アインシュタインが「人生最大の過ち」と悔やんだ「Λ」…しかし、死後に判明した「Λ」の正体
もし未知の異星人から「あなたはどこから来ましたか?」と問われたら、どう答えますか?
「地球から」という回答は、宇宙規模の社交場では失笑を買ってしまうかもしれません。実は私たち地球人は、ある決定的な理由により、宇宙の平均レベルよりも科学の発達が遅れている可能性があるのです。
ファーストコンタクトの日に恥をかかないために必要なのは、地球の狭い常識ではなく、宇宙のどこへ行っても通用する「普遍的な教養」と「宇宙的思考法」です。
多種多様な異星人が行き交う宇宙ステーションで繰り広げられる、知的で刺激的な問いの数々。宇宙で真に求められる「本当の科学知識」とは一体どのようなものなのか、その知的な冒険の一端をぜひ覗いてみてください。
※本記事は、講談社『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』(高水 裕一)の内容を抜粋・再編集したものです。
ダークエネルギーは「Λ」だった
ここでジャーナリストが、博士にコーヒーをすすめながら質問します。
「宇宙にそのような謎のエネルギーがあることを、地球人はどのようにして知ったのですか?」
ポーキング博士はお礼を言ってコーヒーを一口すすり、答えます。
「じつはダークエネルギーを地球で最初に発見したのも、さきほどご紹介した相対性理論をつくったアインシュタインなのです。ただしそこには皮肉なストーリーがあります。
アインシュタインは例の『R』を使って、宇宙という器は、中身である物質やエネルギーによってどう変化するかを表現する重力方程式をつくりました。ところが、困ったことが起きました。宇宙がこの方程式の通りにふるまうとすると、膨張したり収縮したりと、非常に落ち着かないものになってしまうのです。彼には、宇宙は静止して動かないという信念のようなものがありました。自分がつくった方程式が、それに反するのを許せなかった彼は、方程式をいじりました。『R』に『Λ』という項を加え、『R+Λ』としたのです。その効果で、宇宙は静止しました。
ところがその後、彼にとってショックなことが起きました。観測によって、宇宙は静止などしていなくて、本当に膨張していることがわかったのです。もしも自分の方程式を信じていれば、そのことを最初に予言した科学者になれたのに……彼は『Λ』を式に入れたことを『わが人生の最大の過ち』と言って悔やみました。このあたりのことは、地球の初心者向けの物理の本には必ずと言っていいほど書かれています。
しかし、この話はこれでは終わらないのです。それから約70年後、アインシュタインがこの世を去ってからは40年ほどたってから、宇宙は加速膨張していることが観測されました。普通に考えれば、宇宙が膨張する速度は、宇宙にある物質の重力に引っ張られるために減衰していくはずなのに、なんと逆に加速していたのです。このことは超新星爆発という天文現象を分析することでわかりました。そして、この不可解な加速膨張を起こしているエネルギーは、アインシュタインが方程式に入れた『Λ』によって表現されていることがわかったのです。
ものを引っ張る『引力』が働けば、宇宙自体もこれに引っ張られて収縮しますが、『Λ』は逆にものを斥ける『斥力』として働くので、宇宙を押し広げようとするのです。重力が斥力として働くなどという例を、ほかに地球人は知りません。この不可解なエネルギーが、wが負の値になるダークエネルギーなのです。だから、ダークエネルギーとは、アインシュタインが考えた『Λ』にほかなりません。『Λ』のことを地球では『宇宙定数』あるいは『宇宙項』と呼んでいます」
そこまでを聞いて、ジャーナリストは言いました。
「私の惑星でもダークエネルギーに相当するものの存在は知られていますし、それなりに研究は進んでいます。しかし、たった一人の物理学者の思考から予言されたというストーリーは非常に面白く、エキサイティングです。きっとアインシュタインは地球では、最高にリスペクトされている人物なのでしょうね」
「たしかに、地球で最も有名な科学者は誰かといえば、彼かもしれません。しかし、彼の業績が正当に評価されているかというと、私にはちょっと疑問もあります。地球には、すぐれた学術成果をあげた者に与えられる最大の名誉とされる、ノーベル賞があります。しかし存命の人しか対象にならないので、没後に発見されたダークエネルギーの予言では、彼は受賞していません。しかも、地球人の世界観を覆した一般相対性理論でさえ受賞していないのです。さすがに1度は受賞していますが、もしも自然界に人格があって『自分を最もよく解明してくれた人に賞をあげたい』と考えているなら、間違いなくあと3回は受賞していたと私は思っています」
【こちらの記事もオススメ!】<答えられたらスゴイ…「アナタは何でできていますか?」宇宙人からの奇想天外な問い、答えは「炭素」では不十分>
