脂肪肝の元凶は何か。肝臓外科医の尾形哲さんは「カラダによい糖であると思われているかもしれないが、実は、ブドウ糖以上に肝臓を脂肪化させ、直接的に肝障害を与える『悪玉糖』がある」という--。

※本稿は、尾形哲『ダイエットも健康も 肝臓こそすべて』(新星出版社)の一部を再編集したものです。

■「肝臓の三毒」を上手に減らしていく

貪欲・怒り・愚かさという3つの煩悩が、人間の苦しみの根源であるとして、仏教では三毒と呼ばれています。

口からとるもので、肝臓への毒となるものは何でしょうか?

仏教の三毒になぞらえてみると、肝臓の三毒は、糖・酒・薬といえるでしょう。

写真=iStock.com/Atiwich Kaewchum
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Atiwich Kaewchum

この3つの毒を上手に減らしていくことが、脂肪肝、脂肪肝炎を克服する方法の文字通り肝となります。

糖・酒・薬には3つの共通点があります。

1 適量であれば、カラダに害を及ぼさないこと
2 徐々に量が増えていくこと
3 やめたくてもやめられない状態に陥ること
出所=『ダイエットも健康も 肝臓こそすべて』(新星出版社)

すなわち糖・酒・薬には、依存性があるのです。肥満、脂肪肝の方は、程度の差こそあれ、糖・酒・薬のいずれかの依存症であるといえるでしょう。

ここでは、肝臓の脂肪化に最も影響の大きい「糖」についてお話ししましょう。

■糖は精製されるほど毒になる

「糖」は、食べ方によって肝臓への毒性が大きく変わります。大原則は、「糖質は精製されるほど肝毒性が強くなる」ということです。つまり、穀物を採れたてのまま食べると毒性が弱く、精製されて、食物繊維などがそぎ落とされると、毒性が強くなります。

「糖」に関する説明をするとき、炭水化物、でんぷん、砂糖(ショ糖)、ブドウ糖、果糖など、たくさんの化学用語がでてきます。

ややこしいと思われる方のために、図表2にそれぞれの関係をまとめましたので、見ながらついてきてください。

出所=『ダイエットも健康も 肝臓こそすべて』(新星出版社)

■「茶色い糖質」より危険な「白い糖質」

炭水化物、でんぷん、ブドウ糖の関係をおさらいしましょう。

炭水化物は、体内に吸収されてエネルギー源となる「糖質」とエネルギー源とならない「食物繊維」からなる栄養素です。タンパク質、脂質と共に三大栄養素の1つですね。

炭水化物には、お米、小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、蕎麦、キャッサバなどがあります。小麦を原料としている食べ物は、パン、ケーキ、クッキー、ラーメン、素麺、パスタ、スナック菓子などです。タピオカもキャッサバという穀物から作られる炭水化物です。

でんぷんとは、植物が光合成によって作り出す物質で、ブドウ糖という単糖の集まりです。米、小麦の糖質は、それぞれ米でんぷん、小麦でんぷんです。

さて、「糖質は精製されるほど肝臓への毒性が強くなる」とお話ししました。すなわち、白い糖質である精製された白米、小麦は、茶色い糖質である玄米や全粒小麦よりも肝臓への毒性が強くなります。

■砂糖よりよく使われている甘味料

精製糖質の最たる例が、砂糖です。砂糖は、サトウキビやテンサイから、限りなく不純物が取り除かれ、真っ白に精製された糖質です。砂糖は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が1対1で結びついてできています。

加糖飲料や加工食品の甘味として、砂糖よりもよく使用されているのは、「果糖ブドウ糖液糖」です。トウモロコシに酵素や酸を加えて人工的に精製され、「異性化糖」とも呼ばれています。こちらは、果糖の割合が50%以上90%未満で、構成成分は砂糖と同じものです。

ブドウ糖は、すべての細胞のエネルギー源となり、使われなかったブドウ糖は、肝臓で中性脂肪に変換されます。果糖は、肝臓だけでしかエネルギーとして使われないため、容量オーバーとなったとき、肝細胞を傷害します。

それではブドウ糖、果糖による肝臓の脂肪化、肝障害のメカニズムをもう少し詳しく見ていきましょう。

■ヒトの脂肪肝とフォアグラはそっくり

フォアグラ」は、キャビア、トリュフと並ぶ世界三大珍味の1つで、フランスでは日常の食卓にあがる伝統的な食材です。フランス語で、フォア(foie)は肝臓、グラ(gras)は脂肪のことで、文字通り脂肪肝を意味します。

