなどを何度も触ることがあります。皮膚むしりの対象となる場所はさまざまです。健康な皮膚をむしる方もいれば、ニキビ、かさぶた、たこなどの小さな皮膚変化をみつけ、それを取り除こうとして繰り返し触る方もいます。
皮膚むしりの仕方にも個人差があります。テレビを見たり本を読んだりしながら無意識のうちに皮膚を触っている場合もあれば、鏡を見ながら皮膚の凹凸を探し、意識的にむしる場合もあります。
また、皮膚をむしる前に緊張感や不安感が高まり、むしった後にそれらが軽減したり、満足感を覚えたりする方もいます。一方で、こうした感情を明確に自覚せず、無意識に行っていることもあります。
発症しやすい年代や性別はありますか?
幅広い年代にみられますが、思春期頃に症状が始まることが多いとされています。ニキビなどの皮膚トラブルがきっかけとなって皮膚を触り始め、その行動が続く場合もあります。
性別では女性に多い傾向が報告されています。2023年に発表された報告では、皮膚むしり症の有病率は約3.45%と推定され、女性のほうが男性より多いという結果が示されました。
ただし、男性にも起こる病気であり、年齢や性別だけで皮膚むしり症かどうかを判断することはできません。
参照:
『Excoriation (skin-picking) disorder: a systematic review of treatment options』(Neuropsychiatric Disease and Treatment)
『Prevalence and gender distribution of excoriation (skin-picking) disorder: A systematic review and meta-analysis』(Journal of Psychiatric Research)
皮膚むしり症の受診と治療

精神科と皮膚科のどちらに相談すればよいですか?
皮膚をむしる行動そのものに困っている場合は精神科や心療内科、皮膚の傷や炎症が強い場合は皮膚科に相談するとよいでしょう。皮膚むしり症は、強迫症および関連症群に分類される病気です。そのため、皮膚をむしる衝動や行動を減らすための治療は、精神科や心療内科で行われることがあります。
一方、皮膚をむしった結果として傷や出血、炎症などが起きている場合には、皮膚科での診察や治療も必要になることがあります。
どちらを受診すればよいか迷う場合は、まず相談しやすい診療科を受診し、必要に応じて適切な医療機関につないでもらうとよいでしょう。
どのような治療が行われますか?
認知行動療法などの心理療法が行われるほか、症状に応じて薬物療法が検討されます。代表的な心理療法の一つが習慣逆転法です。習慣逆転法では、まず自分が皮膚をむしっていることへの気付きを高め、行動のきっかけとなる状況を確認します。そのうえで、皮膚をむしりそうになったときに別の行動へ置き換える練習を行います。例えば、皮膚を触りたくなったときに手を握る、手を別の作業に使うなど、皮膚むしりと同時には行いにくい行動へ切り替えます。
薬物療法では、SSRIやクロミプラミン、N-アセチルシステインなどが用いられることがあります。
ただし、すべての方に同じ治療が適しているわけではありません。薬の使用については自己判断せず、症状や併存する病気などを踏まえて医師と相談することが大切です。
治療でよくなりますか?
治療によって皮膚をむしる回数や衝動が減り、日常生活への影響を軽くできる可能性があります。皮膚むしり症に対しては、認知行動療法や薬物療法によって症状が改善する可能性が示されています。一方で、治療に関する研究はまだ限られており、効果には個人差があります。
治療では、最初から皮膚を一切触らないことだけを目標にするとは限りません。
皮膚をむしる回数を減らす、傷を作らない時間を増やす、むしりたくなったときに別の行動を選べるようになるなど、少しずつ行動を変えていくことも大切です。
症状には波があり、ストレスが強い時期などに皮膚むしりが増えることもあります。自分がどのような状況で皮膚を触りやすいのかを把握し、対処方法を身につけていくことが治療につながります。
皮膚むしり症に関するよくある質問

家族が治療を後押しするためにできることはありますか?
皮膚をむしる行為を責めるのではなく、本人が困っていることに目を向け、受診しやすい環境を整えることが大切です。皮膚むしり症では、本人が何度も行動をやめたり減らしたりしようとしても、うまくいかないことがあります。
そのため、「また触っている」「どうしてやめられないの?」などと繰り返し注意するだけでは、本人の苦痛を強めてしまうことがあります。
家族は行動そのものを責めるのではなく、「傷が増えていて心配」「困っているなら一度相談してみよう」などと声をかけ、本人が抱えている困りごとに目を向けることが大切です。
本人が希望する場合には、受診できる医療機関を一緒に探したり、診察に付き添ったりすることも治療につながるきっかけになります。
治療せずにいると悪化しますか?
必ず悪化するわけではありませんが、症状が長く続いたり、皮膚の傷が増えたりすることがあります。皮膚むしり症は慢性的な経過をたどることがあり、症状が長期間続くケースも報告されています。
皮膚を繰り返しむしることで、傷や出血、傷跡などが生じることがあります。また、傷を人に見られたくないために外出を避けるなど、日常生活や人間関係に影響することもあります。
例えば、次のような状態が続く場合には、医療機関への相談を検討しましょう。
何度やめようとしても皮膚をむしってしまう
出血するほど皮膚を傷つけてしまう
傷や傷跡が増えている
皮膚を見られることが苦痛になっている
学校や仕事、外出などに影響している
症状の程度だけで受診の必要性を判断するのではなく、本人が困っているかどうかも重要です。
編集部まとめ

皮膚むしり症は、皮膚を繰り返しむしることで傷が生じ、やめようとしても行動を繰り返してしまう病気です。強迫症および関連症群の一つに分類されています。
症状が続くと、傷や傷跡などの皮膚トラブルだけでなく、皮膚を人に見られたくないために外出を避けるなど、日常生活にも影響する場合があります。
皮膚の傷や炎症が気になる場合は皮膚科、皮膚をむしる行動そのものをやめられず困っている場合は精神科や心療内科への相談を検討しましょう。
治療では、習慣逆転法などを含む認知行動療法が行われるほか、症状に応じて薬物療法が検討されます。
単なる癖だからと考えて無理に我慢し続けるのではなく、皮膚をむしることで傷が増えている、生活に支障が出ているといった場合には、医療機関へ相談しましょう。
参考文献
『Excoriation (skin-picking) disorder: a systematic review of treatment options』(Neuropsychiatric Disease and Treatment)
『Prevalence and gender distribution of excoriation (skin-picking) disorder: A systematic review and meta-analysis』(Journal of Psychiatric Research)

