法律家の視点で語る、日本社会が抱える問題

大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日11時30分~15時)、9月17日の放送に法学者で著述家、明治大学名誉教授の瀬木比呂志が出演。今月、新刊『法律家が見た日本社会の病理 「空気」を打ち破る個と論理の構築へ』を発売した瀬木が、日本社会が抱えている問題について解説した(大竹まことはお休み)。
青木理「瀬木さんの御本はこれまでも拝読し、お目にかかりたいと思っていました。新しく出された『法律家が見た日本社会の病理 「空気」を打ち破る個と論理の構築へ』は、司法を中心とした御本かと思ったら、意外とそうではなかった」
瀬木比呂志「これは日本全体の問題を一度、さらってみようという本です」
青木「日本社会の深層構造を1枚の絵のように提示する試み、と。冒頭のほうで書かれていて、多くの方が思っているであろうことです。僕は1960年代生まれで。これぐらいの世代が、こういう言い方は若い方々に嫌がられると思うんですが『どうにか逃げ切れるかな』と。50年代ぐらいの方だと『まあまあ、いけるだろう』と」
瀬木「はい」
青木「僕らや下の世代になると、社会保障にせよ、温暖化にせよ、ありとあらゆる問題について、持続可能ではない、と思っている人が多いのではないか、と。実際に書かれていますが、そういう問題意識も持たれているわけですか?」
瀬木「そうですね。日本は明治時代以降、近代化ということで欧米を見習いながら、やってきました。でも戦前の天皇制は一種、独特の古い制度で。それを中心にしてがんばった。でも十五年戦争でいったん、それが潰えた。今度は平和な国家だ、経済だ、ということで、かなりのところまでいった。ただバブル経済はある意味、狂乱の時代で。そのあと長い停滞に入ってしまった」
青木「はい」
瀬木「バブル経済以降の停滞はやはり、日本が明治以降にやってきたことのツケが回ってきたのが原因だと思います。欧米の技術を取り入れて、和魂洋才ということで。基盤にある制度、思想、哲学などをあまり見なかった。私は法意識の本も書きましたが、日本人の法意識は法律家からすると、近代的な方式にまださほどなっていないわけです。制度や行政、政治にも同じようなことが言える。危機管理もそう。財政もそうなんですね」
青木「はい」
瀬木「全般的に大きな問題が蓄積してきている。青木さんの世代、私(1954年生まれ)よりひと回り若い方になると、いろいろと心配なのでは、と。さらに若いともっと希望を持ちにくい、という状態になっています」
青木「僕らぐらいの世代になると、老後2000万円必要なのか、それだと足りないのかは別として、円で運用していくと国の財政問題を考えると危うい。だから海外に口座を持っておこう、老後の資産を他の通貨にしておこう、と。そういう話も書かれていますね」
瀬木「ドルベースに移す、というような動きも、私よりひと回り若い人たちにはあって。それも思想傾向によらないんですね。自由主義者でも保守主義者でも心配を持っている」
青木「この本は本当に多様な分野、政治や行政、司法、ジャーナリズム、あるいは教育などに目を向けています。明治以降、戦後、バブル経済ぐらいまで、近代的な法意識を持てなかったと。瀬木さんはもともと裁判官もされていました。法意識、司法の分野のことで伺います。近代的な法意識をこの国は持ちえなかった、とはどういうことですか?」
瀬木「契約なんかが典型です。たとえば本にも書いたように、家を建てたときにマニュアルどおりの契約条項で少し危ない部分があると。ここを修正したい、と言ったら、大変なことだ、となって取締役会にまで上げたんです。顧問弁護士に相談すると、瀬木さんの言うようにして問題ない、と。本来、契約とは双方が話し合って決めるべきもので、マニュアルどおりの発想が基本ではない。そういう基本からして日本人の感覚にはないわけです」