日本ではフレンチレストラン以外で目にすることはほとんどありませんよね。私は、肝臓移植外科医としてフランスに留学するまで、恥ずかしながらフォアグラを食べたことがありませんでした。

フォアグラはどのようにしてできるのか」、このメカニズムがわかると、ヒトの脂肪肝発症のメカニズムの理解がより深まります。

フランスの伝統的なフォアグラのつくり方(現在は動物愛護の観点から家禽の生活環境が見直されていますが)は、まず、ガチョウを飼育小屋に入れ、消化がよいようにやわらかく蒸したトウモロコシを1日3回、専用の漏斗で強制的に胃に流し込みます。

エサは1回250gから始めて、最終的に500gまで徐々に増やしていきます。すると、わずか1カ月で肝臓は2kgに達し、脂肪肝=フォアグラとなります。

写真=iStock.com/ Victority
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ Victority

ヒトの肝臓の大きさは、正常肝では体重の約2%ですので、1.0~2.0kg程度。体重70kgの方の肝臓は1.4kg程になりますが、脂肪肝になると2kg以上に達することがあります。

実際、私はフランスで脳死肝移植を行っていた際に、2kg以上に腫大したヒトの脂肪肝を摘出したことがあります。見た目も色もガチョウのフォアグラにあまりにも似ていることに驚きました。

健診などで脂肪肝を指摘される方は、自分がすでにフォアグラになっていると、自覚しなければなりません。腹部超音波やCTで診断できる脂肪肝の組織脂肪率(検出限界)は約30%といわれています。脂肪肝と診断される患者さまの多くは脂肪率40%を超えているのです。

■トウモロコシのでんぷんが肝臓に蓄積

このお話で大切なことは「ガチョウがトウモロコシだけをエサにしていた」という事実です。トウモロコシの粒は、総熱量の75%を糖質で占めていて、脂質の割合はわずか15%に過ぎません。

すなわち食べた脂肪が蓄積して脂肪肝になったのではなく、トウモロコシのでんぷん=ブドウ糖の集まりがカラダの中で脂肪に変わり、肝臓に蓄積したのです。

食べたトウモロコシのでんぷんは、小腸でブドウ糖(グルコース)に分解されます。ブドウ糖は膵臓から分泌されるインスリンの働きによって細胞に取り込まれ、脳や筋肉、各臓器のエネルギーとして使われます。

血中のブドウ糖濃度は、膵臓から分泌されるホルモン、インスリンの働きにより一定に保たれていますので、ヒトの血液中のブドウ糖総量はわずか5g程度しかありません。

細胞のエネルギーとして使われなかった残りのブドウ糖はどこへいくのでしょうか?

■糖質の量に無頓着では改善しない

ブドウ糖は、ブドウ糖のままでカラダに蓄えられ、再利用されることはありません。

まず、グリコーゲンとなって肝臓あるいは筋肉に蓄えられます。肝臓、筋肉がグリコーゲンでいっぱいになると、新たに入ってきたブドウ糖は、インスリンの作用によって中性脂肪に変換されるのです。

インスリンには血糖を下げる=細胞内にブドウ糖を押し込む作用があるだけでなく、エネルギーとして使われなかったブドウ糖を中性脂肪に変換する作用があることが重要なポイントです。

もうおわかりでしょう。ガチョウはフォアグラとなる際、筋肉を用いる必要のない=グリコーゲンをほとんど消費しない場所で、多量の糖質を与えられて飼われています。

それゆえに、消費されるエネルギーよりはるかに多いブドウ糖から、効率よく中性脂肪への変換が行われ、肝臓の細胞内に脂肪が蓄積していくのです。

写真=iStock.com/horillaz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/horillaz

脂肪肝を指摘された方は、真っ先に「脂肪をとるのを減らせばよい」と考えがちです。しかし、肉の脂身や揚げ物を食べなくても、糖質の量に無頓着なままでは脂肪肝は改善しません。

真っ先に減らすべきは、糖質量なのです。すなわち加糖飲料、米、パン、麺、スナック菓子などの糖質を減らす必要があるのです。

■脂肪肝になる最短の方法は「砂糖水」

ガチョウに対するトウモロコシ以上に、効率的に脂肪肝になってしまう方法があります。それは、糖質が最も精製された状態、「砂糖」を食べることです。

砂糖は「ブドウ糖」と「果糖」が合わさったものでしたね。トウモロコシとの違いは「果糖」が含まれていることです。砂糖を摂取する方法の中でも砂糖を水に溶かした飲料、「砂糖水」を飲むことが、最も効率的に脂肪肝になってしまう方法なのです。

