【藤 和彦】”期待の星”ヒト型ロボットが少女を襲撃、家族に打ち明けられない失業者が図書館に殺到…中国社会に起こる異変
前編記事『輸出だけが絶好調で国内はボロボロ…「今年のキーワードは下落」、輝きを失った中国自動車市場の厳しい現実』で見てきたように、中国は米欧との貿易摩擦と自動車不振に直面している。その足元では、国内経済のあちこちで綻びが広がっている。
前途多難なヒト型ロボット
EV以上に世界の注目を集めているヒト型ロボット分野も前途多難だ。
中国メディア「第一財経」は2日、「ロボットのパフォーマンスで観客が負傷する事故が相次いでおり、誰が責任を負うべきなのかが問題になっている」と報じた。湖北省の科学技術館で昨年11月、幼稚園の遠足で訪れていた5歳の女児が、実演中のロボットに突然顔面を蹴られ、歯が4本抜け、上唇を縫うほどのけがを負う事件が起きた。
9ヵ月が経って女児の保護者と科学技術館の間で和解が成立したが、詳細は明らかになっていないという。事故が起きた場合の処理方法などが明確になっていないため、専門家は「ロボット事故の賠償紛争が長期化する可能性が高い」と警告を発している。
「中国のロボットレンタル市場は今後急拡大する」との見方があるが、人間との共存に向けた適正なルールが設定されない限り、「絵にかいた餅」になってしまうのではないだろうか。
金融と物価に潜む火種
中国の金融システムにも気になる動きが出ている。
中国の国有銀行大手(中国工商銀行と中国農業銀行)と国有保険大手(中国人民保険)などの金融機関8社は6日、最大で合計3600億元(約8兆4000億円)の資本増強計画を発表した。中国政府が特別国債で調達する資金などを活用するという。
不動産バブルが崩壊して5年が経ち、不良債権の増加で金融機関の財務内容が悪化していることを踏まえての措置だろう。1990年代半ばの日本でも金融機関に公的資金が投入された。
だが、それでも戦後最悪の金融危機を回避できなかった経緯があり、中国が日本の二の舞を演じる可能性は十分にある。
中東発のエネルギー価格の高騰も中国経済にとって痛手だ。
8月の消費者物価指数(CPI)が前年比0.8%増だったのに対し、同月の卸売物価指数(PPI)は3.8%も上昇した。
調達コストが膨らんでいるが、内需が弱いため、企業は価格転嫁ができずにいる状況が続いている。不動産バブル崩壊後、中国で企業倒産件数が急増しているが、今後、その傾向はさらに強まることが予想される。
“悪代官”化する地方政府
企業倒産が増えれば、失業者はさらに増える。そのせいで中国各地の図書館で大変な事態が起きているようだ。
中国のSNS・ウェイボーでは9月に入り、「出勤を装う失業者が図書館に殺到している」との情報があふれかえっている。家族に失業した事実を打ち明けられない失業者の心境を思うと胸が痛くなる。
だが、地方政府は庶民の苦境をおもんばかるどころか、さらなる重荷を課している。
日本経済新聞は8日、「深刻な財政難に直面する中国の地方政府は罰金収入を増やしており、2024年の額は過去最高の4286億元(約10兆円)に達した」と報じた。難癖をつけて庶民から金銭を巻き上げる姿は、かつての悪代官を彷彿とさせる。
「中国で政変が起きる」と主張するつもりはないが、中国政府への反発が急速に高まっているのではないだろうか。
日本にとって厄介な存在と化した中国だが、国力の衰退は明白だ。彼らの挑発に乗ることなく、引き続き冷静な対応に終始すべきだ。
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