AutomatticのCEOが追放された件で代わりに暫定CEOとなった人物と法務責任者が815万ドルの退職金を得る合意を行っていたことが判明

2026年9月9日、WordPress.comを運営するAutomatticのCEOが本人の意思に反して取締役会から休職を命じられました。CEOはわずか33時間で復職できたのですが、この間に暫定CEOの職に就いていた人物が「会社を退職したら多額の退職金を受け取る」という契約書を作成していたことが分かりました。
Automattic's interim CEO and legal chief signed reciprocal severance deals during Mullenweg's brief ouster | TechCrunch
休職を命じられたのはAutomatticの創業者兼CEOのマット・マレンウェッグ氏です。マレンウェッグ氏はこの件を受けて、同社のマーク・デイヴィスCFO(最高財務責任者)と取締役のアン・ダンウッディ氏、トニー・シュナイダー氏、スー・デッカー氏が共謀してマレンウェッグ氏を休職処分としたと主張しました。マレンウェッグ氏によると通知を受けたのはわずか50分前で、外部の法律顧問に決議を検討してもらう時間も与えられなかったとのことです。なお、休職期間中の暫定CEOにはデイヴィス氏が選出されました。
ところが、マレンウェッグ氏は追放からわずか33時間で復職し、再びCEOの座に就くことになりました。マレンウェッグ氏を処分する票を投じた同じ取締役たちは、その後会社を去りました。
WordPress共同創設者のマット・マレンウェッグ氏がAutomatticのCEOに復帰、休職からわずか2日で - GIGAZINE

取締役たちはただ会社を去っただけではありませんでした。伝えられるところによると、暫定CEOの任を解かれて会社を去ることになったデイヴィス氏と、同じく会社を去った最高法務責任者のアンディ・ミッサン氏が、9月10日付、つまりマレンウェッグ氏が会社の支配権を失っていた時期に互いの退職金契約へ署名していたとのことです。
この契約には、両名に基本給12カ月分の退職金を支払い、株式報酬の権利確定時期を早め、健康保険を1年間提供し、権利確定済みストックオプションを行使する権利を与える内容が盛り込まれていました。2人に支払われる報酬は退職金と株式報酬を合わせて815万ドル(約12億7800万円)に上るとのことです。
さらに、この契約には「会社が退職金を支払わなくても済むような解雇理由」についても詳しく定義されていました。内容によると、会社に重大な損害を与える重過失、重大な損害を引き起こす故意の不正行為・詐欺・虚偽表示などを行った場合は退職金の支払い対象にならないとのことです。さらに、仮に該当する場合は問題を知った日から60日以内に本人へ通知し、改善可能な問題なら30日間の猶予を与え、その上でなお取締役会の過半数が「問題がある」と認めた場合にのみ対象となると定められており、デイヴィス氏らに有利な内容となっていました。

テクノロジー系メディアのTechCrunchは「幹部たちが互いの契約に署名したこと自体が必ずしも不適切だとは限りませんが、経営をめぐる争いが起きている中でこのような契約が作られたことは注目に値します」と指摘。これについては2つの仮設が立てられると続けました。
1つは会社と取締役を守ったという説です。AutomatticはWordPressをホストしているWP Engineとの法廷闘争を繰り広げており、WP Engine側は「マレンウェッグ氏が証拠を破棄した」などとマレンウェッグ氏をやり玉に挙げてAutomatticを非難しています。TechCrunchは「もし取締役たちがマレンウェッグ氏の行動を重大なリスクだと考えていたのであれば、マレンウェッグ氏を休職とし、経営陣を変更することによって、取締役会が事態を深刻に受け止めていることを裁判所に示せた可能性があります。これによって、制裁や罰金の可能性を減らしたり、和解条件を改善したりできる可能性があります」と指摘。仮にマレンウェッグ氏が復帰してマレンウェッグ氏を休職とした取締役たちが逆に追い出されてしまった場合に取締役を守るという意図も込められていたと補足しました。

もう1つは、Automatticの取締役たちが別の理由でマレンウェッグ氏を休職とし、経営の主導権を握ることで、自分たちが会社を支配できる期間を作ろうとしていたという説です。これはマレンウェッグ氏が提唱している説ですが、マレンウェッグ氏に休職処分の理由が告知されていないため、推測の域を出ないとのことです。
Automatticの法務チームは、両名に退職金を支払うか、法的有効性を争うかを検討しています。
