必要なのは「目利き力」 AIからマイナス情報は得られない【マンション市場大激変 いつ買うか、いつ売るか?】#1
【マンション市場大激変 いつ買うか、いつ売るか?】#1
マンションの選び方が難しい時代になってきた。都心や湾岸エリアなら、何を選んでも値上がりしていたのは数年前。今は、買った途端に値下がりするのではないかと、多くの人がビクビクしている。
ネットに出てくるマンション市場の動向を伝える記事にも「値下がり」に関するものが多くなってきた。
こんな時代にマンションを買うには、いったい何を参考にすればいいのか?
多くの人はまず、AIに頼ろうとする。買いたいマンションの名前と「資産価値」といったワードを組み合わせてAIに尋ねると、たちどころに回答が出てくる。
ただし、そういったAIの回答はあてにしない方がいい。たいてい、肯定的な回答しか出していないからだ。
AIというのは基本、ネット空間に存在する情報を収集して、そこから回答を導き出している。ハッキリ言ってしまうと、ネットの世界には新築・中古にかかわらず、マンションの個別物件に関するマイナス情報はほとんど存在していない。
マイナス情報とは「駅から遠いから資産価値が低い」とか「マンション供給が多いエリアだから中古物件の価格が下がりやすい」といったことである。あるいは「建物に不具合が出ている」とか「最近、急激に市場評価が下がっている」といった内容も、AIからは得られない可能性が高い。
その理由は、ネット空間にはマンション各物件に関するマイナス情報がほとんどない、からである。
マイナス情報は、そのマンション自体の資産価値に直接影響する。例えば「管理組合でトラブル多発」といった情報は、多くの人の購入意欲を削いでしまう。その結果、市場での評価が下がる。
マンションの市場価値が下がることを最も嫌うのは、その物件の所有者である。所有者で形成されている管理組合も同様だ。
仮に、管理組合が自分たちのマンションに関する何らかのマイナス情報が拡散していることを認知すれば、それを極力排除しようとする。それがネット掲示板のようなサイトに出ていると、その管理者に削除を求める。サイトの管理者側も、表示されている内容が「事実に反している」と主張されれば、要求を受け入れてその書き込みを削除する。削除要求を放置すれば、訴訟などに発展する可能性もある。サイト管理者としては、そういうリスクを避けたがるのは当然だ。
■資産価値の基本は「駅」「徒歩距離」
新築マンションの場合は、売り主のディベロッパーがマイナス情報を嫌う。「○○マンションは将来値下がりの可能性がある」などという情報がネットに流れれば、売れ行きが鈍ること必定。だから、日頃からネットを監視してマイナス情報を極力排除する努力を惜しまない。
その結果、ネット空間にはマンション個別のマイナス情報はほとんど存在しなくなる。マイナス情報が存在しないから、AIはプラス情報を収集・分析して回答を導き出す。
プラス情報ばかりを示されても、客観的な判断はできない。だから、多くの人は迷う。
AIがマンション選びにとって大して役に立たない以上、判断基準は伝統的な「目利き」の力を尊重するしかなくなる。
といっても、それはさほど難しくはない。首都圏のマンションの資産価値は基本「どの駅から徒歩何分か」で決まる。
人気の高い、誰もが知っているような駅から近ければ近いほど、資産価値は高い。誰も知らないような駅や、徒歩11分以上も離れているマンションの資産価値は低い。
ここ数年、都心や湾岸エリアは一種のブームになっていたので、マイナーな路線の知名度が低い駅から11分以上離れたマンションでも、高い価格で取引されていた。
今、そういうブームのメッキが剥がれて、正常化の過程に戻りつつある。つまり、市場は完全に下落期に入っているのである。
次回はそのあたりをもう少し詳しく解説したい。
(榊淳司/不動産ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰)
