映画『踊る大捜査線』はヒットするのか?ファンの高齢化と「お台場オワコン化」の影
『国宝』に抜かれるまで邦画実写の首位に君臨
「事件は会議室で起きてるんじゃない。……現場で起きてるんだ!」
「レインボーブリッジ、封鎖できません!」
といった数々の名ゼリフを生み出し、かつて日本中に社会現象をもたらした『踊る大捜査線』。歴史的ヒットをマークした同シリーズの映画最新作『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が9月18日より全国のスクリーンで公開される。
しかも、本作は織田裕二演じる主人公・青島俊作が2012年の『踊る大捜査線THE FINAL 新たなる希望』以来、14年ぶりに主演として帰ってくることが発表されており、スピンオフを除くと事実上の続編にあたる作品なのだ。
まず、同シリーズがどれほどケタ違いのヒットを生み出してきたかを振り返ってみよう。
1997年の連続ドラマからスタートした『踊る大捜査線』は、1998年の劇場版第1作のスマッシュヒットで勢いを付けると、2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が前代未聞となる興行収入173.5億円を記録。昨年『国宝』に抜かれるまでは邦画実写部門で22年間も首位に君臨する国民的映画となった。
また、ユースケ・サンタマリアが演じる真下正義を主役にした『交渉人 真下正義』、柳葉敏郎演じる室井慎次をメインに据えた『容疑者 室井慎次』もスピンオフ作品としては異例の大ヒット。
こうして『踊る大捜査線』は単なる人気ドラマの映画版という枠を超えて、フジテレビを代表する巨大IPへと成長したのである。
フジが“復活の起爆剤”として宣伝活動をするも……
そんな『踊る大捜査線』を“復活の起爆剤”として捉えているのは、度重なる社内トラブルでいまだに視聴者からの信頼を取り戻せていないフジテレビだ。
フジは、公開に合わせてこれまでの映画シリーズや連続ドラマ版を地上波、TVer、FODで相次いで展開。また、フジテレビ球体展望室や銀座三越での展覧会や山手線沿線を舞台にした脱出ゲームを実施するなど、大規模なプロモーションを仕掛けようとしている。
しかしながら--。
公開日を目前に控えた現在、SNSのタイムラインが最新作や過去シリーズ、関連イベントの話題で賑わっているとはお世辞にも言い難い状況が続いている。
また、公式の予告動画には「青島に早く会いたい!」といった喜びの声が上がる一方で、「今の時代でも通用するストーリーなのかが不安……」「室井さんをはじめとした重要キャラがいない穴を埋められるのか」という厳しいコメントが目立っている。
こうした現状もあるせいか、業界の一部では「大コケするかもしれない」「フジテレビがまた失敗を繰り返すのか……」という意見が飛び交っている。
そこで、テレビドラマや映画関係者たちに『踊る大捜査線』最新作の懸念点、大コケしそうな理由は何なのかを聞いてみた。
ファンが高齢化 新規の若者層をどう掴むか
「懸念点の一つはファンの高齢化でしょうね」
そう寂しげに語ったのは、某キー局の子会社にあたる制作会社でドラマプロデューサーを務めているÅ氏だ。
「1997年のドラマシリーズが始まったときに10代から30代だった『踊る大捜査線』のファンは、今や40代から60代になってしまっている。20~30代の熱心なファンがすっぽり抜けているのはかなりの痛手だと思いますよ。
ファミリー層やカップル、映画好きの若者を巻き込まないと記録的な集客にはなりません。しかし、彼らにとって同作は半世紀近く前の“名作”という認識でしかなく、どんなストーリーかを知らない人も多いですから。
もちろん、年を重ねたファンに熱意がないわけではありませんが、この世代は積極的にSNSで感想やレビューを残すことは期待できない。高齢化が進んだせいで、ファンが宣伝役にならないこともヒットの裾野を広げにくくしているわけです。
地上波で過去のシリーズ作を流すプロモーション自体は間違っていなかったと思います。ただ、始める期間がギリギリなうえに詰め込みすぎたのでは? 公開日が迫る8月初旬から立て続けにオンエアしたのでは、若者たちの目に届かない。情報過多になっている若者のほうが、コンテンツにリーチするのにやや時間がかかるんですよ」
A氏は「フジの過信はまだある」と続ける。
「2024年に柳葉敏郎さん演じる室井慎次を主人公とした映画2部作『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』を公開したことで、作品へのブランクはないだろうと踏んでいたのでしょうが、それは大きな勘違い。どちらも興収18億円ほどでそこまで人々の記憶に残っていない。もはや『踊る大捜査線』は過去の遺産でしかないことを意識したプロモーションをすべきだったと思いますよ」
過去の栄光に浸りがちなフジテレビの良くない部分が、プロモーション面でも露呈したようだ。
聖地だった“お台場”のオワコン化も足かせに
「ここ最近ヒットした映画はいずれもグッズが売れている。『踊る大捜査線』もその流れに乗れるかどうかですね」
そう語るのは、映画配給会社で関連グッズの企画にも携わるB氏だ。
「確かに『踊る大捜査線』最新作も劇場パンフレットだけではなく、アクリルスタンド、缶バッジ、マグカップ、そしておなじみの警察手帳やモッズコートをはじめとした公式グッズが用意されている。
しかし、問題は品数ではなく、若いファン層が思わず手に取ってSNSで拡散したくなる“アイコン”があるかどうかなんですよね。『ちいかわ』のように作品を知らない人でもかわいさが伝わるアイコンがあるだけで、映画自体が一気に広まりますから。
その候補として、作中で登場する『セブンベア』というアニメの主役である不気味なクマのキャラクターたちのトートバッグ、トレーディングアクリルキーホルダー、缶バッジ、ぬいぐるみなどを展開しようとしていますが、どうも“付け焼き刃”感が否めない……。
観客が映画を観た後に「あのセブンベアが欲しい!」「今回の『踊る』といえばセブンベア」と思えるぐらい、ストーリーにおける大事な役割が与えられていない限りは売れないと思います」
また、B氏は別の側面からも不安を口にする。
「1990年代後半から2000年代中盤にかけて、お台場周辺やフジテレビ本社屋、レインボーブリッジ、ウエストプロムナードは観光地として非常に賑わっており、そのエリアを舞台にした『踊る大捜査線』の人気を押し上げる要因になっていた。まさに“アイコン”だったと思います。
しかし、近年は観光客の流れも変わってお台場自体が廃れてしまっており、舞台そのものが“アイコン”として機能しなくなったことも興収に影響しそうな気がします。
それを分かってか、作品の舞台をお台場や湾岸地区だけではなく、都内全域に広げたようですが、“アイコン”や“聖地”としての意味合いが完全に薄れてしまった。
個人的には“もう一度お台場を盛り上げよう”という思い切った開き直りがあっても良かったのではないかと思いますが」
“聖地”だったお台場の衰退が、映画を失敗作に追い込んでしまう可能性があるのか。
後編『「深津絵里が出演しないなら観なくてもいい」…映画『踊る大捜査線』最大の弱点』では、キャスト面の不安についてお届けする。
