《日本発コンテンツが勝手に無料で…》中国版YouTube「ビリビリ」で“海賊版”が氾濫するワケ 識者が解説、背景に中国側の“エンタメ弾圧”も
8月19日、bilibiliはスマートフォン向けの「国際版アプリ」を世界展開することを発表した。その一方で、日本では懸念の声も広がっている。
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Xでは、bilibiliの世界進出に対し、〈この世のあらゆる動画が無料で見られるようになった〉〈アニメや映画が無断転載されてまくっていてヤバい。全てのサブスクが終わる〉などの指摘が飛び交う。
というのも、サイト内には日本のアニメやドラマ、公開されたばかりの映画とみられる動画の「無断転載」が複数確認できるからだ──。【前後編の後編。前編から読む】
「bilibiliは2009年に誕生した、中国最大級の動画プラットフォーム。現在、月間のアクティブユーザーは3.7億人を超えています。利用者が自由に動画を投稿できることから"中国版YouTube"とも呼ばれていますが、アニメや映画を買い付けて会員向けに配信するNetflixのような機能も持っています。
一方、映画の無断転載をめぐって提訴された過去があるなど、著作物管理について不安視する向きもある。『アングラサイト』『無法地帯』『これをそのまま国際展開して大丈夫なのか』などの声は少なくありません」(コンテンツ業界に詳しい記者)
背景には"日中関係の悪化"も…
日中間の知的財産保護や海賊版対策に詳しく、bilibiliのサービス開始初期から同サイト上の海賊版を巡る削除申請等に携わってきた弁護士で、「IP FORWARD」グループ総代表の分部悠介氏に、中国国内の実情を聞いた。
「サービス開始当初は、利用者が動画を自由に投稿するUGC(ユーザー生成コンテンツ)がサービスの中心で、日本アニメの海賊版も大量に出回っていました。しかし、10年ほど前から、サイトが日本の権利者などと提携し、正規版を積極的に買い付け、配信するようになった。それに伴って、一気に無断転載は減少したんです」(分部氏、以下同)
では正規版の配信が進んだにもかかわらず、なぜ今も無断転載が後を絶たないのか。
分部氏は、その背景に「中国国内の検閲体制の強化や日中関係の悪化によって、熱心なファンに日本のコンテンツが届きにくくなったことがある」と語る。
2021年、中国はインターネットで配信された海外アニメに対し、公開前に当局が審査する「先審後播(せんしんごは)」制度の運用を本格化した。分部氏は「bilibiliが輸入した日本の新作アニメは、2021年は101本だったが、2024年には38本にまで激減した」と語る。また、文化庁の調査によると、2021年春アニメ26本のうち8本は、すでに購入されていたにもかかわらず、審査を通過できず、日中同時配信ができなかったという。
そこへ、日中関係の悪化が重なった。2025年11月、高市早苗首相が「台湾有事が存立危機事態になり得る」と発言したことに対し、中国側が強く反発。日本映画の公開延期や、日本人アーティストの公演中止が相次いだ。上海の「バンダイナムコフェスティバル2025」では、アニメ『ONE PIECE』のエンディング曲で知られる歌手・大槻マキの歌唱中に、突然照明が落ち、音楽が停止。公演が打ち切られる事態も起きた。
「本音で言えば、bilibiliは正規版を買いたいでしょう。でも、検閲や日中関係の影響で、買いたくても買えない、あるいは買っても配信できない状況が生まれている。一方で、中国のユーザーは日本アニメを観たい。その行き場を失った需要が、海賊版に流れている可能性がある」
無断転載するユーザーの多くは「コンテンツのファン」
無断転載をしているユーザーは、どのような人たちなのか。
「日本発IPのファンと思われるユーザーが多いです。好きな作品を観てほしい、みんなで楽しみたいという気持ちで投稿する。もちろん、自分のアカウントの再生数を伸ばし、収益化を狙う人もいます。ただ、bilibiliは収益化のハードルが高いため、金銭目的だけではないケースが多いのが実態です」
ファンたちの"コンテンツ愛"によって海賊版が出回り続ける状況を、bilibili側は今後も"良し"とするのだろうか。分部氏によれば、「それは考えづらい」とのことだ。
「中国国内では外国の権利者から見つかりにくかった動画も、国際版なら日本を含む世界中の関係者が簡単に確認できるようになります。当然、削除要請も増えるでしょう。
海賊版だらけの状態で世界展開を続ければ、ブランドにも大きな傷がつく。国際版のリリースによって、少なくとも国内版より著作権対策を強化せざるを得ないのは間違いありません」
世界進出に本腰を入れたbilibiliは、海賊版サイトという過去のイメージを拭い、世界有数の動画プラットフォームへ成長できるのか。その行方が注目される。
(了。前編から読む)
