【特集】2年8か月ぶりの我が家 “ここまで長かった”能登半島地震で被災した住民の思いと被災地が抱える課題《新潟》
2024年の能登半島地震で新潟市西区を中心に広がった液状化の被害。
自宅が被災し仮住まいでの生活を続けていた住民がいます。住み慣れた地域を離れる人もいる中、自宅の再建に向け力を尽くす男性。地震から2年8か月……。被災地のいまを見つめます。
◆“自宅”は無事でも戻れない住民
思い出はあの日を境に止まったまま……
<松田正彦さん>
「この赤ちゃん。いま5歳になりました」
新潟市西区の松田正彦さん。
<松田正彦さん>
「電気・水道を復活させれば、(自宅で)いまでも生活できる。これを見ちゃうとなかなか地震を感じちゃう、能登半島地震を」
自宅があるのは寺尾地区の高台。
もともと建物の下に杭を打ち、地盤を強化していたことから自宅への被害はほとんどありませんでした。
しかし、高台の下で起きた地盤沈下により庭や駐車場が沈み、被害が広がり続けているといいます。
<松田正彦さん>
「ここの穴もこんなに大きくありませんでしたし、ここの亀裂もこんなに割れてはいなかった」
◆地震の記憶を思い出し自宅に戻れない日々
震災から3度目の春。
雪解けとともに感じる、地震の爪跡。
自宅での生活は可能ですが、妻が庭の被害を見ると地震の記憶を思い出し、戻ることができないといいます。
<松田正彦さん>
「家内も原因がわからない病気にかかった。いま治療していまして、あちこちの病院で診察してもらっているが、これといった診断がなされていない。原因がわからない。地震から2年半きついと思う」
◆高額な工事費用 “部分的な埋め立て”で費用抑える
この日行われていたのは地盤沈下を直すための工事の打ち合わせです。
業者によると庭の下の土砂はいまも少しづつ動いていて、地中に空洞ができているといいます。
Q)これも液状化?
<工務店の担当者>
「私はそうだと思う。地震がなければいいところなんだけど……」
全面的な補修工事をした場合、6000万円かかることが分かりました。
そのため、松田さんは部分的に埋め立てなどを行い、金額を抑える形で復旧させようと考えています。
<松田正彦さん>
「土砂が流れないような処理をしてくださるということは言っていましたので、それだけでもありがたい。ここにまた戻ってきて生活している夢何度も見ましたから。この一歩は大きいですね」
◆住宅や道路に深刻な被害
能登半島地震で発生した地盤の液状化。
新潟市西区と江南区では住宅や道路に深刻な被害をもたらしました。
こうした中、新潟市は、将来的な液状化被害を防ぐため対策工事を検討しています。
対象となっているのは、西区青山から大野、ときめきから鳥原、そして江南区天野です。
天野地区では現在、地盤沈下のリスクがあるかなどを調べるための試験施工が行われています。
工事を見学した地元の住民からは……
<地元の住民>
「賛成がないとできないんでしょ?それが問題ですよね。お金の面と」
「これは自然災害ですからね、地震て。それを個人負担を求めるという考え方がまずおかしい」
対策工事をめぐり市は区域内の地権者全員の同意と1坪あたり5250円の負担を求めています。
◆全員合意と住民負担が大きな壁に
この全員合意と住民負担が工事の実施に向けて大きな壁となっています。
市が行った意向確認のアンケートでは「実施したい」がおよそ38パーセント、「しなくてよい」が14パーセントでした。
およそ半分は「検討中」としていますが、全員合意の難しさが浮き彫りとなっています。
さらに、試験施工の場所も難航しています。
市は江南区に続き2か所目として西区寺尾地区の公園で行うとしていました。
しかし……
◆進まない住民への合意形成 試験施工も難航
<新潟大学 災害・復興科学研究所 卜部厚志教授>
「そこで試験施工をすることの意味がどのくらいあるのか」
ことし7月の会議では専門家から“被害が目立った地域とは地層が異なる”といった意見が相次ぎ、試験施工が先送りされる見通しとなったのです。
試験施工の場所を選ぶ難しさについて市の担当者は……
<新潟市都市政策部 高島康憲部長>
「本来であれば、アンケート調査が先行してやれれば地域の方々の意向も確認できながら一番効果的な場所でできるかもしれない。両方並行して進めて行こうというところなので、そういった部分については致し方ない」
◆“長かった”2年8か月ぶりの我が家
庭の復旧工事を進めていた松田さんです。
8月初め、およそ3か月にわたる工事が完了していました。
<松田正彦さん>
「L字のブロック、かなり深いところまで きているので、土砂が下の方へ極力流れないような形」
地中にコンクリートのブロックを埋め、土砂が流れにくくしてあるといいます。
工事費用はおよそ1000万円。
そのうち3分の2は市の支援事業からまかなうことができました。
2年8か月ぶりとなる我が家での生活……
<松田正彦さん>
「長かったですね……絶対に地震には負けないぞと」
◆地震で衰退する地域 次の震災への課題
自宅で暮らし始めてから感じたことがありました。
<松田正彦さん>
「この景色が全然変わりました。ほとんどこの辺はみんな全壊でしたので、軒並みいま更地になっていますから」
地震のあと、新潟市西区では住んでいた地域を離れる人が多く、善久地区ではこの2年で100世帯以上減少しました。
松田さんの近所でも多くの家族がいなくなったといいます。
大きく変わってしまった街並み……
<松田正彦さん>
「この辺も相当改良しないと難しいのではないか。住むのには本当にいいところだと思っています。日本全国あちこちで地震が起きていると国も負担してくれる額も厳しいと思う。その辺をなんとかいい方法に考えていただけるのが一番の希望」
震災で失われた地域の活気……
足踏みする液状化対策……
次の地震にどう備えるのか。課題が突き付けられています。
