「トクリュウ」に狙われないために

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 昨今「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による犯罪が増えている。「指示役」などが存在し、末端の闇バイトの若者を鉄砲玉のように「実行役」として使い、逮捕のリスクはその者達に押し付ける。栃木県上三川町で発生した事件では、会社役員宅を襲撃した16歳少年ら4人がその時家にいた女性を殺害、さらに2人の息子に重傷を負わせた。

 この犯行グループは、この会社役員宅に「1億円の資産がある」という情報を持って侵入し、何の面識もない一家を無慈悲に襲撃。資産はほぼ何も取っていなかったという。

 彼らがどこからそんな情報を得たのかはわからない。が、こうした事件を見るにつけ、被害に遭わないためにも、金持ちであることをひけらかさず、むしろ逆に、「貧乏に見せる」ということが非常に重要になっているのではないか、と思うのだ。とりわけ、地方においては、である。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】

【写真】かつては嘲笑の的でも…富裕層が自らを守るための必須アイテム「軽自動車」と「マジックテープ式財布」の姿

軽自動車とマジックテープ財布

 私は現在、佐賀県唐津市在住だが、この街の成功者たちは決して金持ちアピールをしない。まず彼らは、高級車には乗らない。ベンツのSクラスに乗っていてもおかしくはないレベルのお金持ちが、1990年代に販売された1500ccの国産車に乗っているのだ。また、別の富豪も、軽自動車や軽トラや軽バンに乗っている。

「トクリュウ」に狙われないために

 軽自動車といえば、かつてはネットで「彼氏の車が軽自動車でした。死にたいくらい恥ずかしくて惨めな思いのデートだった」などと書かれるなど、侮蔑、嘲笑の対象だった。また、「彼氏の財布がマジックテープ式だった」といった女性の嘆きを表すAA(アスキーアート=記号を組み合わせてイラスト化したもの)も登場し、軽自動車とマジックテープは、「ダサい人」「貧乏人」を表す、象徴的存在だった。

 しかし、現在のお金持ちにしてみれば、むしろこの二つのアイテムを持つ方が、安全に過ごしやすいのかもしれない。なにしろ、金持ちに見られることがデメリットでしかない。50代の飲食店経営男性はこう語る。

「羽振りが良いとみられるとろくなことにならないんですよ。結局、周囲といかにモメることなく過ごすか、ということが大事。その中で浮いてしまうと古い言い方だと『村八分』に遭ってしまう。皆がその人のことを嫌って、内輪で悪口を言い出すんですよね」

金持ち自慢は「私を襲ってくれ」アピール

 最初は内輪で交わされていただけの悪口が、いつしか噂として外部に漏れはじめる。実際、過去の強盗事件を振り返ると、スナックや美容室などでの世間話が発端となって、ターゲットにされた被害者は存在するようだ。

 ネットが発展した現在は、そうした情報が伝播するのがはるかに速い。即座に闇掲示板などに、各地の“金持ち情報”が書き込まれていく。そうした情報をもとに、財産を奪おうとする者が、困窮する若者、または遊ぶカネのためならなんでもする無軌道な連中を雇い、襲撃させるのだ。どんなにお金があっても、軽自動車に乗り、マジックテープの財布を使った方がいいことが、お分かりいただけるだろうか。

 無論、成功者は、SNSで高級時計をひけらかしたい気持ちもあるかもしれない。が、そのようなことはやるべきではない。先日も4つで2億円の時計が中野ブロードウェイの店舗から盗まれたばかり。誰もが欲しくてたまらない高級時計や高級車を所持していることを、ネットでアピールするなど、もはや「私を襲ってくれ」と言っているも同然である。

 安全に人生を過ごすために重要なのは、承認欲求や、自己顕示欲を満たすことではない。普段から必要以上に羽振りの良さをアピールせず、慎ましく過ごし、ネットには「私は貧乏です」といった空気感を出す投稿をする方がよほど防犯になる。

 いや、もっと言えば、SNSなど一般人はやめた方がいい。何か商売などをしていて、自らを宣伝する必要性がない人は、個人情報を晒すメリットはない。かつてこんなものが存在しなかった時代は、自分のことは犯罪者に知られることはなかったのだ。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部