眠気覚ましのコーヒーより効果的…1分間引っ張るだけで脳がスッキリする「手」でも「足」でもない"意外な部位"
※本稿は、松本恒平著・野上徳子監修『体から脳を癒やす すごい自律神経セルフケア』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■絶好調で一日のスタートを切る方法
「朝起きるのがつらい」「午前中は頭がぼーっとして使いものにならない」私の治療院でもそのように悩む方がたくさんいらっしゃいます。
夜更かしや遮光カーテンの利用、寝る前のスマホの光なども影響しますが、最大の原因は「体内時計のズレ」と「自律神経の切り替え」がうまくいかないことにあります。
私たちの体内時計は、実は24時間より少しだけ長めに設定されています。そのため放っておくと毎日少しずつズレていき、時差ボケのような状態になります。朝は、そのズレた体内時計をリセットする必要があります。
朝起きたら、まずカーテンを開けて、窓際で15分ほど日光を浴びましょう(曇りの日でもOKです)。太陽の光が網膜に入ると、脳内の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という時計遺伝子の司令塔に信号が届き、体内時計がリセットされます。
つまり、朝、スッキリと目覚め、交感神経(活動モード)のスイッチをパチンと入れる儀式が「太陽の光を浴びること」なのです。
■朝の習慣で、ぐっすり眠れるかが決まる
また、脳内で「セロトニン」という覚醒ホルモン(幸せホルモン)が分泌され、頭がクリアになり、意欲が湧いてきます。さらに重要なのは、このセロトニンが、夜になると「メラトニン(睡眠ホルモン)」に変化するという点です。
メラトニンは、脳を睡眠モードへと誘い、細胞の修復(アンチエイジング)を行なう強力なホルモンです。「夜眠れない」という人は、夜の過ごし方よりも、まず朝の光が足りていない可能性があります。
朝の習慣は、そのまま夜の快眠への予約チケットなのです。
■背骨をトントン叩いて刺激する
光で脳を目覚めさせたら、次は「体(神経)」を目覚めさせましょう。おすすめなのが、背骨のまわりをトントンと叩く刺激法です。

これは、かつてアメリカや日本でも行なわれていた「スポンデロテラピー(脊髄神経反射療法)」という伝統的な手技療法の原理を応用したものです。
背骨(脊椎)の中には、脳から続く太い神経の束「脊髄」が通っており、そこから全身の臓器や筋肉に向かって神経が枝分かれしています。つまり、背骨は自律神経のメインケーブルそのものです。
背骨の際(きわ)をトントンとリズミカルに叩くことで、その振動が脊髄神経に伝わり、「朝だ! 動くぞ!」という起動スイッチが入ります。
特に、交感神経の神経節は背骨の両脇に並んでいるため、ここへの刺激は、寝ているあいだの「副交感神経モード」から、活動するための「交感神経モード」への切り替えをスムーズにしてくれます。
軽くこぶしを握り、腰のあたりから背中にかけて、背骨の両側(指2本分くらい外側)を、トントンと気持ちいい強さで叩きます。手が届かない背中の上のほうは、家族に叩いてもらうか、壁に背中を当ててトントンとぶつかるように刺激してもOKです。
■皮膚をさすって「ファシア(膜)」を整える
次に、全身の「ファシア」(筋肉、骨、内臓、血管、神経など体の組織を包み込んでいる膜)のケアを行ないます。
寝ているあいだ、私たちはあまり動きません。そのため、全身を包む膜(ボディスーツ)は、寝ているときの姿勢のまま少し癒着し、こわばっています。
朝起きたときに、体に痛みを感じたり、ギシギシと動きが悪かったりするのは、このボディスーツが縮んでいるからです。そこで、「両腕を軽く叩く・さする」ケアを行ないます。
皮膚への軽い刺激(タッピングや摩擦)は、皮膚の下にある感覚受容器を刺激し、脳に「ここに腕があるよ」「ここに皮膚があるよ」という身体地図(ボディ・マップ)情報を再入力します。
同時に、皮膚と筋肉のあいだにあるファシアに水分を呼び込み、滑りをよくします。
手のひらで、腕全体(肩から指先まで)を、ポンポンと軽く叩いていきます。次に、手のひらで「サッ、サッ」と軽くさすります(服の上からでOK)。余裕があれば、脚や胴体も軽くさすってあげましょう。
これだけで、縮こまっていたボディスーツにアイロンをかけたようにシワが伸び、体が軽く、動かしやすくなります。光を浴び、背骨を叩いて、皮膚をさする。この3点セットを行なえば、あなたの体は最高の状態で一日をスタートできるはずです。
■「ランチ後の眠気」を解消する方法
お昼ご飯を食べたあとの午後2~3時頃。「頭がぼーっとして働かない」「強烈な眠気に襲われる」「体が鉛のように重い」そんな「魔の時間帯」に悩まされていませんか?
このどうしようもないだるさの原因は、単なる寝不足ではありません。大きく分けて2つの「脳のエラー」が同時に起きているのです。
1つは、長時間のデスクワークによる「脳圧の上昇(酸欠)」。そして、「脳の糖化」です。ランチでラーメン、パスタ、丼ものなどをガッツリ食べると、血糖値が急速に上がります(血糖スパイク)。
すると、余分な糖質が脳のタンパク質と結びつき、一時的に脳細胞が炎症を起こします。これが「糖化」です。わかりやすくいえば、脳が砂糖漬けになって、ベタベタと錆びついている状態です。
すると脳内では神経伝達がスムーズにいかず、処理能力がガタ落ちします。

