パールハーバーに停泊するミサイル駆逐艦「ディケーター」(9日、米ハワイ州で)=栗山紘尚撮影

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 米軍の対イラン軍事作戦が長期化し、艦船や兵器の不足によって太平洋地域での抑止力の低下が懸念されている。

 トランプ米政権は、軍拡を続ける中国との軍当局間の対話で衝突を回避しつつ、日本など同盟国との連携を強化したい考えだ。(米ハワイ州 栗山紘尚、北京 東慶一郎)

空母一時不在

 米ハワイ・オアフ島のパールハーバー(真珠湾)。青い海に浮かんだ米海軍のミサイル駆逐艦「ディケーター」の甲板で、アーリーン・クルーズ艦長(40)は今月9日、「この船は、同盟国に対し、常に信頼できる抑止力を提供する準備ができている」と日本や韓国などの記者団に強調した。

 乗員約330人のディケーターは、弾道ミサイルの迎撃や対潜水艦戦など幅広い任務に対応する。中国が領有権を主張する南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島付近で「航行の自由作戦」にも従事した経験があり、中国艦艇に異常接近されるなど対中国の最前線に立ってきた。

 しかし、米国の対イラン軍事作戦が長引いていることで、太平洋地域の「力の空白」が生じていると指摘される。米海軍横須賀基地を拠点とする原子力空母「ジョージ・ワシントン」は8月、別の空母の代わりに中東に派遣され、西太平洋地域に米空母が一時不在となった。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、地対空誘導弾パトリオット用ミサイルの在庫数(7月末公表)は、作戦開始前の約3分の1にあたる827発以下にまで減った。消費した弾薬の回復には「5年かかる」(米議会予算局)との分析もある。

 造船業が衰退した米国では、軍艦の建造能力にも疑問符が付く。インド太平洋軍(現・太平洋軍)司令官は4月、米議会公聴会で駆逐艦や攻撃型潜水艦が不足しているとして、「我々は誤った方向へと進んでいる」と強い危機感を示した。

米軍に匹敵

 中国の習近平(シージンピン)政権は、「世界一流の軍隊建設」を目標に掲げ、最新鋭の軍艦の建造、配備を加速させている。英国際戦略研究所(IISS)の報告書「ミリタリー・バランス2026年版」によると、主要兵器の数だけ見れば、中国軍はすでに米軍に匹敵する。

 米国が、冷戦時代にソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約(2019年失効)に縛られて保有が制限された中・短距離ミサイルについても、中国は着々と開発、整備を進めた。

同盟国と連携

 トランプ政権としては中国との軍事衝突を避けつつ、態勢を整える必要性に迫られている。香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは17日、複数の関係筋の話として、24日に予定される米中首脳会談で米中両軍の関係強化が公表される可能性があると報じた。米軍当局者も取材に対し、「中国とは建設的な対話を継続しなければならない」と語る。

 米国が期待を寄せるのが日本をはじめとする同盟国だ。米海軍当局者は今月、艦船不足を補うため「日本の護衛艦をいくつか買うかもしれない」と明らかにした。

 米アジアソサエティー政策研究所のライル・モリス上級研究員は「米国の最大の強みは同盟国の存在だ。中国への抑止力を強化するためにも、前方展開の拠点となる基地の使用を含めた協力が必要だ」と強調した。