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刑事施設が適切に運営されているかを監視する「東京拘置所視察委員会」が、職員を対象とするアンケート調査の実施を拘置所側に依頼したところ、公益通報を繰り返していた医師らが対象から外されていたことがわかった。

情報公開請求で開示された文書では、対象者を「主任副看守長以下の全職員」としていたが、医師らが所属する医務部に掲示された文書では、対象者を「刑務官と看護師」に限定する旨が追記されていた。

東京拘置所弁護士ドットコムニュースの取材に対し、医師を対象としなかったことを認めた。一方で、対象者を限定するにあたって、視察委員会に事前に説明し了承を得ていたのかについては、明確な回答をしなかった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●医師らが5回の公益通報、法務省に調査申し入れ

全国の刑務所拘置所には、刑事収容施設法に基づき、外部の専門家などで構成される機関「刑事施設視察委員会」が設置されている。施設の運営状況を把握し、施設側に意見を述べる役割を担う。

また、刑務所拘置所といった刑事施設で勤務する医師は「矯正医官」と呼ばれる。

東京拘置所をめぐっては、矯正医官など複数の職員が、家庭の事情で転勤できないと伝えていたにもかかわらず転勤を命じられたなどとして、2024年から2025年にかけて計5回、法務省矯正局に公益通報していた。

医師らの代理人は2025年6月、東京都内で記者会見を開き、法務省に調査を申し入れたことを明らかにしている。

●視察委員会のアンケート対象は「主任副看守長以下の全職員」

弁護士ドットコムニュースは、この問題を取材する過程で、東京拘置所を管轄する関東矯正管区に情報公開請求をおこなった。

その中で入手したのが、2025年1月7日付の庶務課長事務連絡「東京拘置所視察委員会による職員アンケートの実施について」だ。

視察委員会から職員向けアンケートを実施するよう依頼を受けたことに伴い、拘置所側が作成した文書だ。

開示された文書には、アンケートの対象者について「主任副看守長以下の全職員(支所同様、非常勤職員を除く。)」と記載されていた。

アンケートの目的については、「職員の勤務状況等について当所の実情を適格に把握し、当所の施設運営全般の向上に寄与することを目的とした適正かつ有効な意見を述べるための資料とするため」とされていた。

●医務部では「刑務官と看護師」と追記

視察委員会がアンケートの実施を求めた時期は、東京拘置所の医師らが公益通報を繰り返した時期と重なる。

ところが、弁護士ドットコムニュースが独自に入手した内部文書を確認すると、医師らが所属する医務部に掲示されたアンケート実施の案内文には、対象者を「刑務官と看護師」とする旨が書き加えられていた。

該当箇所には、括弧書きで「庶務課より」とも追記されていた。この文書は、弁護士ドットコムニュースの情報公開請求では開示されなかった。

開示された文書と比較すると、件名や日付など、それ以外の部分は一致している。

職員に配布されたアンケート用紙には、性別や年代、勤続年数、担当部門などの選択肢のほか、勤務の負担感やストレス、被収容者から暴言・暴力を受けた経験の有無、待遇面で改善が必要な点などを尋ねる質問が並んでいた。

●関係者「公益通報の内容を知られることを恐れたのでは」

なぜ、医師らはアンケートの対象から外されたのか。

東京拘置所の内部事情を知る関係者は、弁護士ドットコムニュースの取材に、次のような見方を示した。

「医師たちの意見が視察委員会に上がり、それまでの公益通報の内容を告げ口されることを拘置所側が恐れたのではないか」

こうした対応について、視察委員会も把握しているとみられる。

●東京拘置所「医師は含まれないと理解」

公益通報を繰り返していた医師らは、なぜアンケートの対象から外されたのか。対象を限定することについて、視察委員会に了承を得ていたのか。

弁護士ドットコムニュースは東京拘置所に質問状を送った。

まず、文書にある「主任副看守長以下の全職員」に医師(矯正医官)が含まれるかを尋ねたところ、東京拘置所は「含まれないと理解している」と回答した。

その理由について次のように説明した。

「『主任副看守長』とは刑務官の階級を指すものであり、その階級以下の職員を指していることから、刑務官だけを対象としたものと理解した」

一方、医務部に掲示された文書で、対象を刑務官と看護師に限定する旨を追記したのかを尋ねると、「質問文に記載された文言と同一であったかどうか定かでないが、当所において、同趣旨の記載がある文書を作成した事実はある」と回答した。

そのうえで、医師らを対象としなかった理由について、次のように説明した。

「視察委員会のアンケート実施の趣旨が、被収容者と接する機会が多い現場職員の声を聴くことにより、職員の勤務状況等の状況を把握することであったことから、当所において、医務部職員のうち被収容者との接触の頻度、対象とされている刑務官の職階等を考慮し、看護師を加えたものであり、医師、薬剤師及びその他の技師は対象としなかったものである」

●視察委員会の事前了承は?明確な回答なし

では、東京拘置所が医務部でアンケートの対象を限定するにあたり、視察委員会への事前説明や了承はあったのか。

この点についても質問したが、東京拘置所から明確な回答は得られなかった。

東京拘置所では、大川原化工機をめぐる冤罪事件で勾留されていた相嶋静夫さんが、胃がん判明後も保釈を認められず、起訴が取り消される前に死亡する問題も起きている。

被告人や受刑者の健康を支える矯正医官の勤務状況や意見を、外部の監視機関である視察委員会が把握することは、拘置所の医療体制を検証するうえで重要な意味を持つ。

弁護士ドットコムニュースは最後に、「内部通報を行った医師を視察委員会への意見表明の機会から遠ざける意図があったのではないか」との疑念について、見解を尋ねた。

東京拘置所は、次のように回答した。

「当所では、医師が公益通報を行ったとの報道は承知しているが、実際に公益通報がなされているかは承知していない」