「いや、すさまじい…」。盤上の息詰まる攻防を見つめていた百戦錬磨のベテラン棋士は思わず絶句--。プロの語彙力をも奪い去るほどの、まさに極限の死闘だった。将棋の「伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦七番勝負」第6局が9月8、9日の両日、神奈川県秦野市の「元湯 陣屋」で行われ、藤井聡太王位(竜王、名人、棋聖、棋王、王将、24)が挑戦者の伊藤匠二冠(叡王、王座、23)を下し、シリーズ成績4勝2敗でタイトル防衛と王位戦7連覇を達成した。同学年のライバルと繰り広げた歴史的熱戦を終え、絶対王者は安堵とともに充実の表情を見せた。

【映像】グラフの動きにも注目…死闘となった第6局ハイライト

 最後までどちらが勝っているかわからない大混戦となった本局。目まぐるしく形勢が入れ替わる盤上のドラマに幾度も「すさまじい」と圧倒されたABEMA解説の屋敷伸之九段(54)は、終局後に「序盤から中盤の攻防、最終盤の藤井王位の手の繋げ方や伊藤二冠のしのぎ方など、見応えたっぷりの大変な大激戦だった。最後は藤井王位が競り勝ったが、両者時間を使い切っての大熱戦だったと思う」と総括。持ち時間各8時間を1分残らず削り合うように戦い抜いた両者を大絶賛した。

 防衛決定後の記者会見に臨んだ藤井王位は、「内容的に見てもかなり大変なシリーズだったかなというふうに感じてはいます。その中でなんとか防衛できたということは自分にとって意義のあることでもあったのかなというふうにも感じているところです」と率直な思いを吐露。

 激闘を繰り広げた伊藤二冠については、「終盤でも崩れない強さを感じる場面が非常に多くありました。こちらが一度ミスをしてしまった時、結構そのまま崩れてしまうということも何度かあったかなと思うので、今回のシリーズではなるべく最後まで粘り強く指せればということを一つ意識をしていました」と語り、難敵の強靭な粘りが自身の指し回しに与えた影響を明かした。

 自身が目標に掲げている「面白い将棋は指せたか」という問いに対しては、「最後最後まで見通しが立たない難しい状況が続いたかなというふうには感じているので、そういった将棋を指せたといえば、充実感があったかなと思います」と柔らかな笑顔を見せた。さらに、「今回のシリーズを通して、伊藤二冠の強さを感じるところも非常に多くありましたし、自分にとって本当に学べたものの多いシリーズになったのかなというふうに感じています。この経験を生かしてより成長できるように、今後もしっかりと取り組んでいければというふうに思います」と力強く前を向いた。

 王位戦7連覇という偉業を成し遂げながらも、現代と次代を担うライバルとの死闘を経てさらなる高みを見据える藤井王位。底知れぬ探求心と進化への渇望を胸に、絶対王者の歩みは力強く続いていく。
(ABEMA/将棋チャンネルより)