体は消化のために胃腸に血液を集めようとしますが、脳も炎症を冷やすためにエネルギーを欲しがり、自律神経は大パニック。結果、強制シャットダウンとしての「強烈な眠気」が発生するのです。
そんなとき、眠気覚ましにコーヒーを飲んだり、エネルギー補給に甘いお菓子を追加投入したりするのは火に油を注ぐようなもの。必要なのは、カフェインでも糖分でもなく、物理的に脳の「循環」をよくして、炎症物質を洗い流すこと。
そして、そのための最強のスイッチが、「耳」なのです。
■あらがえない頭の重さ、眠気の正体
なぜ、耳なのでしょうか? 解剖学的に見ると、耳(側頭骨)は、頭蓋骨の中心にある「蝶形骨(ちょうけいこつ)」という重要な骨と隣り合っています。
蝶形骨はチョウが羽を広げたような形をしており、その上にはホルモンの司令塔である「下垂体」が乗っています。さらに、脳へ行く血管や神経の通り道でもあります。
ストレスで食いしばったり、糖化で脳が炎症を起こしたりしていると、この蝶形骨や側頭骨がガチガチにロックされます。
すると、脳脊髄液(脳の洗浄液)の循環が鈍くなり、脳の中にゴミや炎症物質がたまり続けます。これが「頭の重さ」や「眠気」の正体です。
耳を引っぱるという行為は、側頭骨を介して、頭の中心にある蝶形骨をゆるめることにほかなりません。耳は、硬くなった頭蓋骨の隙間を広げ、脳脊髄液のポンプを再稼働させるための「ハンドル」のようなものなのです。
■たった1分! 脳を洗浄する「耳引っぱり」
では、具体的なやり方をご紹介します。デスクに座ったままでOKです。

親指と人差し指で、両耳の上のほう、または真ん中あたりを軽くつまみ、外側(真横)に向かって、ゆっくりと引っぱります。
ポイントは「強さ」です。「数ミリ動かす程度」の、ごくごく弱い力で十分です。強く引っぱりすぎると、脳が防御反応で逆に硬くなります。「耳の中の空洞をふわっと広げる」ようなイメージで行なってください。
引っぱったまま、ゆっくりと深呼吸を3回くり返します。息を吸うときに、耳の奥から新鮮な酸素が脳に入り、吐くときに脳内のモヤモヤ(糖化物質)が出ていくイメージを持つとより効果的です。
余裕があれば、引っぱる方向を「斜め後ろ」「斜め上」など、気持ちいいと感じる方向に変えてみてください。
終わった瞬間、視界がパッと明るくなり、頭の芯がスッと軽くなるのを感じられるはずです。これは、頭蓋骨の継ぎ目がゆるみ、滞っていた脳脊髄液が一気に流れ出し、砂糖漬けになっていた脳細胞が洗われた証拠です。
仕事に行き詰まったとき、ランチ後の眠気に勝てないとき。眉間にシワを寄せるのをやめて、耳をやさしく横に引っぱってみてください。脳のスペースが広がり、新しい風が吹き込んでくるはずです。
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松本 恒平(まつもと・こうへい)
整体師
柔道整復師、カイロプラクターB.C.Sc.、オステオパスD.O。1980年生まれ。京都産業大学卒業。吉本興業に5年間在籍。同期生はジャルジャル、銀シャリなど。椎間板ヘルニアを患い歩けなくなり、整体で改善したことで治療家の道に入り、整体院ボディーケア松本を開院。独自の癒楽心体療法を開発、セルフケアのアプローチが評判に。特に、血液、リンパ液に次ぐ「第3の体液」と呼ばれる脳脊髄液に注目、免疫を高めるメソッドとして確立。さまざまな体の不調に大きな治療効果を上げている。多数の著名クライアントからの信頼も厚い。元関西医療大学準研究員、日本統合手技協会代表理事。
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野上 徳子(のがみ・とくこ)
内科医・心理カウンセラー
久留米大学医学部卒業後、岡山大学第一内科に入局。複数の病院勤務を経て、現在は松山市内の病院で内科診療に携わる。内科医として30年、のべ9万人以上の患者を診療。高血圧、糖尿病、胃腸症状、不眠、動悸、慢性疲労など、さまざまな心身の不調に向き合う中で、症状の背景にあるストレス、思考習慣、生活習慣、心と体のつながりに着目。産業医として働く人の健康管理にも携わり、薬物療法に加え、心身両面から健康を支える医療のあり方を探究している。トランスフォーメーショナル・コーチ、米国NLP協会マスタープラクティショナーとしても活動。
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(整体師 松本 恒平、内科医・心理カウンセラー 野上 徳子)
