三重県の私立高校3年生だったマサミさん(仮名、当時18歳)は、2022年8月から同級生の男子生徒A(当時18歳)による性被害を繰り返し受けていた。被害は公園、砂浜、学校内など複数の場所に及び、少なくとも20回以上にのぼる。受験を直前に控えた時期だったにもかかわらず、何も手につかなくなるほど精神的に追い詰められていたという。

【実際の写真】マサミさんが性被害を受けた公園。のどかな風景が一転して地獄に変わった


被害を告白するマサミさんと母親

「記念の写真を撮ろう」と言われ真っ暗なトイレで…

 最初の被害は、交際1カ月の"記念日"だった。「記念の写真を撮ろう」と誘われて近くの公園へ行くと、Aは真っ暗なトイレでマサミさんを押さえつけ、無理やり性行為に及んだ。「痛い、やめて」と抵抗しても、Aは行為をやめなかった。床に血が飛び散るほどの被害だったが、マサミさんは親に打ち明けることができなかった。

「大学の推薦があったので、問題を起こすと推薦がもらえなくなると思い、卒業まで我慢するしかないと思っていました」

 関係を断ち切ろうとしても、Aは「別れたら自殺する」と泣いて引き止めた。夜中でも電話をかけてきたり、受験直前に自宅まで押しかけたりと、支配的な行動はエスカレートしていった。マサミさんはストレスで食欲を失い、母親の目にも「毎日ただただ無気力」な状態に映っていたという。

 ついに母親に被害を告白したのは、大学入試の2日前。どしゃぶりの雨の中、Aがマサミさんのもとへとまた押しかけてきたことがきっかけだった。告白を受けた母親は即座にAと両親を自宅に呼んだが、Aの父は「18歳過ぎた大人で、付き合っている2人を引き裂くのはやりすぎ」と発言。Aの母も、なぜかマサミさんを責める言葉を口にした。深夜3時を過ぎ、母親が110番通報してようやくその場は収まった。

 警察署を訪れると、被害届は受理されなかった。「一度学校に相談して、学校がきちんと指導しなかったら、警察が動くこともできる」とも言われたという。学校側も迅速な対応はせず、第三者委員会が設置されたのはマサミさんが卒業した後のことだった。

「今は、A本人に謝ってほしい。一番の理想としてはAが逮捕されれば安心できます」

 マサミさんはそう語る。交際という関係性の中に忍び込む暴力は、なぜ見過ごされ続けるのか。本編では、被害の詳細と、警察・学校それぞれの対応の問題点に迫る。

(渋井 哲也)