肥満・脂肪肝の方が飲んではいけない「砂糖水のリスト」を、図表3に挙げておきます。

出所=『ダイエットも健康も 肝臓こそすべて』(新星出版社)

加糖炭酸飲料だけでなく、加糖コーヒー飲料、エナジードリンク、100%果物ジュース、野菜ジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料の中に、どのくらいの量の糖質が含まれているかを砂糖換算で表示しています。

加糖飲料の甘味成分にはほとんどの場合、砂糖の代わりに果糖ブドウ糖液糖が使われています。飲料だけではありません。果糖ブドウ糖液糖は、カップ麺、スナック菓子、アイスクリーム、パン、ケーキ、クッキー、ソース、ケチャップなど、ふだん食べているあらゆる加工食品に添加されている甘味料なのです。

果糖ブドウ糖液糖が加工食品によく使われているのには3つの理由があります。

1 砂糖よりはるかに安価であること
2 砂糖より甘味が強いため食品が美味しくなること
3 液体のため混ぜて加工しやすいこと

製造者にとってはいいことずくめなのです。

■果糖はブドウ糖の5倍肝臓に悪い

では、ブドウ糖の相方である果糖は、どのような作用を持つのでしょうか?

果物の糖という名称からのイメージで、カラダによい糖であると思われている方がいるかもしれません。実は、果糖はブドウ糖以上に肝臓を脂肪化させ、直接的に肝障害を与える悪玉糖と呼ぶべき糖なのです。

果糖は小腸でも一部代謝されますが、過剰に摂取された果糖は肝臓に流入し、肝臓での脂肪合成を促進します。一方、ブドウ糖の8割は肝臓外の組織でエネルギーとして利用され、肝臓内で代謝されるのは2割です。同じ量のブドウ糖と果糖ならば、果糖のほうが5倍肝臓に負担をかけているのです。

砂糖や果糖ブドウ糖液糖の入った食べ物を摂取すると、消化管でブドウ糖と果糖に分解されます。肝臓に入った果糖は、肝細胞内のミトコンドリア(※)でエネルギー源として代謝されます。

ミトコンドリアの処理能力を超えた果糖は、ブドウ糖のようにグリコーゲンに変換されることはなく、肝臓で中性脂肪に変換され(Hepatic de novo lipogenesis)、肝細胞内や内臓脂肪、皮下脂肪として蓄積されるのです。

尾形哲『ダイエットも健康も 肝臓こそすべて』(新星出版社)

果糖は、高脂質食よりはるかに肝臓での脂肪化を促進します。また、この脂肪化にはインスリンを必要としないため、インスリンの働きが悪くなった状態=インスリン抵抗性のある状態でも、脂肪生成が進むのです。

最終的に、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールにも変換されます。

また、細胞内のエネルギー源であるATPを枯渇させ、ミトコンドリアの脂肪酸酸化の抑制を招き、細胞傷害性のある活性酸素の産生を増加させて、肝細胞を傷めていくのです。

砂糖水について、まとめましょう。

1 血糖値を急激に上げてインスリン値を上昇させ、ブドウ糖を中性脂肪に変換する
2 肝臓に向かう果糖濃度を一気に高めて、効率的に肝臓で脂肪をつくり、脂肪を溜める

このダブルパンチが効率的に起こる脂肪肝の元凶なのです。

私たちの外来では、肥満・脂肪肝の方への最優先の指導として、加糖飲料を禁じ、飲み物を水、お茶、ブラックコーヒーのいずれかだけにすることをおすすめしています。

実際、先ほどの図表に示した飲料のいずれかを毎日飲まれている方は、それをやめるだけで1カ月で体重が減少し、血液検査でも肝酵素(AST、ALT)、γ-GTP、中性脂肪、LDLコレステロール値が低下し始めます。

※ミトコンドリア……細胞の中の小器官の1つ。「エネルギー通貨」と呼ばれるアデノシン三リン酸(ATP)を、生物のエネルギー原料として合成している。

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尾形 哲(おがた・さとし)
肝臓外科医
長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。1995年神戸大学医学部医学科卒業、2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』『専門医が教える肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(いずれもKADOKAWA)などがある。 尾形哲監修「脂肪肝改善 無料公式LINE」
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(肝臓外科医 尾形 哲)