ガザ南部ハンユニスのテント群の脇でたこを揚げようとしている子供たち(8月30日)=読売通信員撮影

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 【エルサレム=福島利之】パレスチナ自治区ガザで子供たちの遊び道具となっているたこが、新たな緊張の火種となっている。

 ガザ周辺のイスラエル側の集落にたこが落ちたことを受け、イスラエル軍は、爆発物が付いていなくても、たこを飛ばした地点への爆撃を辞さない構えを示す。ガザの子供たちは、空を舞うたこにつかの間の自由を求めている。

 イスラエル軍によると、ガザ周辺のキブツ(農業共同体)・ナハルオズ付近で8月21日、たこが落ちているのが見つかった。その後も数個が周辺に落ち、軍は「たこから不審物は見つからず、住民への危険はなかった」と発表した。しかし、カッツ国防相は同24日、「風船とたこはドローン(無人機)と同じだ」として、たこを揚げた地点の住民を避難させ、爆撃すると警告した。武装勢力が爆弾を付けたたこを飛ばすことを、イスラエルが警戒しているためだ。

 だが、ガザでのたこ揚げは、3年近くにわたる戦闘で自由を奪われた住民にとって、数少ない遊びだ。

 「たこが空を飛ぶのを見ると、子供の頃に戻ったようでうれしくなる」。ガザ南部ハンユニスの海岸沿いにあるマワシ地区で、子供たちにたこを作るアフマド・キシュタさん(23)は、読売通信員に語った。

 キシュタさんは8人家族だったが、弟2人が餓死し、1人はイスラエル軍の攻撃で大けがを負った。現在はテントで暮らし、年下のきょうだいや近所の子供たちに、ヤシの葉やビニール袋でパレスチナ旗を模したたこを作り、10シェケル(約530円)で売っている。

 以前は1日に7、8個を作っていたが、イスラエルの警告を受け、買う人は少なくなった。子供たちには、たこを揚げても高さ200メートル程度に抑えるよう伝えている。キシュタさんは「戦闘機を持つ軍事大国にとって、たこがなぜ脅威なのか」と憤る。

 ガザ最南部ラファから家族8人でマワシ地区のテントに避難している男子(12)は、これまでに約10個のたこを作って揚げた。「たこを揚げて空を見上げると、気が楽になる」と話し、イスラエル軍の警告を受けても、「たこは僕たちのおもちゃだ。飛ばすのは怖くない」と強がった。