【真壁 昭夫】iPhoneはもはや周回遅れのスマホに…各社が「折りたたみスマホ」の開発に躍起になる納得の事情
折りたたみスマホの開発が加速
9月、世界のスマートフォン産業界で、新型の折りたたみスマホの発表が相次いでいる。その動きに先手を打ったのは中国勢だ。
今月7日、中国の通信機器最大手のファーウェイは、三つ折り型の上位機種“Mate XT 2”を発表した。同日、シャオミも“Xiaomi 18 Fold”を発表。そして、9日、今度は米アップルが、折りたたみ型の新モデル“iPhone Duo”を発表した。
ただ、折りたたみスマホに関して、9月前半に発表された一連のモデルが完成形とみるのはまだ早いだろう。今のところ、どうしても価格が高い。ここへ来て、AI開発の加速で、チップの価格が急騰した影響は深刻だ。
また、折りたたむディスプレイパネル、ヒンジ(蝶番、扉や蓋などを軸を中心に回転させて、開閉できるようにする機構部品)の耐久性に不安が残るとの指摘もある。今後、関連企業は、需要者の要望を聞いて、改善を加速させることになるはずだ。
さらに重要なのは、スマホのOSとAIの結合だ。現在、この点で、中国勢はアップル、サムスンよりも先行しているといわれている。すでにファーウェイは、自社開発したAIを自社スマホOSに搭載し、それを駆動するためのチップまで開発した。AIを軸に自社のバリューチェーンも強固にしている。一方、アップルはAI開発につまずいたとの指摘は多い。
当面、スマホは、主要なAIデバイスとしての性格を強めるだろう。さらにその先をにらみ、米国などでは、AIスタートアップ企業によるデバイス開発企業の買収や、両社の資本・業務提携が増えるとみられる。わが国の企業は、そうした動きを見据えてAI関連事業の徹底強化が求められる。
世界のスマホ産業の現状
2007年頃に登場したスマホは、世界全体の出荷台数が約15億台に達した2017年にピークを迎えた。以降、世界のスマホ需要は飽和状態になっていたが、2019年、新しい需要創出に向けて折りたたみ型のスマホを投入したのがサムスン電子だった。
ただ、当時の同社には、画面と筐体の耐久性を高める製造技術が不足していた。発表直後から、画面の破損や不具合が相次ぎ、発売延期に追い込まれた。
その後、サムスン電子やアップル、中国のファーウェイなどは画面の大型化、ディスプレイの画像鮮明化、カメラの複眼化に取り組んだ。ティックトックなどの新たなコンテンツの登場に対応するためだ。
性能面の改良はあったものの、スマホの基本的な機能が根本から書き換えられたわけではなかった。その結果、世界のスマホ市場は、機能がほぼ同じでブランドごとに値段が異なるというコモディティー化に向かった。特に、世界経済のボリュームゾーンである、新興国などの需要を巡る価格競争は激化した。
世界のスマホシェアを見ると、トップはアップル(約19.7%)、2位はサムスン電子(約19.1%)、3位から5位はシャオミ、オッポ、ビボの中国勢が占めている。
わが国企業に関しては、ソニーがエクスペリアブランドでスマホ供給を続けているものの、事実上スマホ市場で敗戦した。価格競争が鮮明化する中で、世界のスマホ企業は自国内や中国からの部品調達を増やし、わが国のコンデンサーなどへの依存度は低下している。
中国勢はAI時代を見据えている
2026年は、世界のスマホ業界にとって、AI元年になるといわれている。AIの成長加速に伴い、スマホをパソコンと同様の利用環境にしたい需要者は増えている。
その需要を取り込むため、折りたたみ型のスマホを開発するIT先端企業が相次いでいる。一つの例として、レノボ傘下のモトローラ・モビリティは、折りたたみスマホの“Razr Fold”を発表した。AIが普及しつつある現在、必要な時に場所を選ばず、気軽にAIを使いたいというニーズは急増している。
中でも、アップルからシェアを奪おうとする、中国勢の意気込みはかなり強い。
ファーウェイ、シャオミ、オナー、オッポ、ビボの大手5社はいずれも、すでに複数の折りたたみスマホモデルを発表している。これまでの投入機種はファーウェイが約18機種、オナーが13機種程度といわれている。残る3社は、6~8機種の折りたたみスマホを投入した。なお、オナーは2020年11月に完全売却されるまで、ファーウェイ傘下の企業だった。
国レベルで折りたたみスマホの開発競争を見ると、中国は独走、米国は周回遅れの状況にある。特にファーウェイは、横型・縦折り・三つ折りの3形態すべてを継続的に展開してきた唯一の企業で、折りたたみ型の1機種目をようやく発表したアップルとは対照的だ。
最新の三つ折りスマホの“Mate XT 2”には、新チップのKirin 9050 Proを搭載した。このチップは傘下のハイシリコンが設計し、中国最大のファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)が生産を受託している。微細化に関して、アップルの“iPhone Duo”が搭載するチップは、台湾積体電路製造の回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)のラインで製造されている。
ファーウェイが、スマホ向けの最新チップを新型機種に搭載したのは、米国の制裁をはねのけて先端チップ(10ナノ以下)を国産化したことを世界に示す狙いがあるのだろう。
ある意味、三つ折りスマホの発表は、技術的にスマホの覇者になるというファーウェイの決意を示したともいえる。同社は、アップルより先に新型スマホを発表することにこだわったはずだ。
しかし、今後はAI企業もアップルのライバルとなる可能性がある。
つづく記事〈そのときAppleのiPhoneはどうなるのか…OpenAI製「ChatGPTスマホ」の登場が現実味を帯び始めた〉でさらに解説する。
【つづきを読む】そのときAppleのiPhoneはどうなるのか…OpenAI製「ChatGPTスマホ」の登場が現実味を帯び始めた
