「俺の方が成績良かったのにな」…大学を出て40年、〈資産1億円超〉で悠々自適の同級生と〈年金月16万円・資産1,600万円〉の自分。63歳会社員が直面した「残酷な格差」
同じ大学を卒業し、同じように会社員として働いてきたはずなのに--。60代になって開かれた同窓会で、資産1億円を築き悠々自適に暮らす同級生の話を聞いた男性。「65歳以降も働いたほうがいいだろうか」と悩んでいる自分とのあまりの差に、複雑な思いを抱きます。「人生の格差」に直面したときの向き合い方とは?
「みんな今どうしてる?老後はどうする?」40年ぶりの同窓会
「久しぶり! 元気だったか? お互い老けたな」
都内の大学の同窓会に参加した江波さん(仮名・63歳)は、自分同様にすっかり年を取った元同級生との再会を喜びました。
大学を卒業してから40年あまり。仕事や家庭に追われ、学生時代の友人と会う機会はすっかり減っていた江波さん。今回の同窓会も、久々に大々的に開催されると声がかかりましたが、最初は参加するつもりはありませんでした。
しかし、みんなが今どうしているのか。この先、どんな老後を過ごそうとしているのか--。そんな好奇心もあり、初めて参加することに決めたのです。
当日は20人ほどの元同級生が集まり、近況報告に花が咲きました。
「俺はまだ再雇用で働いてるよ」
「定年したら、しばらくゆっくりしたいな」
仕事や家族、定年後の暮らし。60代になったからこそ出てくる話題に、江波さんも耳を傾けていました。しかし江波さんはその後、思いもよらない「人生の差」を突きつけられることになったのです。
「リタイアして、今は好きなことばかり」…資産1億円超の元同級生
「そういえば、田辺は今どうしてるんだ? 今日は来れなかったみたいだけど」
田辺さんは明るい人柄で、当時から友人の多い人気者。一方で、学生時代の成績は優秀というわけではありませんでした。試験前になると、いつも誰かにノートを借りていた……そんな姿が思い出されるほど。江波さんは成績優秀だったこともあり、その頻度も多めでした。
ところが、田辺さんと現在も交流があるという男性が、お酒の勢いもあって語った近況は、江波さんの想像を超えるものでした。
新卒での就職先は中小企業でしたが、20代後半で大手有名メーカーに転職。そこで管理職まで務めたといいます。退職金に加え、早くから資産運用を続け、詳しい金額まではわからないものの、金融資産は軽く「億超え」だといいます。
「あいつ、実家は裕福じゃなくて奨学金借りてたんだよな。いつも『金がない、金がない』って言ってたけど、いまじゃ庭付きの大きい家に住んでて、住宅ローンも支払い済みだとさ。60歳で早々とリタイアして夫婦で旅行三昧。羨ましいよ」
「へえ……すごいな」
江波さんも感嘆の声を上げました。たくさんいる同級生のなかに、そういう人がいても不思議ではありません。大学の成績ですべてが決まるわけではない。そんなこともわかっていました。
それでも心には、なんともいえない感情が残りました。
帰宅後、通帳を眺めて「俺の40年って何だったんだ」
同窓会から帰宅した夜。 江波さんは久しぶりに自分の預金残高を確認しました。
約1,600万円。
江波さんは3歳下の妻と2人暮らし。60歳で定年を迎えた後、再雇用で勤務中。会社との契約はあと2年で終わる予定です。一方、65歳から受け取る予定の公的年金は、江波さん自身で月16万円ほど。妻が年金(月10万円ほどの見込み)を受け取り始めるまでの期間は、江波さん自身もアルバイトなどで働く必要があるかもしれない--。
「悠々自適なんて、夢のまた夢だな」
そう思うと、同窓会で聞いた田辺さんの話が、また頭に浮かびました。同じ大学を卒業し、同じように会社員として働いたはずの約40年。それなのに、60代になったいま、手元にある資産は大きく違います。
「人生って、こんなに差がつくものなのか」
自分も決して怠けてきたわけではありません。仕事もしてきたし、住宅ローンも返してきた。子どもの教育費も出してきました。
「別に、これまでの人生を後悔しているわけじゃない。でも……もう少し余裕が出るように、うまくやれていたらな」
そんな思いとともに、通帳を閉じました。
「資産1億円」と比べても、老後の不安は解消されない
かつて一緒に勉強していた同級生との再会、突きつけられた自分との違い。江波さんが久々の同窓会で感じたような複雑な思いは、生きる上で多くの人が経験するものです。お金だけではありません。婚姻や出産の有無や親の介護--人生は本当に人それぞれです。
大切なのは、他人の資産額を基準に自分の老後を評価しないことです。
総務省の2025年「家計調査」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1世帯当たりの消費支出は月平均26万3,979円。さらに税金や社会保険料などの非消費支出を差し引いた可処分所得は月平均22万1,544円となっています。
支出が可処分所得を上回り、平均的には約4.2万円の赤字家計になるという計算です。しかし、これはあくまでも“平均”であり、実際には支出も収入も人それぞれです。1億円の資産を持っていても、それ以上に使い続ければいつか赤字に転落し、収入が少なくてもその範囲内で暮らしていければ、赤字になることはありません。
そのため、本格的な老後を迎える前にやっておくべきなのは、65歳以降の収入と支出をできるだけ正確に把握すること。年金については最寄りの年金事務所などに具体的な見込み額を確認するのもいいでしょう。ねんきん定期便に記載された年金額は、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額であるため、実際の振込額とは差がある点も考慮しておく必要があります。
そして、生活費や介護費、医療費などに加えて、自分たち夫婦の楽しみのためにどれぐらいお金が必要なのか。もし年金収入と貯金だけで足りなさそうなのであれば、65歳以降働くために、今から計画を立てることができます。
他人と比較して落ち込むよりも、これから自分がどんな老後を送りたいのか、そのためにいくら必要なのかを知ること。それこそが、自分の老後を豊かにするための第一歩となるでしょう。

