女子走り高跳びで優勝した早大・矢野夏希【写真:中戸川知世】

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「THE ANSWER 陸上PLUS|STORY」 日本インカレ・日産スタジアム(9/5)

 憧れ続けた背中を“その人”が見守る前で越えた。女子走り高跳びは早大・矢野夏希(4年)が1メートル84の自己ベストで優勝。2年ぶり2度目の日本一と共に、4年間の目標だった早大記録を更新した。愛知の進学校・時習館から一般入試で進学。当初は「普通に就職」を考えていたが、3年春の1本のジャンプで翻意し、卒業後は次の夢を追う。

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 1メートル81を成功させ、2年ぶりの優勝は決まった。

 ただ、サングラスをかけた矢野の目はさらに高いバーを見つめていた。1メートル84。これまで一度も跳んだことはない。2回失敗し、迎えた3回目のラストチャンス。スピード感のある助走から踏み切り、捻った165センチの体がバーを越える。

 身を委ねたマットから起き上がると、両手を突き上げた。

「もう嬉しくて、嬉しくて…」

 1メートル84に上げた裏に、4年間抱き続けた想いがあった。

 従来の早大記録は2017年に仲野春花さんがマークした1メートル83。矢野にとって「都の西北」を志したきっかけが仲野さんであり、憧れのジャンパーだった。2017年から日本選手権を連覇した当時、画面越しにその姿を見ていた。

「あの体であんなに走ってきて、あんなに軽やかに跳ぶ。その跳躍がすごく印象的で、私も目指したいと思いました」

 入学後、4年間の目標のひとつに掲げた「早稲田記録更新」。その仲野さんがこの日は会場にいた。試合前も連絡をくれ、「楽しんで」と背中を押してもらった。1メートル84を越えた瞬間、仲野さんは自分のことのように喜んで泣いていた。

「私ももらい泣きしちゃいました。本当に春花さんの前でしっかり跳んで優勝できて良かったです」

愛知の進学校・時習館出身「高跳びも勉強もどっちも諦めたくなかった」

 偏差値70ともいわれる愛知の進学校・時習館出身。3年夏のインターハイは8位入賞。「周りはすごい人だと東京大学に行く同期もいた。高跳びがずっと好きで、勉強も好きでどっちも諦めたくなかった」。早大には一般入試で現役合格。共通テストを受け、臙脂のユニホームをまとった。

 1年目は足首など怪我が相次ぎ、初めての日本インカレは「記録なし」。しかし、リハビリ期間中にフィジカルを徹底的に鍛え上げ、2年秋の日本インカレで1メートル76で初優勝。「その時は自分に驚いたというか、本当にチャレンジャーの気持ちでした」。追われる立場となった昨年は試技数の差で2位に。胸に「W」をつける最後の日本インカレ、強い想いが結果になって表れた。

 大学卒業後も競技を継続する。そう決めたのは、3年春の静岡国際。当時の自己ベスト1メートル79を記録した時、「もうちょっと頑張ってみたいな」と思った。教職も取っており、当初は「普通に就職しよう」と思っていたが、翻意した。

 身長は165センチ。この日跳んだ1メートル84は自分より19センチ高い。線の細さゆえの「軽さ」を武器にしながら、パワー強化に取り組む。今季は地元・愛知で行われるアジア大会出場を目指したが、叶わず。だが、ここで止まるつもりはない。来年のアジア選手権を目指していく。

「まだまだチャンスもありますし、コケてられないです! ただ、このままではまだ世界と戦えない。まずは1メートル90を跳んでみたいです」

 4年間追い続けた背中を越えた先には、まだ見たことのない高さが待っている。

(THE ANSWER編集部)