岸和田徳洲会病院(17日、大阪府岸和田市で)

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 大阪府岸和田市の岸和田徳洲会病院で7月、20歳代の男性看護師が、認知機能の低下した80歳代の男性入院患者に劇薬の鎮静剤「プロポフォール」を医師の指示なしに投与したとして、府岸和田保健所が医療法に基づき、同病院に行政指導したことがわかった。

 患者の命に別条はなかった。別の患者に投与中のものを注射器で抜き取って使っていたという。同病院は今月14日付で看護師を懲戒解雇した。

 同病院によると、元看護師は同病院の救急病棟で勤務していた。7月7日未明の夜勤中、集中治療室で、別の入院患者に点滴で投与されていたプロポフォール2~3ミリ・リットルをチューブの栓から注射器で抜き取り、隣のベッドにいた男性患者の静脈に1ミリ・リットル投与した。残りは捨てたという。日勤への引き継ぎ時には、投与したことを伝えていなかった。

 男性患者は直前まで、ベッドの柵から足を出して暴れていたが、投与後、静かになり眠った。7日朝の担当医の回診時、容体に異常はなかった。事案の発覚前に別の施設に移り、現在も体調に問題はないという。

 投与する様子を目撃していた同僚の看護師が、病院側に相談。同病院は8月下旬、元看護師から聞き取るなどして調査した。元看護師は行為を認め、「暴れる患者を落ち着かせたかった」と説明したという。同病院は9月、男性患者の親族に伝え、謝罪した。府警岸和田署にも報告した。

 府岸和田保健所によると、病院側から8月31日に報告を受けた。9月2日に立ち入り検査を行い、不適切な投与だったと判断。同8日付で病院に是正を求める行政指導をした。

 プロポフォールの投与時の注意事項として、医薬品の添付文書には、麻酔技術に熟練した医師が、専任で患者の全身状態を注意深く監視することが挙げられている。

 同病院では本来、医師のみが投与する運用になっていた。救急病棟の薬品庫で保管し、数量や無断持ち出しがないかを毎日確認もしているという。

 保健師助産師看護師法では、看護師は医師の指示なく、医薬品の使用など患者の身体に危険がある医療行為を行ってはならないと規定している。違反すれば、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられる。

 同病院のホームページによると、同病院は400床の総合病院で、1977年に開院した。徳洲会グループは73年、大阪府松原市に開設された病院をルーツに複数の法人で構成される日本最大級の医療グループ。全国で400以上の病院や介護施設を運営している。

 岸和田徳洲会病院を運営する医療法人徳洲会大阪本部の事務担当者は読売新聞の取材に「病院の管理監督や職員への教養が不足していた。このような事態が起き、反省している。他に不適切な投与は確認されていない。再発防止として、管理監督や教養を徹底する」と話した。

 鎮静薬に詳しい名古屋大の松田直之教授(救急・集中治療)の話「看護師の判断による投与は、違法性も疑われる行為だ。呼吸や循環の管理ができる医師が使わないと危険で、少量でも看護師の独断での使用は許されない。別の患者から抜き取って投与した場合は、細菌が混入する可能性もある。医師や病院の管理体制も問われる」

 ◆プロポフォール=人工呼吸中の息苦しさを抑えて安静を保つための鎮静薬や、手術時の全身麻酔薬などとして使う。速効性があり、投与をやめると短時間で目が覚める利点がある。副作用として血圧低下や呼吸停止があるため、患者の状態を注視する必要がある。劇薬のため、他の薬剤と区別して貯蔵する。東京女子医大病院では2014年、手術後に大量に投与された男児(当時2歳)が急性循環不全で亡くなった。